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遥か彼方の浮遊都市  作者: しんら
【農業都市】

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30/188

<ヴァレク邸 決戦>

「ちっ!!また雑魚が集まって来たのか」

「やあやあヴァレクさん、調子はどうですかー?」

「アカツキ...?生きていたのか」


既に殺されているだろうと考えていたヴァレクは驚きを隠せない。


「当たり前、じゃなきゃここに俺がいるはずないだろ?」

「ふん!!たかが数人雑魚が増えただけだ。僕がすぐに殺してあげるよ」


クレアに差しのべていた手を下げヴァレクは振り返る。

またもヴァレクの魔力が上昇していき、巨大な化け物へと姿を変えていく。


「そこの二人みたいに殺してやる、人間!!!」

「アカツキ!!後は頼んだよ!!」


横殴りの拳を全員回避しようとするがアスタだけが取り残され吹き飛ばされる。


「アスタ!!」

「よせ。今はヴァレクに集中しろ、じゃなきゃ死ぬ」

「良いのかよ!!仲間だろうが」

「優先事項ってのもがあんだよ」

「くそが...」


大きな拳にアスタは右の壁に吹き飛ばされ、気を失っている。


「まず一人」

「クセルいけるか」

「任せろ。完全ってわけじゃねえがな」


(頼んだよ)


「任せろ、さっさと終わらせてやるぜ」


シラヌイの瞳は赤く染まり、魔力の質も変化していく。


「オルナズはアラタとグルキスの傷を治してくれ」

「分かった!!」

「アカツキは後方からの魔法で援護してくれ」

「無茶すんなよ」

「しなきゃいけねえ」


各自に役割を与えたグラフォルは剣を抜き、攻撃体制に入る。

オルナズは白い蛇を出現させ、グルキスとアラタを回収し、飲み込ませる。

オルナズの持つ白蛇の胃液は傷の修復を促せる。しかし、二人とも腹に大穴を開けられ傷が深いため助かるか分からない状況だ。ルカのように簡単には再生させる事が出来ないため、二人は戦いには参加できない。

アカツキは後方でヴァレクの動きに合わせ援護をする、シラヌイはグラフォルと共に近接戦。


「作戦など無意味だ人間よ。我の圧倒的な力の前では全て虫同然よ」

「随分と口調が変わってるじゃねえか、ヴァレクよ」

「クセル、貴様と同じだ。我もこの人間の器を借りているだけだ」

「悪夢の実体化ね、俺にゃあその姿を取る理由が見当たらねえなあ」

「大きければ良いと言うわけではないと?それも我には関係などない。大きければ攻撃が当たりやすい?無駄だ。この体には生半可な攻撃は通らん」


大きな尻尾を振り回しながら余裕を見せる悪夢ヴァレク。

大聖堂にはびゅん!!ビュン!!と風を切る音が響く。


「先手はくれてやる。圧倒的な絶望で叩き伏せてくれるわ」

「じゃあ一発!!」


(「グランドインフェルノ!!!」)


大きな爆発が地面から噴き出し悪夢ヴァレクに直撃する。


「グラフォル!!さっさといけやああああ!!!」

「任せろ『ウルファルト!!』」


爆発が直撃した部位に大量の鎖が伸び空中への道が出来る。

鎖の上を走りながら大量の鎖で大きな体を縛っていく。その様子を見て尚悪夢ヴァレクは何もしてこない。


「これで....どうだ!!!」


後ろからの大量の鎖と共に一ヶ所に攻撃を集中させ、剣で貫こうとする。

しかし今までの猛攻を受けてもヴァレクの巨体には傷が付いていない。


「こんなものか。人間共!!!」


巨大な拳でクセルを吹き飛ばそうとするがその瞬間にアカツキによって腕ごと凍らされる。


「もういっちょ!!『フリーズブースト』」


先の尖った大きい氷が空中で生成され更に追い討ちをかける。


「つまらん。所詮は人間...」

「全員!!一斉詠唱!!オルナズはその間時間稼ぎをしろ!!」


悪夢ヴァレクの声を遮りながら命令を出すグラフォル。

それと同時にオルナズの兎と熊が悪夢ヴァレクの前に出る。


「白き闇はかつての世界を見るが如く地上に降り注ぐ」

(巨大な破壊の衝動に身を任せよ。全てを暴虐という悪意の塊に包め)

「罪人に相応しき死を与える。母を殺し、父を殺し、果てには神を殺した者よ」


アカツキ、シラヌイ、グラフォルの四人は重ねるように詠唱を始める。


「絶対魔法か!!人間共が無駄な知識を身につけおって!!」


絶対魔法に危険を感じたのか悪夢ヴァレクは膨大な魔力を拳とともに放射をする。

しかしそれでも三人は回避せずに詠唱を続ける。

魔力を防げたとしても後から来る拳は魔法ではなく物理のため回避しか方法はないという言うのに全く動く気配を見せない。


「熊さん!!飲み込んじゃえ!!」

「ヴァァァァァァァァ!!!」


兎が回避するなか熊だけが膨大な魔力の前に立つ。

大きな雄叫びと共に熊は口を開く。


「ばかな....。我の膨大な魔力を飲み込むなぞ...」


熊の中に魔力は流れ込んでいく。それに比例して熊の腹はどんどん広がっていく。


「吐き出せ!!!」


絶対魔法ほどとは言わないがインフェルノ三回分の魔力はあるはずなのに熊は何事もなく腹に溜め、それを放出しようとしている。


「本当に貴様らは人間なのか...?どうやったらそこまでの力を....!!!!?」


自らが放った膨大な魔力が体を包みこんでいく中、驚嘆の声を上げる。


「早く寝かせてええええ!!!!」


膨大な魔力によって体を失っていく悪夢ヴァレクに更に追い討ちをかけるように熊と兎は攻撃を加える。

熊は放出し続けているヴァレクの魔力に光系統の魔法を加え、兎は素早い動きで落ちてくる瓦礫を防ぎつつ氷の魔法で悪夢ヴァレクの体を傷つけていく。


「仕方ないか。ヴァレクよ、我の力を分けてやる。なんとしても箱を奪え、さもなければ契約は破棄だ」


悪夢ヴァレクがそう呟くとその巨体は耐えきれなくなったのか崩壊を始める。


「まだ...。終わらない?」


未だに放出されている魔力の中に人影が見える。

それは膨大な魔力の中を当たり前のように歩き、姿を現す。


「遅い。僕が出ていれば魔法の攻撃は効かなかった。なのに勝手に体を乗っ取りやがって...。っま...良いさ

この先は全てが上手くいく」


体の半分を黒いぐねぐねした何かに覆われながら人間の姿のヴァレクが大聖堂の真ん中に降りる。


「これがあのオルナズか、まだ子供じゃないか」


つい先ほどまで百メートルは前にいたはずのヴァレクがオルナズを上から見下ろしていた。

そのまま頭を掴み、その小さな体に強烈な蹴りを食らわせる。


「あ....!!が....!!!ぶぇ.....!!!」


何度も腹に蹴りを食らいオルナズは呻き声を上げる。

そこに魔力を放出した熊が大きな怒りの雄叫びを上げながら、後ろから鋭利な爪で攻撃をする。


「遅い。それにうるさい」


それを簡単に片手で受け止め、軽々と持ち上げる。


「『オールキャンセル』」


ヴァレクが魔法を唱えると同時に熊と兎と白蛇が小さな人形に戻る。


「やはり絶対魔法まではキャンセル出来ないか。まあすぐに殺すから問題なし」


そのままオルナズの頭を掴んだまま持ち上げ、片手を胸に当てる。


「心臓ごと焼き尽くせば死ぬかな?」


既に気を失っているのかオルナズは抵抗を見せない。


「良い判断だ。楽に死ねるだけマシだろう?良かったね僕が優しくて」


徐々にオルナズの衣服は焼けていき、肉体にも焦げ目がついていく。


「まだ...。ダメ。党首も...怒る」


オルナズはぼそぼそと小さな声で呟き始める。


「む...?」

「夢を邪魔しやがってー」


徐々に声は大きくなっていく。


「お父さんとお母さんとの夢を邪魔したな..!!」

「まずい!!!」


ヴァレクはすぐにオルナズから手を離すが、その行動すら無意味だった。

オルナズが目を開いた瞬間にヴァレクの右半身が何の予兆もなく吹き飛ばされる。


「あああ...。夢....。どこか暗い夢を...見た見た」


小さな体は宙に浮かび、オルナズは顔を上げる。

右目には黄色い瞳の中に刻まれた猫のような細い目。

左目は瞳全てが黒に染まり、赤い涙が流れている。


「お馬さんが言っているよ。電気で焦がせって」


オルナズの周りに無数の電気の槍が出現する。


「熊さんが言ってるよ。光で包みこみなさいって」


次に生成されたのは光の鎖。


「兎さんが言ってるよ。冷たい息に暖かい息、どっちが良いって」


その言葉を区切りに電気の槍と光の鎖が放たれる。


ヴァレクの左を覆っていた闇が吹き飛ばされた右半身を修復するように定着し、回避を開始する。

しかしヴァレクの逃げ道を塞ぐようにマイナス千度は越える極寒の息吹きと千度を越える息吹きが右と左から遅い来る。しかも作戦行動を取っているように光の鎖は前方から、電気の槍は後ろから迫り来る。


前後左右からの無慈悲な攻撃を避けるのを諦めたヴァレクは身に纏う闇で体全体を覆う。

しかし先に到達した光の鎖がその闇をこじ開け始める。


「お母さんが言っているよ。愛しているって」

「お父さんが言っているよ。憎んでいるって」


壊れたように呟き続けるオルナズに呼応するように光は力を増していく。


「何故だ...。神の力を持ってない貴様になぜここまで出来るんだ!!!」


次に到達した電気の槍が背面から闇を突き刺す。

二ヶ所からの攻撃に耐える為、闇は前と後ろに集中する。


「ダメだダメだダメだ。横からの攻撃がああああああああああああ!!!!!」


遂に到達した極寒と高熱の息吹きが闇の隙間から直接ヴァレクに当たる。


「ああ....。誰かが言っているよ。怖いって恐ろしいって」

「化け物がああああああ!!!!『オールキャンセル』....あ....!!」


間一髪で魔法を無効化に成功したヴァレクに完成した絶対魔法が浴びせられる。


「ありがとよ、オルナズ『冥天の槍』」

「良く食い止めた「罪人の極炎」」

「ガキのくせに粘ったじゃねえか(暴虐の衝動)」


三人の労いにオルナズは笑顔を見せる。


「間に合った...?」

「十分だ」

「良かったぁ....」


それとは正反対にヴァレクは恐怖に満ちた声を上げる。


「やだああああああ!!!!こんなこんなこんなゴミどもに殺されるはじ...はずはああああああああ!!!!!」

「今度こそ正真正銘俺たちの勝ちだ、ヴァレク」

「ゴミがあああああ!!!ちょうしに乗るな!!!僕は選ばれたんだ!!!!全てに選ばれた神の力さえ手中にした!!!貴様らみたいな価値のない人生じゃない!!殺してやるぅ!!!絶対にだ!!こんなところで死ぬかああああ!!!」


極炎の中で何度も繰り返される爆発と無数の光と闇の槍に貫かれていくヴァレクは怨嗟の声を上げながらもがき苦しむ。永遠に続くかに思える炎に体を襲う爆発の嵐に相反する闇と光の系統の魔法による攻撃。いくらヴァレクとてこれをキャンセルする事は出来ない。


「今度こそ....。死ねよ、ヴァレク」


大聖堂に響く怨嗟の声と共にグラフォルはそう願う。

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