<潜入 グラフォル部隊 救出>
『あーあー。グラフォル?聞こえる?』
「どうした。こっちは今潜入中だ。手短に言え」
『りょーかい。シラヌイ、オルナズ、オルナズの人形と僕を含めた四ヶ所の暴動及び防衛はほとんど無傷で終了した。敵の通信石によるとあの四人組が動き出すって、そしたらヴァレクの屋敷の防衛は手薄になるから』
「じゃあもうしばらくはここで待つか....」
『いや、もうひとつ、君にとっては吉報か凶報か分からないけどアカツキが衛兵四名と牢獄を出たって』
「今はどこにいるか分かるか?」
『そこまでは知らない』
「そうか...。まあ牢獄から出たのなら少しはやりやすい」
『じゃあね。こっちは任せておいて、何とか四人組は抑えとくから』
「頼む」
プツンと連絡は途絶える。
グラフォルの部隊は今ヴァレクの屋敷に侵入している。
各地の暴動の鎮圧で屋敷の中の警備がずさんになっていたおかげでこうして侵入出来たわけだが、それでもヴァレクの屋敷は要塞のような警備の多さだった。アズーリの屋敷の二倍はある、農業都市内最も大きい建物だ。その分警備も多く、奴隷も多かった。
「党首、どうしますか?」
「どうやら牢獄は抜け出したらしい。屋敷内にまだいると思うが...。こうも広いと探すのも大変だ」
「ですが牢獄の警備を破るよりは...」
「それもそうだが、どうやって屋敷内を探索するかだ」
「まだ入り口の小さな小部屋で隠れてますからね...」
予定通り十名で侵入したグラフォル達。
現在は二ヶ所の部屋に別れている。
「この屋敷の出入口は何ヵ所ある」
「現在侵入したこの屋敷裏と正面、他にも左右に一ヶ所ずつです」
屋敷内の見取り図を発見したグラフォル部隊の青年ロスヴェは、見取り図から出入口を指差す。
この都市内最高位の屋敷だけあってとても大きく、警備が山ほどいる。
そのなかでアカツキがいるところまで向かうのは難しい。
「まずは情報収集からするか....。お前ら目を瞑ってろ」
「了解しました。別動隊聞こえますか?今から党首が魔法を使用します、全員目を瞑ってください」
反対の部屋で隠れている別動隊に連絡をする。
『了解した』
連絡をし終わった青年はグラフォルに報告し、目を閉じる。
「よし。いくぞ」
グラフォルの周囲に霧が出現し始める。
やがて小部屋を満たした後、扉の隙間から漏れていき周囲に警備の所まで進んでいく。
【ヴァレクの屋敷の警備】
「なあ、今回の暴動をどう思う?」
「連絡部隊によれば主犯はアズーリ様なんだろ?」
「そうだよな?何でアズーリ様は奴隷から成り上がってNo.2になったのに暴動を起こしたんだ?」
この二人はいつもは裏口の警備を任されていたのだが、今回の暴動により戦いに駆り出されたのだが、めんどくさいという理由で普段人が来ない裏のトイレでサボっている。
「噂によればな、ヴァレク様に殺された彼氏の敵討ちだと」
「ヴァレク様が?まああの人ならやりかねないよなー。何せ俺らの家族を人質に取った奴だからな」
「おい!!口を慎めって...。あくまでも噂だよ!!もし聞かれてたら即死刑だぞ!!」
「大丈夫だって、ここは普段から人が来ないんだから」
「それでもなあ...」
そこでヴァレクの陰口を言っていた男がある事に気づく。
「なあ?裏口辺りに煙が出てないか?」
「嘘だろ!!やべえって...」
裏口に蔓延していたグラフォルの霧がこの二人には煙に見えたのだろう。
急いで裏口に向かっていく。
「.....?焦げた臭いとかしないぞ?それにこの煙....」
「じゃあ霧か?何でこんなとこで」
「知らないけど、発生源を確認しようぜ、一応この通路はアカツキってガキを連れ出す衛兵共の通り道だろ?だったら早くこの煙の発生源を特定しておいた方が良いよな?」
「そう...。え?」
グラフォルの霧の中に入った男は、多数の影に囲まれる。
「おい?煙の中はどうだ?」
「お...い?嘘だよな?何であの時殺したババアが?いやいやおかしいって....。ここにいるやつらは全員死んだはず....」
「なあ?何かぼそぼそと言っているけど大丈夫か?」
「ああ!!やめろ!!近づくな!!」
「敵か!!?待ってろ!!今いくぞ」
中で大声を上げた男を助ける為に突っ込んでいくが、霧の魔法の効果範囲に入ってしまった。
その男も、過去の亡霊により精神を蝕まれていく。
「おい!!大丈....」
男が手を伸ばすと、そこにぶにっとした感触があった。
「どうした?いきなり叫んで...。おい聞いてるのか?」
男は手を引いて掴んだものを引き寄せる。
「え....?」
それは仲間の腕ではなかった。
かつてヴァレクの命により反抗勢力を匿っていた村にいた小さな赤子。
村の住民全てを殺すことになり、まだ年端もいかない子供も殺した。
その村の住民が彼の腕にしがみついていた。
「え?え?なん...」
『おにい...。ざんいだいよ...』
『おがあ゛ざんはどこぉ?』
『ん...。おんぎゃあ!!んぎゃあ!!』
『むずこを!!あの゛ごをがえじてえ!!!』
村の住民は男の体にしがみつき、声を発する。
恨みの籠ったこの世ならざる者たちの声は頭に残るねっとりした恐ろしく、消え入りそうな声。
「離せ!!離せ!!お前らなんて...。くそ!!やめ....。やだあ!!誰か!!」
『かえせえ!!』
『かえせえ!!』
『かえせえ!!』
『かえせえ!!』
「うるさい!!!どけ!!」
手で次々と亡者を払いのけるが、何度もしがみついてくる。
そのたびにしがみつく力は強くなっていく。
「ああ!!ああああああああああああああああああああああああ!!!!!???!!!!???!!!??」
どんどん視界は狭まっていく。
あれえ?何でこんなに暗く?
どうして...?俺はさっきまで...。
そうか....喰われてたのか、俺
体中を貪る亡者は次々と男に群がっていく。
男はもう抵抗する事をやめて、目を閉じる。
# ######
「党首!!二人倒れていますが...。片方が白骨化してます....」
「そうか。そいつは喰われたのだろう。生きてる方をそこの荷物に縛っておけ」
「了解しました!!」
男は体が軽くなっている事に気づく。
俺はババアに捕まって...?
「目を覚ましたか....。どうやらお前は罪が軽いみたいだな」
「....あんた達は」
「解放部隊だ」
「そうか...。結局俺らには非合法部隊がお似合いってわけか」
「俺ら?残念ながら相方は死んだ」
「殺したのか...」
男は抵抗しない。
もう逃げても無駄なのは知っているのだろう。
「殺されたんだよ。俺の霧は罪の大きさでダメージ量が変わる。どうやら相方の男は自分の罪に喰われたんだろ。抵抗しなければ死者は連れていくからな」
「そうだったな。あいつは無抵抗な村の住民を殺したんだっけか」
「抵抗すればあんたみたいに生きてたんだけどな」
「あいつも俺も諦めが早いんだよ。俺の場合はあまり殺しをしてこなかったから、無事だったんだろう。んで?聞きたい事はなんだ?グラフォル」
「知ってたか」
「そりゃあ蜂起に参加したんだから分かるさ。知らないのはありもしない罪で捕まった奴らぐらいだよ」
「そうか。じゃあ手っ取り早く済ませよう、アカツキって奴についてだ」
男は驚いた様子で顔を上げる。
「あんなガキを助ける為に乗り込んできたのか?」
「重要な役割なんでな」
「...分かったよ。アカツキは上手く衛兵を騙して俺が話せば暴動が止まるっていう理由で今向かってきている。そんでヴァレクの野郎はそれで止まらない事を知ってるから、狙撃者を雇って衛兵もろとも殺してあんたらのせいにするつもりらしい」
「じゃあ衛兵とアカツキはこの裏口から?」
「そうだ」
「本当だろうな?」
「なんなら手を貸してやりたいほどだ」
グラフォルは疑惑の目を向ける。
「どうしてだ」
「あんたらの家族はアズーリ様のおかげで助かったんだろ!!!なのに俺らの家族はまだ地下牢に幽閉されてんだぞ!!?結局ヴァレクは返す気はないんだよ!!」
「そうだったのか」
「ああ!!ヴァレクは使える駒は二度と離さない。そんな野郎に忠誠心なんざあるはずねえだろ!!」
「それでお前も反逆者になりたいと?」
「それは無理だ...。妹だけは失うわけにはいかないんだ...。あんたらには手を貸すからヴァレクの野郎を殺してほしいんだ...」
「もしお前が捕まってもお前は助けないぞ」
「ああ、頼む。それでいい」
「そいつの拘束を解いてやれ」
グラフォルの命令で拘束を解くと男は立ち上がり、裏口に無言で向かっていく。
「いいんですか?あんな無茶なお願いなんか聞いて」
「どうせヴァレクは殺すんだ。あいつに頼まれなくてもな」
「はいはい...。党首が良いなら文句は言いませんよ」
ため息をつき青年はまた各地の状況を調べにいく。
グラフォルは扉の前でアカツキ達が通るのを待つ
# ######
【アカツキ 連行中】
「なあ?この屋敷ってどんぐらいでかいんだ?さっきから迷路を通ってる気分なんだけど」
「そうだな?詳しい面積は分からないが、アズーリ様の屋敷の二倍はあるらしい」
「へえ...。こんなとこで住んでたら迷って餓死しそう」
「そんな事はないさ。色んな所で見取り図があるから現在地が簡単に分かる」
「あんたらはな!!俺は字が読めないんだよ!!」
「そうか...」
あ....。やっぱり俺は勉強できない野蛮な奴だと思ってるな?
くそ!!いつもなら言い返すんだが、今は駄目だ。
「ところであんたらはヴァレクの事をどう思う?」
「そうだな。英雄?」
「まあ過去の蜂起を鎮めた方だからな」
「へえ...」
やっぱり衛兵と奴隷とでは大分見方が違うのか。
そんな事を考えているアカツキの前に見覚えのある四人組が通る。
「あ!!」
「なんだ貴様か」
アカツキだけでなく衛兵達もその場で止まる。
「シンさん達でないですか?どうしました?」
「シンさん?」
え?どゆことですか?
コイツらって奴隷で非合法部隊じゃ...
戸惑いを隠せないアカツキの耳元でグルキスがボソッと呟く。
「僕たちは表は衛兵の取締役だよ」
「マジでか...」
まあそうだよな。
この屋敷はNo.1の屋敷なんだから奴隷が堂々と歩いていい訳ないか。
てことは全員何かしらの役目を表では演じてるわけか。
「早く行かなくていいの?ヴァレク様からの直々の命令でしょ?」
「少しぐらいなら寄り道してもいいじゃないか」
「あっちは早く行った方が良いな」
「二人は仕事バカだなー」
「あんたらがサボりすぎなのよ。それにルカの場合は早く家に帰りたいだけでしょ」
「貴様らは最初に行っていろ。俺はこの衛兵達に少し頼み事がある」
後ろで言い争っている三人をヴァレクの下へ向かわせた後、シンは衛兵達に命令を出す。
「四人ともアカツキの連行は途中で裏口の門にいる奴らに任せておけ、その後速やかに自宅に戻って家族の安全を確保していろ。いいな?」
「仕事は良いのですか?」
「家族を守るのも立派な仕事だ。分かったら行け。ただアカツキ、お前には少し指導が必要だ」
「.....ん?」
先ほどまでの流れでなぜ自分が指導を受けるのか アカツキは不服そうな顔を見せる。
「当たり前だ。貴様には暴動を止めてもらわなくてはいけないのだからな」
「はいはい...。衛兵取締役のシン様には逆らえませんよ」
アカツキを引き連れ、シンは近くの小部屋に連れていく。
薄暗い部屋に明かりを灯した後近くの椅子に二人とも腰かける。
「そんで?お前はなにをしたいんだ?」
「言ったろう。暴動を早く止めてもらうと」
「あんたらお得意の人質か?」
「違うな。止めてもらいたい作戦がある」
「残念ながら、俺はあいつらを止める事は出来ないな」
嘘でここまで乗り切ったからな。
「逆だ。俺たちの作戦を止めてもらいたい」
「嫌だね。あんたらにも手を貸すわけにはいかないな」
「どうしてだ?」
「当たり前だ!!てめえらはウズリカ達に攻撃を仕掛けて、あのおっさんを裏切った!!あのおっさんは必死だったんだぞ!!?お前らとは違い本気で奴隷の為に動こうとしていた。なのにあんたは衛兵取締役?ふざけんな」
アカツキは数日前のあの悲惨な光景が今も目に焼き付いている。
あの男が最初から死ぬ覚悟で敵の位置を調べたのを知った時は自分を殴ってやりたい程だった。
分かっていた。力を持たない子供より、力を持った男では、先に始末されるのは後者だと。
それを心のどこかで思っていたけど、何も知らないふりをしていた。
見捨てた自分も憎いが、それ以前にこの男が裏切ったのが原因なのだから、手を貸すわけにはいかなかった。
「これはお前の為だ」
「何でだ」
「今回の英雄はアカツキ、お前だ。あの時の誰かのように大事な者を失う事はないように、配慮してやっているつもりなのだがな」
「俺が英雄?力を持たないただの子供だよ」
「それでもお前の為だ。既に作戦は始まっている。時間はもうないぞ」
「だから何の話をしてんだよ!!」
「キュウスの屋敷襲撃作戦」
「.....は?」
なんでここであのばあさんが出てくる?
俺には関係...
「関係は十分あったはずだ。あの屋敷の全員とな、キュウスとウズリカは今や大犯罪者を都市に招き入れた反逆者。アルフはお前の事を大分慕っていたよな?」
「お...おい!!どうして...。あいつら...が」
そこでシンは手紙を差し出す。
「その手紙に大体お前が知りたい事は記しておいた。早く行け」
アカツキは手紙を握りしめ、扉を出る。
「どうした?もう終わったのか?」
「あいつらを止める為に重要な事を教えてもらった。一刻も早く行こう」
「そうか!!それは良かった」
衛兵は早く暴動を止める為に速度を上げた、アカツキは恩人達を救う為に速度を上げる。
そして裏口にたどり着く。
外からこちらに歩いてくる男がいた。
「あなたがアカツキを連れていく方ですか?」
「...?...いや。ああ、そうだ、ヴァレク様に頼まれた」
今一瞬だけど戸惑った?
こいつは最初から知らされていたはずだよな。
男が最初に見せた感情は戸惑いだった。
それ気付たアカツキは考える。
多分こいつは知らされていない...。
だとしたら本当の事を言うはずだ。
そんでその理由は?
「それでは、我々は行きますので連行をお願いします」
「....ええ、お疲れ様でした」
衛兵達はシンに言われた通りに行動し、屋敷から出ていく。
残されたのは拘束されているアカツキと嘘をついている男。
「なあ、なんで嘘をついたんだ?」
「それは俺が聞きたい。聞いていた話とは全く違う」
「いや?だってシンがあんたに頼んだって言ってたぞ?」
「シンさんが?」
「ちょっと待ってくれ、つまりあんたは何も知らされていないのか?」
「知らされるも何もここを衛兵が通るとだけ聞いていた」
「.....随分と話が食い違うな?」
さっきから色んな事がありすぎて頭がこんがらがってくるな...
「まあ衛兵に手を出さなくて良かった。下手したら衛兵達に殺されるからな」
「たしかにその点は同感だな。敵が増えるのは避けたいし」
「そんな訳でグラフォル、上手くいった」
「え?」
左右の扉が開くと中からグラフォル達が歩いてくる。
「二人ともまずは部屋に入れ」
グラフォルの所にアカツキ、男はもう片方の部屋から出てきた仲間についていく。
「まさか潜入してたとは...。良く入ってこれたな」
「それほど各地の暴動が上手くいってるってことだ」
部屋にはグラフォルを含めて七人が武装して待機していた。
一人は非武装で石と会話していた。
「なあ?あれは何してんだ?」
「各地の状況を調べてるんだ。戦況次第で屋敷内を暴れまわろうと思ったが運が良かった」
「じゃあキュウスの屋敷の状況を教えてくれ!!」
「キュウス?なぜだ?」
「やばいんだよ!!屋敷に敵が向かってきてるんだ!!」
その言葉を聞いたグラフォルの顔が青ざめていく。
屋敷にいるのは、主であるキュウスにウズリカそして....
グラフォルの娘アルフがいる。
「くそ!!急げ!!」
グラフォルは剣をとり立ち上がるが連絡をしていた青年が止める。
「党首!!ダメです、今連絡が入りました。シラヌイ部隊に合流したアスタ部隊が、壊滅的状況です!!」
「なぜだ?あの二人がやられたのか?まだあの四人は動いてないはずだ」
「ジューグの部隊総勢十万の兵に囲まれています」
「本隊が合流したのか?ジューグの部隊は今、他都市にいるはずだ...」
「本隊ではなく魔道具兵だそうです。機械都市製の...」
「どうしてここで機械都市が関わってくる!!」
「ジューグは今はこの屋敷内で待機しているはずですから、かなり前から交流があったと考えると...」
「まだまだ兵は残っている...?」
「はい。それも一地区でこの量です。他にもオルナズさんの人形が暴動を起こしている地区とアズーリ様の屋敷の二ヶ所にも向かわせるはずですから単純に考えて残り二十万の兵がいるかと..」
つい先ほどまでは優勢だったはずの解放部隊は、魔道具兵の乱入により一気に不利な状況に追い込まれた。
現在の問題はキュウスの屋敷の襲撃に三十万はいるであろう魔道具兵の処置。
二ヶ所で圧倒的に不利な戦いに挑まなくてはならない。
「おっさん。俺が屋敷に行くからその魔道具兵ってやつらを足止めしててくれ」
「一人で行くのか?刃はどうした?手ぶらで行ってもただ無駄に命を落とすだけだ」
「ようやく全て分かったんだ」
「何がだ」
「この暴動の意味とあの少女の居場所」
アカツキの手にはシンに渡された手紙が握られていた。
中にはこの暴動の本当の意味とアカツキの全てが記されていた。
「神器よ。主が命ずる。彼方より来訪した神によりもたらされた災いはここに在り。アニマパラートゥス」
アカツキが唱えたのはシンの手紙に記された神器の主にのみ使える魔法とはまた違った、なにかだ。
空間や時すらも関係なく、どこに有ってもたとえこの世界に無かったとしても主の下に戻るという神器の力。
しかしそれはこの世のエネルギーを使い、強制的に引き起こす。
この世に存在するエネルギーは魔力だ。
もしどこかに厳重に保管されていたとしたら周囲の人間から魔力を吸い付くす。
粉々に破壊されて存在していないものなら関係のない者からも魔力を吸い付くし現出する。
そして今回の場合はこの屋敷のどこかに保管されている。ならば近くにいる者から魔力を吸われていく。
「だけど躊躇はしてられない」
アカツキの足元から刃は出現する。
アカツキの前頭上まで浮いた後、カタン...。と音をたてて刃は床に落ちる。
「これでいいか?」
「どういう原理でそれは...」
「神器なんだから原理とかは関係ない。本来の役目の為ならばな、だってよ」
「党首、我々も早く救援に...。もし本当に神器ならアカツキさんは勝てます。アズーリ様の屋敷にもいずれ魔道具兵は向かうはずですから人手は多い方が良いかと」
青年の言っている事は正しい。
もしキュウスの屋敷に全員で行ってしまえば必ずシラヌイとアスタも敗けてしまう。
そしたら今度はオルナズの所に向かい、屋敷も全滅してしまう。
「分かった....。石を貸せ」
グラフォルは大きな声で各部隊に連絡をする。
「アカツキの奪還に成功!!解放部隊は全員屋敷に集合しろ!!シラヌイアスタ部隊の下には俺達が行く!!アカツキはキュウス様の屋敷襲撃を防ぐ為に単独行動になる!!」
グラフォルは戦場に報告をした後すぐに屋敷部隊を引き連れ屋敷から出る。
アカツキは手紙を握りしめ走り出す。
【ヴァレクの屋敷 連絡部隊より】
屋敷内緊急警備の要請!!
神器の紛失と共に研究室に居た三十八名の死亡が確認された!!
屋敷の中にまだ敵はいると思われる。
戦場には臨時として魔道具兵を一斉投下する。
魔道具兵にアズーリの屋敷を陥落させ、屋敷内の敵を排除すれば暴動は終息する。
総員任務を全うせよ!!