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遥か彼方の浮遊都市  作者: 神羅
【信仰都市編】
176/185

<一分間の死闘>

迫るのは全てを等しく砕き、潰し、捻り、そこにある形と命を奪い取っていく死の触手だ。


その触手の主が見えない以上、荒れ狂う触手を止める手立ては今のところ存在しない。


出来るのは迫る触手を凪ぎ払い、一分というあまりにも長い時間を守りに徹することで誰一人として犠牲者を出さずにガルナとアマテラスを守り抜き、二人が契約を結んだ後にここから離脱することだけだ。


立ち向かうことだけが勝つ為の手段ではない。命あってこそ勝利を掴むことが出来るのだから。


敗北すれば容赦なく命が摘み取られ、何も為すことが出来ないまま魂集う安息所に連れていかれることになる。


それに抗うために、彼等は戦う。


「まずは――――――ぶっ飛ばす!!」


グルーヴァの力強い踏み込みが大地を揺らし、地中から湧き出る業火が下から上へと滝のように流れていく。


グルーヴァ、ナナ、クレアの三人がそれぞれカバー出来る程度に距離を取り、ガルナとアマテラスが2頭の狼に囲まれながら淡い光に包み込まれる。


「グルーヴァ、これじゃ前が見えないけど!?」


現れた炎の壁がナナ達の視界をも覆い、どこから攻撃が来るか目で捉えることが出来ない。一見悪手に見えたそれも、炎の壁が消える頃には最善の一手だったことを証明する。


「――――――うっそ」


あれほどまでに死を連想させた恐るべき触手が跡形もなくグルーヴァの業火に焼かれ、縦横無尽に暴れまわった触手により破壊し尽くされた街と、その触手を呼び出していた青年の姿が露になる。


数十分前までは戦闘の余波で所々破壊されていただけでまだ街としての形を保っていた筈だというのに、ネヴの呼び出した触手は僅かな時間で街一つを更地に変えていた。


その圧倒的な物量と威力を持った触手を恐らく無尽蔵に所有しているであろうネヴもだが、仮にも街一つを更地に変えたそれをたった一人で焼き払ったグルーヴァの実力にただただ驚愕する他ない。


「ま、これで終わりじゃねぇよな」


そして、目に光を宿さぬ青年が打った次の一手は。


「大地に手を、空に瞳を」


青年の言葉は形となり、人を殺し、大地を枯らす新たな厄災が信仰都市で生まれ落ちる。


それはいつか見た不吉の兆し、呪いと混じりあったアカツキが起こした災厄の前兆と酷似していたが、その異質さと直接肌で感じとれるプレッシャーは段違いだった。


「全員正気を保て!!生半可な気持ちじゃ―――持っていかれるぞ」


新たな厄災、未だ誰一人として観測したことのないそれを第六感で感じ取った英雄が叫ぶ。―――そして、訪れた。


「――――――ぁ」


―――見ている。見られている。覗かれる。暴かれていく。


顔を、手を、足を、耳を、鼻を、口を、お腹を余すところなく見られ、見透かされていく。


口腔、舌、咽頭、食道、肝臓、胆管、胆のう、胃、十二指腸、脾臓、膵臓、小腸、盲腸、虫垂、直腸、全部、全部だ。


ありとあらゆるものがその()に見つめられている。なめ回すように、じっくりと。


体のありとあらゆる部位を気持ち悪くなる程に意識してしまい、心臓の鼓動が鼓膜を激しく揺らし、誰の声も聞こえなくなっていく。


すると、体を流れる気持ち悪い何かを感じ取る。


まるで体の内側を異物がはい回るように流れるそれが気持ち悪くて、煩わしくなっていく。


あぁ、あぁ。


―――気持ち悪い


、気

持ち悪

い、気持

ち悪い、気持ち悪い、気持

ち悪

い、気持ち悪い、気持

悪い、気持

ち悪い

、気持

ち悪い、気持ち悪

い、気持ち悪い、気

持ち悪

い、気持ち悪い

、気持ち

悪い、気持ち

い、気持

ち悪い、気持ち悪い、気持

ち悪い、気持ち悪

い。


駑うすれ芭意鋳の (どうすればいいの)陀ろう火(だろうか)菜に藻可媽が器もち(なにもかもがきもち)割r1。


あa、そu堕。


―――全部、抜き取ってしまえばいい。


クレアはやがて何かを悟ったように笑みを作り、自身の左腕に爪を立てると。


「クレア...?」


「sa1しょkあら、kou巣れbよかttた」


―――勢いよく爪で自身の左腕の肉を抉り取り、そこから流れる血を見て声にならない歓喜の叫びを上げた。


「く―――っそが!!ナナ、押さえとけ!!」


明らかに言語機能に支障をきたし、異常な行動に走ったクレアをナナが取り押さえるとグルーヴァは直ぐ様振り返り、ネヴの背後に現れた空間の歪みを見て苦笑をこぼす。


「―――ハ。ここまで来ると笑えてくんな」


「潰せ」


空を覆った無数の赤い瞳が人の精神を狂わせ、狂気の底へ引きずり込む精神攻撃なら次に来るのは大方予想がついていた。


単純な力比べ、原初から存在する戦いの場で勝者を決める手段である、物理的な攻撃だ。


ネヴの背後、空間の歪みから現れた巨大な人の腕は手を広げたままグルーヴァへと迫り、その道中で触れた大地を深々と抉っていく。


威力は十分、速度も申し分ない。触れればどうなるのかな誰の目から見ても分かるだろう。―――それが英雄でなければ、だが。


「デケェのが仇になったな」


その圧倒されるほどの巨大な人の腕、速度は申し分ないとは言ったが目に見えない速度で迫ってくる訳ではない。行動の選択肢が真正面から迎え撃つに絞られる程度のスピードだ。


もし仮に真正面から迎え撃つことすら出来ないスピードだったのならまだ驚異になっていたろうに。


「―――最っ初から引くつもりなんざこっちにはねぇんだよ!」


グルーヴァの視界が開かれた手に埋め尽くされた一秒後、迫り来る巨腕が目標を握りつぶすことすら叶わずに大きく進行方向をずらされる。


その理由は真正面からの力勝負で敗北したから、左腕を失い、片腕のみとなったグルーヴァが真正面から巨腕を殴り付け、上へ弾く。


「そっちからも見えてねぇんだろ?」


そして、グルーヴァのカウンターが炸裂する。この都市において右に出るものは無いとまで言われた過去の大英雄、その男の極炎が前方に存在するありとあらゆるものを焼き尽くさんとする。


グルーヴァの炎は人の手で弾かれた巨大な腕を焼き焦がし、その先に居たネヴをも巻き込みながら凄まじい勢いと熱量で前進し、その灼熱の余波は後方でクレアを取り押さえていたナナにまで伝わり、乾いた風と若干の熱を帯びた熱が頬を撫でて、通りすぎていく。


「これで少しは時間が...」


荒れ狂う触手は8秒で消滅し、7秒後に出現した巨大な人の腕は3秒で焼き払われた。次の一手がどんなものなのかは知らないが、その攻撃に移るためには数秒程度の時間が必要となるだろう。


ようやく、僅かに希望的な未来が形を帯びて、この状況を乗り切れるという実感が沸いてくる。


「これで――――――ぇ...?」


しかし、その希望を砕いたのはやはり一瞬の出来事だった。


取り押さえていたクレアの腕から流れる血が赤ではなく黒に見え、もう一度流れる血のついた自身の腕を見ると――――――。


そこには、着ていた服をすり抜けて体内へと侵入する黒い血液があった。


血の触れた腕が反射的にクレアから離れ、ナナが血液の付着したであろう服を破いてそこを見ると浮き出した血管と、――――――いつもとは違う色の血が体を流れていた。


「あa...やb位」


そして、視界を埋め尽くしていく無数の人の顔と、鼓膜を叩く絶え間なく響く子供の鳴き声と地の底から響いているかのような老人の声と、甲高い女の叫び声が奏でる不協和音。


こんな景色と声を聞いてしまっては、とてもではないが正気を保っていられない。


―――どうすればいい。dうすればいい、どうsれ葉いぃ?


「――――――っ!?」


後ろで誰かが倒れる音が聞こえ、振り向いた先にあったのは自身の左腕を何度も掻き毟るクレアと人間のものとは思えない色の血を吐いてもがくナナの姿があり。


「おい!!だいじょ...」


駆け寄ろうとしたグルーヴァの肩を何かが掴み、その正体を見ようと視線をナナ達から自身の肩へと移すとそこには、先程のような馬鹿げたサイズの腕ではなく等身大、普通の人間のものと何ら変わりない腕。


「くそ、やっちまった」


振り返ってしまった。ネヴから目を離してナナ達を助けようとした瞬間に敗北は決まってしまったのだろうか。だとしたら、それは。


「わりぃ、アシャ。約束、守れ――――――」


最後までグルーヴァに言わせることなく、無数の腕がグルーヴァの足を、手を、頭を、胴体を包み込み、どこかへ連れていこうとする。


無数の腕の発生源は先程のグルーヴァの炎で焼かれ、もう動くことも出来ずに大地へ横たわっていた焼け焦げた巨腕。その爪の隙間や、血管を突き破って現れていた。


動くことの出来なくなった腕から派生し、樹木のように枝分かれしながら現れた小さな腕はグルーヴァを巨腕へと持っていき。


巨腕の手の平に現れた大きな口の中にグルーヴァごと入り込み、その口が閉じられると中で肉と骨が噛み砕かれる音を立て、手の平の口は血を流しながら満足そうに笑う。


『こうなることは分かっていただろう。あと30秒、貴様らの敗北だ』


『......』


『何、あの化け物の手を相手にしてよくここまで耐えきった。それだけでも十分称賛に値するだろう、結局は死ぬがな』


別世界の王はネヴの視界を介して世界を観測する。今の彼の視界に映っているのは目の前で噛み砕かれていく英雄と、その背後で狂気に堕ちた女と狂気の伝染によってもがく人間のものとは姿があった。


『アマテラスの近くに居れば助かったものを。英雄ではない人間にあの災厄を耐えることは出来んと分からなかったのか』


存在するだけで害を為す呪いを払い除けるアマテラス、力の大部分を雫に譲渡していながらも効果はそのままに対象範囲は大きく縮小している。


おそらくアマテラスの半径2・3メートルであれば、人を狂気に堕とす呪いは効力を無くす。そんなことをクレアやナナが知らないのは当然だ。


『知らないというのは罪なものだな。せめて正常な精神のまま死ねた方が幸福であっただろうに。しかし...』


一人は腕に飲み込まれ死に、二人は狂気の底へ堕とされガルナとアマテラスを守る存在は無い。だというのに、彼等は逃げることもせずに契約を続けている。


『集中していて何も分からないか、まだ仲間を信じているか。どちらにせよ愚かな事だ。―――無駄なことをしているという自覚は無いのだな』


『随分とお喋りじゃないか。余程、気分が良いのかな』


『逆にお前は気分が悪いと見える。信じていた人間の死ぬ様を見るのは苦しいか?』


『人の死ぬ様を見て喜ぶ奴の方がどうかしているでしょ。例えば、君とかはその代表格だ』


『随分と辛口な評価だな。お互い、同じ人間を見守る者同士仲良くしたいのだが...。負け犬の戯れ言程度に私が怒るとでも?』


勝負が決したのだと、この男は思っているのだろう。3英雄の一人、グルーヴァが敗れ、クレアとナナも既に戦えなくなったと―――本気で彼は思っているのだろうか?


『何て、まだ負けていないって思ってる僕の方がおかしいのか』


『急にどうした。遂に頭でもイカれたか』


『いいや、僕は正常だ。ただ、―――勝利を確信している奴の顔が敗北する時はどんな風になるのか楽しみだなっては思う程度にひねくれてはいるよ』


『......くだらん。妄想をするのは勝手だが、それを口にする気が知れん』


今更何を言うかと思えば、妄想虚言の類い。ならば、見ればいいだろう。―――信じた人間達の死ぬ様を。


「殺せ」


グルーヴァを噛み殺した巨腕にネヴが命令を下すと、枝分かれした人の腕が最後の希望を摘み取る為に二人の少女へと迫る。


今も二人は狂気に飲まれ、正常な判断を出来ていない。そんな彼等を殺すのはいとも容易いだろう。


『終わりだな』


ネヴの精神世界でその様子を見ていた異界の王が呟き、ナナとクレアをグルーヴァ同様巨腕の口へと引きずり込もうとする腕が遂に二人の下へ到達し、勝敗が決する――――――かに思えた。


「―――――――――」


二人はやはり狂気に飲まれ、動くことは不可能だ。しかし、そんな彼女達は迫り来る死を回避していた、いいや―――白銀の毛並みをした二頭の狼に救われていたのだ。


白銀の狼、ミミとロロは二人の服を口で噛み、大きく跳躍しながら空中へ放り投げ、背中へ強引に乗せると二人を落とさないように絶妙なバランスを保ったまま更地となった街の中を駆け抜けていく。


『―――バカな』


『いいや、現実さ。あの災厄はその瞳で見下ろす()()の精神を狂気へ誘う。そう、人間だけをね』


『だとしてもだ!!』


『有り得ないと?君こそ現実を見なよ、―――これが現実さ』


事態は有り得ない方向へと向かい、異界の王の憶測は外れた。だが、それは生き延びる時間が増えた人間が二人現れた程度だ。


『そうだ、ガルナとアマテラスを殺せば全てが解決するのだ。最終的に奴等さえ居なければ...』


異界の王の言った通り、ナナとクレアを殺すべく放たれた腕は二頭の狼に連れ去られた二人を5秒程追った後に踵を返しガルナとアマテラスの下へと迫った。


「やれ」


ネヴの命令が再度下され、今度こそ妨害の入らないように速度を僅かに速めて死をもたらす腕がガルナ達へ迫る。クレア達を連れた狼は既に距離を取っている。


今更追い付き、二人を連れ去ることは不可能だ。


それだけではない。仮に助けれていたとしても契約を結んでいる最中の二人に何かが触れた時点で契約は中断される。そうなれば、また一分間の時間を必要とするのだから、どちらにせよ未来は無いだろう。


『アマテラスを殺した後に逃げた人間を追えばいい。所詮、逃げ切ることは出来ないのだからな』


今度こそ、勝敗が――――――。


「ネ...ヴさん。―――お借りします」


契約を結び、動くことの出来ない二人を死から救助したのは少し離れた所でミミに支えられながらガルナ達へ手を伸ばしていたクレアだった。


「あの二人を、守ってください!!」


クレアの叫びに呼応して現れたのは地獄の主ではない方の、英雄ネヴ・スルミルの考案した呪術の原点にして最高峰の結界だ。失われた筈の呪術はガルナとアマテラスを守る結界として現れ、外界からの干渉を封じる。


『英雄ネヴ・スルミルの呪術。いくら君の被造物たる異形の怪物でも破壊することは叶わない。10秒間、彼等に手出しは出来ないよ』


『たかが10秒だろう!!』


『いいや、1()0()()()、だ。グルーヴァ達が稼いだ28秒に連れ去られたナナちゃん達の追撃に要した5秒に加えてのクレアさんの稼いだ10秒。残り17秒、彼等なら成し遂げられる』


『無駄だ!!残り17秒もの時間を二人で稼ぐことは出来ん!!』


少しずつ熱の入っていく異界の王の口振りに幼い神ハデスは悪戯っぽく笑みを浮かべて。


『どうしたんだい、随分と感情が露になってるけど?こうなることは分かっていた...だっけ?あれ、取り消さなくて大丈夫かな?』


『誰にも望まれなかった駄神如きが...この程度で勝ったつもりか!!』


『望まれてたさ。ただ、唯一。君の大好きなネヴ・スルミルにね』


『―――――――――』


ハデスの口撃(こうげき)に目を見開きながら静かな怒りを見せる異界の王、ネヴの精神世界での対話の外ではクレアの張った結界によって異形の怪物の腕からの攻撃を耐えるガルナ達は視界を埋める(おびただ)しい数の腕と結界を殴り付ける音を聞きながらも契約に集中していた。


『だがこの10秒を終えて何が出来る。随分と図に乗っているがこれ以上時間を稼げるとでも―――!!』


異界の王が視界を共有しているネヴの前に次いで現れたのは空を埋め尽くす程の氷の柱と、雲の間を駆け巡るけたたましい雷鳴の音。


「全部の攻撃が効かないんだよね、クレア」


「はい!!」


その言葉を聞きながらナナは魔法の発動準備にかかり、結界が解ける前に今の自分が持てる全力を5秒間叩き込む。


ミミ達がネヴから距離を取っていてくれたおかげで2秒の準備時間で攻撃される心配はない。本当に、ミミとロロには助けられっぱなしだ。


この戦いが終わったらミミ達にはそれ相応の礼をしなければならないだろう。一緒に思う存分遊んであげたり、美味しいものをたくさん食べさせたりしてあげよう。


その明るい未来を手に入れる為ならば、今ここで諦めることは許されない。


こう言うのは癪だけど―――アイツの為に数秒くらいは稼いでやろう。


『ドゥシオン』


ナナの詠唱によって空を駆け巡っていた雷が大地に幾度も落とされ、それと合わせて空で生み出された氷柱が大地に降り注ぐ。


威力はグルーヴァ程では無いとはいえ、2属性の魔法を同時に発動させた複合魔法の驚異はその数にある。今回使用した魔法は雷と氷の魔法、どれも中位と呼ばれるもので本来なら並大抵の魔法使いならば誰もが使用できるものだ。


だが、ナナがそれを使えば空から大地へと落とされる雷の数と質は二倍以上に及ぶ。氷柱も本来であれば数えられる程度しか生み出せない筈なのだが、ナナの魔法の才能であれば中位を上位のものと遜色ない威力で発動でき、生成される氷柱も桁違いとなる。


大地を焦がし凍てつかせる雷氷の魔法はナナの魔力を吸い上げ、大地に跋扈する異形の腕を殲滅していく。結界に守られているガルナ達には攻撃が当たらないから出来た芸当だ。


『だが、足りん!!その程度では全てを凪ぎ払う事は出来ないだろう!』


ナナの才能、持てる魔力を総動員してもグルーヴァのようにはいかない。彼ならば余すところなくその業火で焼き尽くすことは可能だっただろうが、度重なる戦闘、尽きかけた魔力では全ての腕を消し去るには足りない。


だからこそ、ナナは言うのだ。


「あたし一人でどうにかなるなんて思ってなかったよ。だから後は...」


一人でどうにか出来る、そんなちっぽけな自信が自分に無かったことをナナは誇る。仮にこの攻撃で一掃できると思っていようものならこの先にあったのは完全な敗北なのだから。


「―――クレア、頼んだよ」


『天雷』


ナナによって干渉を受け、天空にて鳴り響いていた雷鳴が別の何かの干渉によって上書きされ、雲間を駆け巡る雷の色が紫へと色を変化させ、クレアの視線の先、結界が解ける前に周囲に残った腕を余すことなく消滅させる。


―――使い道は自分で決めろと言われた。常に先を見据えて考えておけと。それでも今ここで使うことに躊躇いは無かった。


たった一度きりの呪術、英雄ネヴ・スルミルがクレアに託した数少ない呪術の中でも最高峰の一撃を露払いに使うとは何事だ、そんなことを思う人間はこの場には誰も居なかった。


まさに最高のタイミング、未来を勝ち取る為の手段としてクレアは天雷を使用し、―――見事、ガルナ達を窮地に陥れていた無数の腕をナナと友に一掃して見せた。


『あと、9秒』


ハデスが息を飲みながら契約が完了するその時を待ち望み、異界の王は煩わしげにネヴの視界の先にいるガルナ達を見る。


「まだ終わってない!!ミミ、全速力で行くよ!」


グルーヴァの手によって動くことも出来ないほどに損傷した巨大な腕は大地に横たわり、枝分かれして出現した等身大の腕はナナ達によって全て除去された―――かに思えた。


「やっぱりまだ残ってた!!」


爪の間、破れた血管の中、巨大な腕から更に分裂するように小さい人の腕が飛び出す。

その体内で更に小さな腕がどうやって生成されているかは知らないが、その生産も恐らくグルーヴァのカウンターを食らった時に停止している。


でなければ、一度全て凪ぎ払った程度では消滅した矢先に次々と腕が現れていた筈。しかし、ナナの攻撃を食らっている時は数が減る一方で新たな腕が現れる事は無かった。


だからこそ、一度の逆襲に全霊をかけ、その体内に残っていたものを全て使っての攻撃を仕掛けたと思っていたが、その楽観的な思考を払拭するようにナナは万が一を予想した。


十本にも満たない先程よりも小さく、所々欠損した腕がガルナ達へ向かって一直線に突き抜けていく。


「大丈夫、―――追い付ける」


ミミの背に乗っていたナナが背中を軽く叩くとまるで意思疏通が図れているかのようにミミは先程見せた大きな跳躍をし。


「頼んだ!!」


空中へ身を投げ出したナナの腕に躊躇いなく噛みつき、それを待っていたナナは痛みを堪えてしっかりと前を見据える。


噛みついたナナの腕を、体を使って大きく降り下げ――――――ガルナ達へ迫る不出来な腕がある方へと投げ付ける。


投げる際にナナの腕が離れないように深々と突き刺していた牙を出来る限り浅い所まで引き抜いたとはいえ、ナナの腕の表面の肉は抉れていく。


骨が当たるすれすれの所、血管すらもその牙によって傷つけられていながらナナは動かせる左手で服の中に隠し持っていた小刀で最初に3本切り落とし、二本を片足で地面へと押さえ付け、その後小刀で切り落とす。


残った2本はなけなしの魔力を使って土を盛り上げさせ、上へ弾いた後に投げつけた小刀が切り裂いていき、ミミとナナのコンビネーションが最後の攻撃を無力化――――――。


「ナナちゃん!」


それは遠くに居たクレアだからこそ誰よりも早く気づけた異変。しかし、気付いた所でそれをどうにかする手段など彼女達は持ち合わせてはいなかった。


今まで、攻撃を仕掛けてきていたのはネヴが呼び出した異形の怪物の断片。ネヴ・スルミル本人が攻撃に転じることは無かった。


それでも、彼自身が直接攻撃を仕掛けてくるのではないかという予想をし、警戒を続けてきた。しかし、気の遠くなるような数秒間の激闘は次第に注意力を散漫させ、最後の攻撃に見えた不出来な腕を切り落とした時点の安堵感、魔力不足による体への負担がここに来てナナを油断させた。


そして。


「――――――クレア!!」


───同じように、注意が逸れたクレアを狙う影が現れる。


クレアの背後に迫るのは既に物言わぬ置物となり、小さな腕の母体となった―――そう思い込んでしまっていた巨大な腕。


クレアはガルナ達の隣に立つネヴに気を取られ、それに気付くことは出来ない。


異変にいち早く気付いたロロがクレアを助けようとするが、僅か一秒後に迫る距離にある巨腕から逃げ出すのは幾らロロでも不可能だ。


ほんの一瞬の安堵と油断をナナはしてしまった。それが一秒にも満たない刹那の瞬間であっても、取り返しのつかない時間となる。


動くことは出来ないと思い込んでいたグルーヴァによって焼かれた巨大な腕と、警戒を緩めてしまったが故に動きだしたネヴをどちらともナナ止めることは出来ない。―――その為の手段を持ち得ない。


「や――――――」


無駄だ。もう届かない。既にネヴはその手に持った短剣を振り下ろし、ネヴが空間の転移で飛ばしたと思われる巨大な腕を止めることは叶わない。契約の最終段階に移り、極限の集中状態にあるガルナと、その巨腕から、一秒以内では逃れることの出来ないクレア、両方に終わりが迫る。


絶望を乗り越えるには――――――あと、一秒足りなかった。


何もかもが足りなかった。自分の持てる力ではこれ以上先に進むことは出来ない。


―――あの時と同じだ。私では、死に向かっていく仲間を止めるための手段をナナは持ち合わせていない。


『ここまでだな。ネヴの勝ちだ』


異界の王は今度こそ勝利を確信し、この一分間の激闘を制したのがネヴであると告げる。


ガルナ達がネヴに殺される瞬間、刹那の時間はゆっくりと進んでいく。一秒が一分にも感じるような遅さで、死が迫る瞬間を見せつけるかのようにゆっくりと流れていき―――。


『いいや』


ハデスはこの時間の進んだ先にある景色をガルナ達の血に染まった鮮血の景色ではない、別の景色を見ている。それは、最後まで人間の事を信じ続ける彼だからこそ見れた―――希望へと向かっていく未来だ。


『――――――ここからさ』


『...な』


そこでようやく異界の王は気付く。この激闘の一分間、それが一分という時間に起きたとは思えぬ密度の攻防戦、それを当事者ではなく、ネヴ・スルミルの精神世界にて観測していたからこそ鈍っていた五感が引き起こした勘違いだったことに。


今、ゆっくりと流れていくような一秒にも満たない時間、これが戦いの場において決着の瞬間が永遠にも思えるようなものではなく、―――時間が何者かに操作され固定された。引き伸ばされた刹那であり、それが外的要因によるものだと気付くのに時間を要してしまった。


『有り得ん!!』


時間に干渉し、時を止めることが出来るとしたら、それはガルナ以外に存在しない。時空間魔法という、新たな概念の魔法を用いる事が出来る人間など、彼を置いて世界に存在していい訳がない。


そんな超常的な魔法を扱えるのが一人でなければ、世界意思はそれを見過ごしはしない。


特殊魔法などと一括りにされてはいるが、時間、空間に作用する魔法などかつて異界の王が世界を滅ぼしかけた時にすら見たことは無かった。


だが、それだけではない。今のガルナには時間を止めることなど出来る筈がない。まだ未熟なガルナでは、空間を渡るのが精一杯であり、世界で平等に流れる時間をどうにかすることなど不可能、それ以前に―――彼は何も出来ないというのに。


契約が結ばれる瞬間までガルナはその場を動くことは勿論のこと、魔法を使用することは出来ないのだ。


『異界の王にして神、いいや』


『───ベルメリヨン・セレーノス。君の望んだ破滅の未来はここで終わりだ』


セレーノスの告げた勝利宣言が、ハデスの信じた人間達の手によって完膚なきまでに砕かれる。彼が興味を持たなかったものに、彼は敗北したのだ。


「――――――よくやったな、ナナ」


確かに、私は見た。絶対的な死、変えようのない未来が一人の男の手によって砕かれ、絶望という漆黒すら塗り潰すように現れた黒き光。


止まった世界、誰もが動くことすら出来ない、意識すら持たない世界で彼だけは動けた。いいや、世界の時を止めた彼だけが動けるのだ。


「遅いっての――――――バカ野郎」


届かなかった。自分の力ではこれ以上先に進むことは許されなかった。けれど、今はこう言える。


―――彼ならば。


――――――アカツキならば、その先に進めるだろう、と。


止められた世界が動き出した瞬間、ネヴ・スルミルの手にしていた短剣が宙を舞う。否、―――宙を舞ったのは短剣だけでは無い。


「―――――――――?」


ネヴは自身の体に生じた異変に瞠目する。確かに振り下ろしていた筈だ。握り締めた短剣は確かにガルナの首へと、彼女達ではどうしようも出来ない場所まで迫っていた筈だ。


だというのに。


――――――その腕はどこへ行った?


鮮やかな断面を覗かせる右腕を凝視していたネヴの顔が横から何者かの足によって蹴られ、その常人ならざる脚力に蹴り飛ばされた彼は何度も地面をバウンドした後に、自身が破壊した街の瓦礫の中に突っ込んでいく。


遠くではクレアという英雄から呪術を分け与えられた女を殺すために仕向けた異形の腕が闇に飲み込まれ、崩れていく音が聞こえ。


一秒後。


――――――ネヴが激突した瓦礫の山が泥に飲み込まれ消失し、その泥を突き破って現れたネヴがもう一度ガルナ達へと迫るが、―――もう遅い。


契約の完了したガルナ達を中心として発生した一瞬の煌めき、ネヴの視界を焼き、星々の輝きが失われし空に再び灯る星の灯火、それは紛れもない、アマテラスとガルナが契約に成功し、再び信仰都市の厄災を祓ったことに他ならない。


だが。だが、それがどうした。空間を渡るのならばまた妨害し、その場に居る誰かを殺し、たどり着いた先で待っていれば無防備な状態で空間から現れる瞬間、そこを狙って攻撃すれば回避する手段はない。


「―――させねぇよ、もうてめぇに仲間は傷付けさせない」


それを真正面から打ち破る男こそ、この一分間の死闘の果てに勝利する筈だったネヴを敗者へと変えた者。


覆らぬ悲劇の未来を変え、その目に宿る闘志とその身に宿す神の祝福たる神器を持って運命を切り開く者。


『神の奴隷が、ここまで来て邪魔をするか...。――――――アカツキィ!!』


だが、彼は正真正銘アカツキ本人だったとしても、彼の中にはあの男がいる。


その男の纏う魔力とは似て非なる力と、その力の源流と思われる肩に刻まれた謎の紋様、時間を止めるなどという奇跡を為した魔法ではない何か。


これらが結び付き、至る答えは。


『――――――最後の英雄』


「...ネヴ・スルミル」


終末の光を取り込み、神へと至ったネヴが初めて感情らしい感情を見せてその名前を呼ぶ。自身と全く同じ名前を持ち、最後の英雄として、最初の司祭として信仰都市に繁栄をもたらした者の名を。


『どこまで貴様らは...───英雄共は私の願いを踏みにじれば気が済むのだ!』


初代英雄によりその身を異空間へ封じられた時から、英雄と呼ばれる存在とセレーノスの間に(えにし)、ある種の運命と呼ばれるものが結ばれ、こうして最後の英雄により目論見を阻まれている。


そもそも、その英雄と呼ばれる存在は腹立たしいことこの上なく、世界から与えられた自分のものではない力をさも当然のように扱う。その在り方にどれだけの嫌悪感を抱いてきたか。


『与えられ、恵まれた存在である貴様らには分からないだろう』


セレーノスのどす黒い嫌悪感と悪意がネヴの内側から溢れ、対峙する英雄『ネヴ』にその感情の全てを向ける。


「恵まれず、与えられなかった人間の事を考えたことはあるか。何の苦労もせずに強さを手にいれ、やれ英雄だ、祭司様などと持て囃され、気分が良かっただろう」


「それは...『ネヴ』に対してか。いいや、与えられたって言うなら俺も当てはまるか」


「あぁ、そうとも。貴様もだ、アカツキ。神器はどうだ?神の祝福をその身に受け、優越感に浸っているか?何でも出来るなどと馬鹿げた万能感を愚かにも味わっているか?どうせ、そのどちらもだろう」


アカツキにはこの目の前に居るネヴの体を借りて言葉を交わしている男の事は異界の王、または異界の神とも言える存在であるということしか聞いていない。


彼の出自、経歴についてはスルミル家の知識を継いできた『ネヴ』であっても知ることは出来ず、彼がどのようにして王や神などと呼ばれるに至ったか知ることは出来ない。


だが、彼にどんな理由があったとしてもこれだけは言っておかなければならない。


「俺は確かに、最初はそういうことに浸って、自分は選ばれた存在だとか思ってたよ。だけどな、こいつは、『ネヴ』だけは違う。常に自分のことなんか後回し、自分は選ばれたとか優れてるとか思うことも無く、誰よりも()()()()()()()


アカツキはその言葉を否定はしない。この男の言う優越感や万能感に浸り、過ちを犯してしまったことがある以上、今は違うと言ってもかつてはそうだったのだから。


だが、『ネヴ』はそんなことを思わなかった。降りかかる災厄の中で日々、多くの人間が生き延びることを考えた。自身の幸福なんて後回し、最優先は自分以外の命なのだと。


それは決して自分以外の人間を卑下している訳ではない。力を持たない持っているに限らず、『ネヴ』は自分の知っている人間達の為に戦い、より多くの人間が生き延びる方法を選んでいた。


「だから、お前は敵わないと思った。それと同時に憧れても居た筈だ」


「今更ネヴを懐柔しようとしても無駄だ。この体は既に神と呼ばれる次元にまで達し、あの男の意志を曲げることは不可能だ」


「俺が戦うのは地獄の主、たった一人の友の為に全てと戦う事を選んだ男だ。お前じゃねぇだろ、分かったらさっさとその体から出ていけ」


アカツキの纏う魔力とはまた別の力、かといってそれは呪力でもなく。ただ、未来を照らすような眩き力であった。


「その光は、貴様――――――っ!!」


仲間には祝福を、敵には呪いを授けるまさにこの都市の英雄、───その中でも原点である初代英雄のみが扱える力、それを手にいれたアカツキが一気に力を解放させると同時に光が辺りを満たした。


『...英雄ネヴ・スルミル、ここまでとはな』


アカツキは確かに女神より神器を賜り、常人とは並外れた力を行使することが出来る。しかし、今ベルメリヨン・セレーノスをネヴの内側から強制的に排除しようとしている光は彼のものではなく、彼と同化している英雄『ネヴ』の力だ。


『君は人間を侮り過ぎだ。もっと警戒しておくべきだったね』


『何、ここから居なくなるに過ぎない。本体の居る観測側の世界へ向かえば今度こそ干渉は出来ないが、それもネヴが生きている間だ。この戦いでどちらが勝とうと、私にとっては同じだ。ネヴが勝てば信仰都市は滅び、貴様らが勝てばネヴの死と供に私は世界へ現れる』


結果は覆らない。予想外の抗いを見せたがそれは過程の話であって、終わりには何ら関与の無い───些末な出来事だ。


『次は油断も手加減もせん。お前の言うとおり、私は自分と自分の興味のない人間の強さを過小評価していた。こればかりは私の間違いと言わざるを得ない』


二度目の敗北は異界の王に屈辱と供に一つの教訓を与えた。


『...随分と素直に受け止めるじゃないか、さっきまでの威勢はどうしたんだい?』


『あぁ、今までの人生で私が認めた人間以外がこうも輝くものだとは知らなかったのだ。どいつもこいつも与えられた祝福にかまけて、望みなど持たず、当たり前のように媚びへつらう。見ていて見苦しかったよ、私の世界は。しかし、この世界の人間は違うと今学んだ。───これは、正当な評価だ』


『......君の世界、ね』


こことは違う、彼が一度は帰ることを望んだ違う道を歩んだ世界の話。そこで彼が何を思ってきたか、その一部がハデスに語られる。


『私の認めた人間以外は取るに足らない、それが私が生きてきた世界での常だった。その当たり前をこの世界に持ち込んだことが失敗だったな』


一度ならず二度までも英雄に遅れを取り、自分の望んだ通りに物事が進むと思っていた傲慢も今この時を持って打ち砕かれた。


『憎たらしい光だ、こうも輝いては何も見えんな』


光に飲み込まれつつある体を見て、セレーノスは拳を一度強く握り締め、ここではない観測側の世界へ干渉を始める。


『今度こそお別れだ。もう一度言おう――――――ネヴ、深淵よりお前を見ているぞ。常に私はお前の行く先を観測し、お前の終わりと供に私はこの身に科した束縛を解こう。そして、この世界に終焉を届けようではないか』


光が侵食していた体を内側から溢れた闇が喰らい尽くし、ハデスの前でセレーノスは闇に飲み込まれ、世界から精神と肉体、共に消失する。


その場で一人残されたハデスはセレーノスの消失を見届け、力が抜けたように座り込んだ。ネヴ・スルミルの精神世界、今は何もない一面漆黒に包み込まれた世界で寝そべり、大きく息を吐く。


『終焉なんて訪れないさ。確かに目前まで迫るだろうけど、君達なら先の見えない暗黒の未来を希望に満ち溢れた未来に変えてくれると信じて』


瞳を閉じる。思えば、魂だけとはいえ覚醒状態をここまで維持するのはちっぽけな神核では相当に堪える。だから、今は。


『少し...だけ。休もう』


あの男の残滓が一人でネヴの精神世界に留まっていれば、何が起こるかは分からないが、少なからず現実世界でのネヴによからぬ影響を与えていただろう。


その証拠として、ネヴの体を借りてセレーノスが現実世界へと浮上し、ネヴの魂をわざと半覚醒状態にさせていた。


目は覚めているが、自分の意思が虚ろで他人の意思の介入を受ける状態にさせることで、ネヴが何も考えることの無いようにしたかったのだろう。


無駄なことを考え、無意味なことをしないよう魂を縛っていたかった。


何とも独占欲の強い男だ。だが、そんな彼がここから消えたとなればもう彼を縛る鎖は存在しない。


『ありがとう、アカツキ』


もう、ネヴは引き返せないところまで来てしまった。過去数百年、多くの犠牲を出した大悪人、そんな彼を許してくれとは言わない。


だが。


ネヴ・スルミルという一人の人間に向き合ってくれたことに、今は感謝を。そして願わくば。


『......ネヴを、殺してくれ』

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