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遥か彼方の浮遊都市  作者: 神羅
【農業都市】
13/185

<犠牲と知識>

....。


「起きろ、尋問の時間だ」


.....。


「何が目的だ」


......。


「答えないかぎり何度でも、続くぞ」


.......。


「アズーリの目的を教えろ」


........。


「どうだね?」

「ヴァレク様!!それが...。なかなか喋らないもので...」

「特に問題はないさ。もうアズーリは屋敷に引きこもってるみたいだし、後は箱を手中に収めれば僕はこんなちっぽけな都市を変えられるのだからっさ」


..........................................................................................................................................................................................................................................................................................................................................................................................................................................


「まだ吐かないのか、随分と粘るな」


...........


「知能低下の呪いか。これでは尋問なんてする意味がないだろうに」


『キャンセル』


.....あ。

あああ。いいい。うううう。えええええ。おおおおおおお。


「喋ったーーーーーー!!?」

「煩い奴だ」


マジで自分がおかしくなったのかと思った...。

何かを答えようとしても、すぐに頭から出てくんだから、たまったもんじゃない。


「何日経った?俺的には無限の時を過ごした気分だけど」

「まだ一日だ。二日だったら無限の更に上の無限を味わっていたな」

「何を中二臭い事を言ってるんだ?若干引くわー」

「勝手にしろ」

「でも一応感謝するよ。ありがと、まじで何も考えないってのはキツイ」


だけどまだ一日しか経っていないのか。

なら逆転の可能性は十分にあるわけだ。


「ここから逃げるのはまず不可能だ」

「そうかい。なら別の方法で行くから」

「どこに」

「箱の奪取」


男はその言葉を聞き、突然笑いだす。

一通り笑い終わると...


「大分深くまで知っているな」

「あんたも知ってるだろ」

「ただのガキから昇格だな」

「なら、昇格祝いに枷を外してくれないかな?」

「無理だ。そこまでしてやる義理はない」

「そりゃそうか」


でも考える事が出来るのは状況を打破できるかもしれないな。

尋問中に二人ぐらいなら素手でいけるか?


「尋問は仮だ。お前は邪魔だからここで一生過ごせ」

「嫌だね、俺飽き性だから尋問にも飽きて、逃げ出すかもよ」

「そしたら殺されるだろうな」

「戦いに死ねるなら本望!!てな」

「.....」


男は何も言わずに立ち去り、それと入れ替わりに尋問官が来て、アカツキはばれない様に壊れているふりをする。

尋問が始まった。


# ######

【アズーリの屋敷】


「アカツキが拐われたのか」

「うん...」

「四人組の男女か」

「うん...」

「なんであんたが残った?こんな事を言うのもあれだが、あんたが人質の方が良かっただろうに」

「うん...」


アズーリはベッドの中で、ただ空返事を続ける。


「党首、どうやらショックが大きいみたいです」

「聞いてりゃ分かる、だけどなアズーリ」

「うん...」

「俺らは何のためこんな事をしたんだ?あんたはどうして実の兄を殺そうとした」

「うん...」

「たしかにアカツキと刃が奪われたのは大きな打撃だ。だけどそんなんで諦めるのか?好きな奴は守れなかった。なら仲間ぐらい助けてやれ」

「う...ん」

「あんたは家を追い出されても一人でここまでのしあがった。それなのにたったこれだけの事で諦めるのか?あんたらしくもない。もう少し頑張れよ、アカツキはまだ死んじゃいねえんだろ?なら助けるチャンスも投げ捨てて見捨てるのか?」

「ちが...う」

「そうだな、じゃあどうする」

「作戦を考える。二時間だ。二時間後に作戦を伝える、アカツキを取り戻す」

「そうか、頼んだぞアズーリ様」


グラフォルは満足したように頷いて、仲間を引き連れ部屋を出る。


「あんたがアカツキに抱くのは何の感情だろうな。そこまでアカツキこだわるのは、作戦の為だけじゃないよな。アカツキが聞いたらどうなるかね」


少しグラフォルは笑う。

誰にもバレないように、まるで悪巧みを考えている子供の様に....


「党首、またヴァレクに動きが」


そこに一人の青年が駆け寄って来る。

よほど急いで来たのか、青年は息を切らしていた。


「どうした」

「ヴァレクが術式を完成させ、箱を一生自分のものにしようと...」


しかし青年が喋り終える前にグラフォルは剣を突き立てる。


「随分詳しいところまで知ってるな?俺はアズーリ様以外に話してないし、お前の顔も知らない」

「な...何を言ってるのですか?これだけ人が居れば...」

「俺は百十二人全員の顔を覚えてるんだけどな、お前みたいな奴を知らないぞ」

「.....さすっがすね!!だけど...!!?」


青年は武器を取るのではなく、服を脱ぎ、体につけられた自爆装置らしき物を見せつける...

が、グラフォルによって即座に凍らされ、何の躊躇もなく、青年の右足と右手を切り落とされる。


「う...ああああ?ああああああ!!!?あ...ぁ...ぁ」


あまりの痛さに青年は気を失い血が周りを満たしていく。


「汚え...」

「党首、どうしたんですか!?」


後ろから今度は仲間が向かってくる。


「敵に潜入された。門の前の護衛を増やして、他にも屋敷中を散策、抜け道があるかもしれん」

「了解しました!!この者は?」

「俺がやったんだ。後始末もちゃんとする。じゃあお前ら、頼んだぞ」

「はい!!」


なぜヴァレクの奴はこんな事を?

嘘か、それとも何かを伝えようとしてるのか?


そこでグラフォルは気づく。

死にかけている青年の胸ポケットに紙が入っていることに...

中身はこうだった。


【背景 病弱な元跡取りのアズーリ様】

『最近は寒く、体調も優れないようですが、聞くだけでも滑稽です。あれほどちやほやされたのに、今では僕よりも格下、さぞかし無念でしょう。アカツキという少年、またお前の大事なものを奪えると思うと笑いが込み上げてきて、夜も眠れません。さて、箱もすでに半分ほど手中にでき、お前の計画も失敗しました。ここで提案があります。アカツキと箱、どちらかを助けたいですか?きっと...』


グラフォルは途中で紙をぐしゃぐしゃにして燃やす。


「....。アズーリには見せらんねえな」


そのあとグラフォルは青年を凍らせ運びだす。

外にでると何人かの仲間が見回りをしており、警備は万全だ。


「お前ら、一旦屋敷で休憩していいぞ。外は俺が少しの間見回るから」

「しかし....」

「アズーリに茶菓子でも出してやってくれ」

「分かりました、では」


無理やり仲間を遠ざけ、グラフォルは青年を引きずりながら屋敷の裏に行く。


「....起きろ」


グラフォルは青年を近くの木に縛り付け、気つけの丸薬を大量に飲ませる。


「ぶ...!!ば...!!?」

「傷は氷で一時的に止まらせてる。まあ十分が良いところだな、その間にちょっと聞きたい事がある」

「ご...拷問なら...。答え...ない」

「....忠誠心ってやつか」

「わ...わた...しは。あの方の...右....腕だ。こんな....とこ...で...し....ない」

「そういえば見たことあったな、たしかうちの仲間を何人も殺してきた、首狩り『マルギス』だったか」

「は...ははは」

「だけどあんまり強そうに思えなかったな」

「ば....ばば..けも...のめ」


グラフォルはジュドーの髪を掴み、また別の丸薬を無理やり飲ませる。


「その薬はな、真実の果実っていう希少な木の実で作られてるんだ。もうわかるよな?」

「あ...ああ....ああああああああ!!」

「忍び込んで、一人で潰そうと思ってただろ。なんて傲慢なんだろうな、じゃあプライドをへし折らせてもらう。さぞかし苦しいだろ、終わったらすぐ殺してやるよ」


グラフォルの青年を見る目はもう人間を見るようではなく、ゴミを見るようなもの凄い冷たい目だった。

更に当たりに白い霧が発生しはじめる。


「今まで殺してきた奴らと一緒にな」

「ひ...ひい...」


霧の中から影が出現する。

グラフォルにはただの影にしか見えないが、青年からは...


「父さん....?え?え...?そんな....?ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」


今まで殺してきた罪を償わせる特殊な魔法。グラフォルが唯一極めた魔法だ。


「俺は償いの霧って呼んでる。これはアズーリの考えた魔法の逆の術式で作ったんだ。趣味が悪いけど、俺には丁度いい魔法なんだ。罪人同士、話をしようか」


近くの切り株に腰を下ろし、グラフォルは横を見る。


「ニナ、また会ったな」


そこにはグラフォルにしか見えない女性が座っている。


「そうね。また会ってしまった...」

「アルフは元気か」

「ええ。屋敷で元気にしてたわ。アカツキ君って子が面倒見が良くて安心した」


グラフォルは一瞬戸惑いを見せるが首を傾げたニナを見て、何事もなかったように振る舞う。

アカツキが自分の子供と会っていて、しかも生きているのが分かった。

安堵もあったが、アカツキを助けないといけないという焦燥感も生まれる。


「なら良いんだ」

「あなた、いつまで背負い続けるの?アルフはもう前を向いて生きてるのに、親なんだから見本にならないといけないのよ」

「死ぬまで背負い続けるさ、ただ最後にやらなくちゃいけない事が出来たんだ。だからもう少し待っててくれ」

「ええ、私も友達が出来たのよ?いつまでも待ってるから....。まだ死んじゃ駄目よ」

「言ったろ、最後だ。これでやっと終われるんだ」

「....勝手にしなさい」

「ああ、勝手にさせてもらうよ」


グラフォルはジュドーに近づき、問いかける。


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」


ジュドーは何人もの影に囲まれて、永遠に誤り続けている。


「そろそろ効き目が出るはずだな」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい...。ヴァレクヴァレクヴァレクヴァレクヴァレクヴァレクヴァレクヴァレクヴァレクヴァレクヴァレクヴァレクヴァレクヴァレクヴァレクヴァレクヴァレクヴァレクヴァレクヴァレク」


「やっぱり相性がいいな」


グラフォルが飲ませた丸薬の効果は抵抗して時間を長引かせる事は出来る。

だがグラフォルの魔法は精神に大きなダメージを負わせる事ができ、もう抵抗もできないくらいずたぼろに心を傷つける。

それゆえに効き目も早く出やすい。


「ヴァレク二十九歳。私の主で農業都市No.1の男。箱の少女クレアの為に....にににに」

「抵抗出来るのか?流石だな」

「依存依存依存依存のままままほ...ううううう」

「聞き取りづらいが、仕方ないか」

「あか...あか...あああかっっ?アカツキ....し...死刑おおおおを?あ...すうう...けこ...こお...決行」

「...え?」


驚きを示すのは、グラフォルではなくニナの方だった。

先ほどまで、ただ見ていたニナはグラフォルに歩み寄る。


「ねえ!!何で?なんでアカツキ君なの!!」

「ニナ....落ち着...」

「アルフはどうするの!!?またあの子の泣く姿を見るのは私なのよ!!見るだけなのが、どれだけ辛いかあなたに..」


そこでニナは気づく。


「あなたが?」

「ああ」

「どうするのよ!!何でアカツキ君...が」


ニナはその場で座り込む。


「....ニナ、すまない」


グラフォルはニナの反応を聞く前に魔法を解除する。

丸薬を取りだしマルギスに近寄る。

そして全てを吐かせる。

ジュドーは泣きながらも話さねばならない。

それを聞くグラフォルは動じずに話を聞き続ける。


「もう...やだぁ」


合間に漏らすマルギスの本音もグラフォルには届かない。

三十分以上続いた尋問...いや拷問は終わる。


「マルギス、長い間ご苦労様。そろそろ終わりだ」

「.............」

「もう話す気はないか」

「.............」


すでに氷は溶けてマルギスの体からは大量の血が失われている。

それでも生き延びれたのはマルギス自身の強さである。

しかしその粘り強さが今回は凶にでた。彼の知っている全ての情報を吐かせられたのだから。


「首狩りマルギスの最後は首切りで終わらせてやるよ」

「.............」

「バカが」


グラフォルは躊躇いなく首を切り落とす。

首はすぐに燃やされ、体も多少時間が掛かったがグラフォルによって跡形もなく燃やされる。


「待ってろよ、アカツキ」

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