本日は陸奥屋日和
今回は陸奥屋一乃組のメンバー紹介です。
みなさん今日は。
あるいはおはようございます。
または今晩は。
陸奥屋一乃組、剣士のユキです。
今日は年末にむけて、私たち陸奥屋一乃組のメンバーを、あれこれとご紹介したいと思います。
なにしろ当作、ドグラの国のマグラの森も、登場人物が数多になってきましたので、一度整理が必要かと思いまして………。
いえ、決して「そろそろメンバーの整理をしておいた方がよろしいのでは?」とか、ツッコミが入った訳じゃありませんよ? 本当ですよ?
という訳で、コホン。
改めまして、私が陸奥屋一乃組の剣士。ユキと申します。見た目は中肉中背、取り立ててロリ体型とかグラマラスとかは無く、むしろ地味とか言われたりしますが………。それでも陸奥屋一乃組では斬り込み隊長! 目一杯敵チームに嫌がらせをしています!
現在のところは迷走戦隊マヨウンジャーに、戦闘指南をしてまして、マミヤさんにステッキ術の手解きをさせてもらってます。
………それにしてもこのゲーム、キャラクターデザインは眉目秀麗なはずなのに、なんでこんなに地味な見てくれになったんでしょう?
「よう、ユキちゃん。研ぎ物なんかあるかい? あるんだったら今のうちだよ!」
巨漢の力持ち、おまけに武器制作スキルの高い、ドワーフのダイスケさんが入ってきました。
こちらのダイスケさん、得意な戦法は肉弾戦。あまり魔法には頼らないタイプ。自作の戦斧………柄の長いアレね? 戦斧を振り回して、バッタバッタと敵をなぎ倒す。まさに人間戦車の頼もしい戦士です!
「ありがとうございます、ダイスケさん。でも前回の研ぎから、マヨウンジャーの稽古ばかりだったから、次のバトルまで大丈夫ですよ」
「個人で探索とかバトルとか、出てないのかい?」
「ん~~………無駄に争うのは、あまり得意じゃなくて………」
「そんなに真面目に考えることは無いさ。ゲームの中なんだから、思い切り技を振るうのも楽しみのひとつだよ?」
「ありがとうございます、今度個人参加で遊んで来ますね」
ダイスケさんは人に気づかいのできる人。私から見たら大人の男性です。私とそんなに歳は離れてないのに、これはすごいことだと思います。
「ユキさん、薬草が少なくなってきたんだけど………」
「え? もうですか? この前父さ………ジャックさんが採取に行ったと思ったんだけど………」
ん~~………と言って、フィー先生はしぶい顔。
小柄で童顔で、キラキラ輝く長い銀髪。私たちの魔法医師、ニンフというかエルフのフィー先生。
フィー先生もまた、見た目は子供だけど気づかいのできる女性。
だけど、だから、こんな時には言葉を選んでくれる人。
「実はね、ユキさん。ジャックさんってば薬草探索に出掛けて、オークを狩りまくってたのね」
「………う、ありそう。すみません、フィー先生。ウチの父………じゃなくて、ウチのジャックさんが」
と言ったらフィー先生、クスクス笑い出す。
「ユキさんがウチのジャックさんなんて言ったら、私にとっても『ウチのジャックさん』なんだけどなぁ」
「あ………」
これはウッカリ。
っていうか、そんな細かいところをひろって、私のいたたまれなさを慰めてくれる。そんなところがフィー先生。気づかいのできる、素敵で可愛らしい女性です。
結局薬草は、マヨウンジャーのみなさんに依頼。どうにか薬草不足は解消できそう。
そして三番目に拠点へ表れたのが、兄………もとい、魔法使いのシャドウ。
「ユキ、ゲーム世界で実生活の話は御法度だぞ?」
「う、わかってるよ」
「そもそもお前は緊張感が足りないんだ。来い、稽古をつけてやる」
「でもシャドウ兄ぃ、魔法の杖って打撃戦に使えるの?」
「………………………………」
シャドウ、少し考える。
その思案が導き出した答えというのが………。
「為せばなる」
「うん、あのね。そのやってみなくちゃ分からない的な発言は、思考の果てに到達するものだからさ。考え無しの時に使用すると、ヒドイ目に逢うこと確定だよ?」
「為してならぬなら、なるまで為す」
「それでもならなかったら?」
「反省する」
「うん、反省するまえに熟慮する必要があると、私は思うなぁ………」
おかしいな、シャドウという人は普段ならこんな、『脳みそまで筋肉でできている』的な発言はしないんだけど。
これはシャドウ、ゲーム世界を楽しんで浮かれてる、ってことなのかな?
まあそんなわけで、道場で向かい合ってみるんだけど、やっぱり杖の飾りがすごく邪魔そう。
仕方ない、ここは私が気を使ってあげるか………。
「………シャドウさん? 私やっぱり、剣と剣の稽古がいいなぁ………」
「む、やはりそうか?」
よかった、どうやら魔法の杖で殴り合うのは、とどまってくれるようだ。
そして木剣で向かい合うと、お互いに含み気合という無言の気合で威圧し合う。
リアル我が家には古伝の剣術が伝わっていて、私と兄は父から教わっている。
その流派が「ヤア、トウ!」という声をいっさい発しない、含み気合というのを使う流派なんです。まあ、私もあまり大きな声を出すのは得意じゃないので、自分には合ってるかな、なんて思ってるんだけど。
そんな立合いに、近づいてくる気配がひとつ。
普段はちゃらんとしてたり、ぽらんとしているんだけど、剣にだけは厳しいジャックさんの気配だ。
私とシャドウさん、お互いに「さあ、いくぞ」とか、「ならば間合いを外しちゃうよ」なんてにらみ合いを続けていると、後頭部にポカリ。
「あたっ!」
「ユキ、背後が隙だらけだぞ?」
「そんなぁ………」
「シャドウごときに、そんなに熱心になってどうする? あの程度は軽くあしらえ、軽く………」
言い終わらないうちに、シャドウが撃ち込んでくる。もちろんジャックさんをねらって!
でもジャックさん、シャドウの一撃を受けるで無し。体を入れ換えるだけで背後に回って、ここでもポカリ。おまけに小手をひねって、柔の手で投げ飛ばす。
「な?」
「な? じゃなくて、そんな真似ジャックさんじゃないと、できないよ」
「いやいや、この程度ならできる人間は案外いるものだぞ?」
人の気配?
それも、背後からっ!
振り向こうとした時には、遅かった。
「う~~ん、やっぱりユッキーのバストは質感があるなぁ………」
「うひゃあっ! に、忍者さん! どこ触ってるんですかっ!」
「………どこって………ユッキーのおっぱい?」
「なにか問題でも? って感覚の言葉、やめてくださいっ!」
どうしてウチの忍者さんは、女性同士なのに私のバストに触りたがるのか………。
「それはホラ、私の胸は微かな丘陵地帯にすぎないから」
「ユキちゃん、しっかりふくらんでるもんねぇ………羨ましい」
そんな、フィー先生まで。
「っていうか忍者さん! いまのは私の独白、頭の中で考えていることなんだから! 会話に取り込まないでください!」
この忍者さん、まともに戦えば私もシャドウも子供扱いなのに、どうして術をこんな風にしか使わないのか………。
「それはな、忍者だからさ」
「だから頭の中で考えてることなんだから、会話しないでください!」
さて今日は、何をしましょうか?
「俺は街中で幼女系NPCに十八禁サービスを受けて過ごしたい」
黙れデカブツ。
「私はユッキーの太ももを枕に、惰眠を貪りたい」
そんなことしたら、即座に三角絞めと顔面パンチですよ?
「なぁユキ、俺は帰って酒を飲みたいんだが」
母さんにシメてもらうよ、父さん?
「私は忍者の触診かな? もちろん全裸で」
ブルータス、お前もかっ! お前もまた、百合なのかっ!
っていうかフィー先生。遠慮なくヤッちゃってください。できれば足腰立たなくなるくらい。
「まあ、なんだ………。ユキ、せめて俺たちだけは、まともにプレイしようじゃないか」
「仕方ないね、私たちだけが、陸奥屋一乃組の良心だから………」
あぁ、まともにプレイしていたら、私たちのレベルは10を越えてるはずなのに。
どうしてこうなんだろ?
「それはな、ユッキー。私たちが陸奥屋だからだ!」
「だから考えてることと会話しない!」
私たちは陸奥屋一乃組。
まともに戦えば、上位クラスをも脅かす存在。
………のはず。
メンバーの中には初登場の時から、予告も無しに名前が変わってるキャラもいますが………お察しください………泣。




