私たち、レベル2初戦に挑む
魔力回復ペンダントは、一人三個ずつ。用意した。
そしてデコが「早くレベル2デビューするわよ」と、うるさい。
という訳で、やって来ました闘技場!
「いいかい、みんな。本来なら大勢で集まってゲームをしてるんだから、勝って驕らず負けて腐らずの精神が大切だからね?」
とりあえず、我がギルドでは私が年長者だ。引率の先生にでもなった気分で、メンバーを教え諭す。
「なによマミヤ、あんた最初から負ける気なの?」
「いやいやコリン、そういう意味じゃなくてだね」
「ど、どうしようマスター………。………ボク、なんだか緊張して来ちゃったよ」
「心配するなアキラ、まずは足を使ってリズムを作るんだ」
「そうだぞ、アキラ。私たちにはマスターがついている。なにも心配はいらない」
「あの、ベルキラ? 何を根拠にそんなこと言ってくれてんのさ?」
「ふっふっふっ、演習中に受けた心の傷。何倍にもして敵にぶつけてやるんだから」
「ホロホロ、その件に関してはノー・コメントを貫かせていただきたい」
そんな闘志と緊張入り雑じる中、いざ受付へ。
「レベル2デビュー戦は、勝率三割四割って言われてるから、負けても腐っちゃダメよ?」
リンダも私と同じアドバイス。
しかしみんな、リンダの時は素直に言うこと聞くんだな。いくら大人でも、マミヤさん拗ねちゃうぞ。
まあそのような暇もなく、控え室で対戦相手の情報を読み解く。
ドワーフ二人に人間ひとり。残り三人はニンフというかエルフ。
「ドワーフ二人を壁にして、妖精の一人はヒーラーね?」
「うん、残り二人の妖精は魔法使い。魔法がボカボカ飛んで来そうね」
珍しく、デコがホロホロと戦力分析をしている。
「広域魔法で一気に来るかしら?」
「定石ならね。でもこの対戦相手、戦績が一勝二敗。この好戦的なメンバー構成にしては、キルも少ないかも」
ということは?
「うーん………こんなこと言いたくないけど、本日レベル2デビューしたての、比較的弱いチーム?」
「油断大敵よ、ホロホロ」
「だとしたらコリン、ボクがチョロチョロして、相手を誘おうか?」
敵がどれほどのものかわからない。アキラの陽動が得策なのだと、私にも理解できた。可能ならば相手に魔法を撃たせて、それをかわしたいところだ。
「オーケイ、アキラは足を使って敵の目標を分散させて。私も極力足を使うから。マスターとコリンはベルキラとともに本隊になって、モモちゃんはしばらく回復役に徹してちょうだい」
という訳で、レベル2デビュー戦。戦闘開始である。
右へアキラ、左へホロホロが走り出す。私たちもベルキラに続いて正面へ。
敵陣営から、魔法が発射された。しかしアキラとホロホロはすでに進路を変えて、ドワーフ二人に向かっていた。
魔法が着弾。割りと広い範囲に細かく鋭いツララが生えて来たが、アキラとホロホロは難を逃れたようだ。
そのホロホロが足を止めてドワーフを射る。私も火の玉二連発を、同じドワーフへ。
そしてドワーフの陰に隠れていた人間に、アキラの速攻が入る。
いい立ち上がりだ。
いつもの私たちが取る、各個撃破を戦法が通じている。
槍と斧の攻撃を連打で浴びせて、まずは1キル獲得。
よし、二人目のドワーフだ!
が、「散開っ!」というホロホロの声。みんな四方に逃げてゆく。私も急いだ。
すると私たちのいた場所に、ツララ魔法が立ち上った。
間一髪である。
「さあ、練習の成果を見せるよ、ベルキラ!」
「さあ来い、ホロホロ!」
なんだ? 仲良し二人が、何かする気だが………。
「合体魔法っ! まずはサンドっ!」
「そして風魔法っ、一迅っ!」
ベルキラの目潰し魔法の砂を、ホロホロの風魔法が加速させて………。
バチィン! と凄い音がした。被害者は、弓矢と火の玉を受けた、二人目のドワーフだ。体力が激減している。
そんなところに仲良し二人が飛びかかって、二つ目のキルを獲得。
つーかチミたち。いつの間にそんな合体魔法なんて身につけたのさ?
のちにホロホロが語ったところによると、「マスターが調べ物したり、フリーの時間を使ってだよ」とのこと。
さらにデコが、「私たちも合体魔法よ!」とか言い出した。アキラが足止めしていた、人間相手にだ。
しかしまたもや、「散開」の指示。なんともはや私が言うことではないが、魔法というのは実に厄介な存在である。
その魔法使いに、ホロホロの弓矢。私も接近して火の玉を放つが、こちらはミスショット。
しかし丁寧に連係を維持したためか、意外なほどの成績でデビュー戦を飾ることができた。
なんと驚くべきことに、たぬきの力も魔力回復ペンダントも使わないで、の勝利であった。
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