番外編の続き
はい、続いてしまいました。
「ユカりん参上~~っ! ………ねぇねぇシロたん。どうしてキィちゃんの首、ボキ折れてるの?」
「あらちょうど良かった、紫雲。たった今、魔法の研究でカカシさんがボキ折れちゃったから、回復魔法をかけてくれないかしら?」
「いや、シロたん? だからキィちゃんのくび………」
「紫雲? お・ね・が・い♪」
「………シロたんって、時々逆らえないくらい怖いことがあるよねぇ」
まずはカカシさん復活。
あまりにも紫雲が気にするから、ついでに春雷の首も復活。
そして紫雲が見ていなかった、ツララ二本攻撃についても、口頭で説明。
紫雲ってば、口を丸く開いて「おぉ~~………」なんて、すごくビックリした様子。
「ところがふたりとも、これからが研究の本番なの」
「え? カカシさんを激殺しただけじゃ、シロたんの気が済んでないの?」
………紫雲、あなた故意に私のイメージを悪く受け取ってない?
「さらなる研究か………これじゃますますシロに、セクハラしにくくなるなぁ………」
セクハラはよしなさい、セクハラは。というかセクハラだったの、あれ? てっきり私は女の子同士のコミュニケーションが、ちょっぴり過剰になっただけだと思ってたのに!
「ふふふ、どうだいユカりん。僕のシロはこんな単純な冗談にも、簡単に引っ掛かるほど心がピュアなんだよ?」
ウソだった?
っていうかそれって、私のことマンマ馬鹿扱いじゃないっ!
よし、紫雲。貴女放課後に体育館裏ね。
間違っても、体育用具室じゃないわよ!
「で、シロたん。次の極悪な必殺技って、どんなの?」
紫雲、貴女も放課後に体育館裏ね
「まあ、見ていて頂戴」
まずは動作入力で四本のツララを生み出して、三〇秒間頭上待機。魔力の回復を待つ。
魔力が回復する直前、頭上のツララを発射! すぐに詠唱呪文でツララを一本用意。これも発射する。
ツララを四本まとめて発射すると、魔力が回復するまでに三〇秒かかるけど、一本ならば八秒もかからない。
そこで全回復したところで、四本まとめて発射。ほんの十五秒ほどの時間で、九本のツララを発射したことになる。
「………すごぉい」
「………魔法の連続発射か………これは考えたね」
「だけど最初にツララを生んで、三〇秒も待機してるのよね。どうにかならないかと思って」
ピコン♪
そんな音が聴こえたけど、なんの音?
って春雷、なぜ貴女はネコのような眼差しで、私を見てるのかしら?
なぜ貴女はネコ耳を頭の上に乗せて、ネコ尻尾をピンと立ててるのかしら?
貴女は獣人じゃなくて、妖精の種族だったわよね?
だからその、ロクでもないこと思いついたような眼差し、やめなさいってば!
「シロ、僕は思いついたんだけど」
「却下」
「でもこのヒラメキは、みんなにも検証してもらわないといけない、って思うんだ」
「だから却下よ却下」
本当に、この目は絶対に悪いことを思いついた目よ。春雷の野望は、絶対に阻止しなくちゃ。
「って、メール送っちゃったの? メンバー全員にっ? ちょっとそれ早業すぎない?」
ということで、カラフルワンダー総員集合。私は春雷と並んで、いま全員からの視線を集めております。
「さてみんな、わざわざ忙しいところを集まってもらって、本当にありがとう」
「なんだよ春雷、俺は探索の最中だったんだぞ?」
「氷結が新技を開発したというので駆けつけたのだが、春雷。偽りあるまいな?」
「若干のウソは混ざってるけど、新技を開発したのはホント。ウソの部分っていうのは、これから披露する技が初公開ってところかな?」
あ、博士こと緑柳おじいちゃんの目が、ギラリと輝いちゃった。
こりゃ失敗できないわよ………。
「それで春雷。氷結さんはどんな技を見せてくれるんですか?」
「それはね、斬岩。レベル9相当のツララを放つ技さ」
あ、みんなギョッとしてる。
そりゃそうよね。私たちはまだ、レベル4。それが倍以上のクラス同様って言ったら、誰でも驚くでしょ?
「それでは僕のシロがお目にかけます、必殺ツララ地獄ボテクリこかし編! 踊り子さん、はりきって行ってみましょう! さあさあみなさま、拍手、拍手をおねがいいたします!」
クッ………いっそ私を、誰か殺して!
とはいえ私は魔道の探求者。
これで私たちの魔法が、より高みに上がるならば!
まずは呪文詠唱でツララを呼び出す。そして三〇秒の空白を埋めるために………。
「………氷結が………」
「踊っている?」
まずはステップ。それからターン! そしてすべてを包み隠す、最高のスマイル!
「なに考えてやがんだ、氷結の奴? もしかして、とうとう………」
「爆炎が悪いんですよ。普段から氷結さんに苦労ばかりかけるから。可愛そうに氷結さん、とうとう………」
ちょっと待って! 私べつに、おかしくなってないから!
「いけいけシロたん! 今すっごく輝いてるよ! かなり無理してるって顔なんか、ユカりんのハート鷲掴みだよぉ!」
私は氷結の魔女私は氷結の魔女私は氷結の魔女私は氷結の魔女。魔道の高みを目指す者。泣いてなんかいないわよ!
「嗚呼、僕のシロ………ハァハァ………」
春雷! 貴女それで今日、何回目のハァハァよっ!
「いや、よく見てみい! 振り付けの中にさりげなく、動作入力を交えておるぞ!」
博士えらいっ! そうよ、この踊りは私がおかしくなった訳じゃなくて、入力動作を悟られないようにする、カモフラージュなの!
わかって、みんな!
その上で、ツララを準備。
たった一本しか撃たなかったから、すぐに四本を用意できたから!
すぐに発射!
………これで短時間のツララ九本発射を、みんなの前で披露できた。
疲れたかな?
うん、やっぱり疲れるよね。
だからみんな、今は私をそっとしておいて。
「なに今の、格好いいじゃん!」
あぁ、うるさいバカ炎が大声を挙げている。
「なあみんな、今度名乗りを上げるときに、これ使おうぜ!」
は? そっち? 私の青春を削り落として編み出した技を、そっち方向に持ってくの?
「爆炎にしては上等な発案だ! 我も蒼の皇帝に相応しい名乗りを、この技術で演出してみようではないか!」
そっち? やっぱりみんなそっちの方向に突っ走っちゃうの?
「いやいやみなさま、それだけではもったいない。この技術は有効利用してナンボ。爺に考えがありまする」
さすが博士! たよりになるぅ!
「この技術を用いて、奇襲攻撃、即壊滅。というのはいかがかな?」
デビルかっ! やっぱり翁も魔道に魂を売った、鬼畜生なのかよっ!
だが私の懸念をよそに、次のバトルで私たちは、歴史的ワンサイドゲームを達成したのだ。
名乗りを上げるふりして、魔法待機。そして魔力を充填したら、即攻撃。
相手チームは何もできず、闘技場の露と消え去った。
やった! 記録に残るような大勝だわ! このよろこび、誰かに伝えたい!
ブリーフィングルームを出た私たちを、受付のリンダさんが迎えてくれた。
「こらーーっ、カラフルワンダー! レベル2を相手に、あんな闘い方しちゃ、駄目でしょーーっ!」
うえぇ!? お、怒られたっ?
「このゲームは低級者にも優しいってのがウリなんだから、あんな血も涙も無い闘い方しちゃダメっ!」
とりあえず私たちは、
闘技場のロビーで正座。
ひとしきりリンダさんのお説教を聴く羽目に陥る。
だけど私からすれば、何故リンダさんがこれほどまで怒るのか、まったく理解ができない。
文字通り、解せぬ、という気分だった。
でもね、私だってヘコむことはあるんですよ?
卑怯上等、カラフルワンダー!
不意打ちこそジャスティスのゲスギルド!
そんなスレッドが、晒し掲示板に立ちまくったのだから。
しかも何気に、やたらとレスが伸びてるし。
でもね。
我等は魔道を追及する者。我等は魔道繚乱カラフルワンダーなのよ!
たとえ悪のそしりを受けようと、自分たちの信ずる方向に突き進むわ!
………ホント、くじけたりなんか、しないんだから………クスン。
きっとまた現れる魔道繚乱カラフルワンダーの暴走と、シャルローネさんの苦労に御期待ください。




