表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/506

私、あらためて認識する


 さて、いよいよ森の入り口ステージ最後のモンスターだ。

 アキラの尻尾が水平に伸びて、ピリピリと小刻みに震えている。

「今度は大物ですよ」

 と宣言までしてくれる。

「これを倒したら探索初心者卒業よ。がんばりましょうね!」

「私の槍の錆にしてくれるわ」

 プルプルのラウンドでは良いところのなかったデコは、気合を入れる。

「で、ホロホロ! 卒業試験の科目は何よ!」

「え~~と、確かねぇ。私の記憶では、スレンダーマンだったかと………」

 ホロホロの言葉と同時に、森の樹木の間から人影が現れた。

 真っ白な身体はスレンダーというよりも、針金をより合わせて作った人形もどき。手脚もヒョロリと異様に長く、見るからに気持ちが悪い。そのくせ掌や足の面積も広く、指も長い。

 そして………。

「………デカい」

「電信柱が歩いてるみたいだね、マスター」

 しかもそんなのが、五体も歩いて来るではないか。

「………こんなのに勝てっての? バカじゃない?」

「いや、呆れてる場合じゃないぞ、コリン。後ろを見てみろ」

 ベルキラの言葉に、私も振り向いてしまう。

 するとそこには、剣を杖に傍観を決め込む、陸奥屋の面々がいた。

「………シャドウ?」

 呼び掛けると、シャドウは「どうぞ存分に闘ってください」とばかり、手を差し伸べた。

「がんばれ! 敵は巨大だぞ!」

 ジャックは気楽に言う。

 手伝ってくれる気は、毛頭無いようだ。

 ただし、フィー先生だけは治癒魔法全開で待機中。

「これはあれですねぇ~~。ケガは治してあげるから、敵を倒すまで帰ってくるな。ということですねぇ~~」

「………シャドウ、今回はずいぶんとまた、スパルタンだな」

「総裁の指示なので、すみません」

「大丈夫、弱点はちゃんとあるさ」

 ドワーフのダイスケ笑った。

「さあみんな、力を合わせて勝って来い!」

 やっぱりジャックは、気楽に言う。

「いいわ………やってやろうじゃない! 遅かれ早かれ、こういう場面にはいつか出くわすものよ!」

「賛成だね、コリン。ボクも行くよ!」

「ふむ、それならばたぬきよ」

「無理ですよ、御主人様」

「まだ何も言ってないだろう」

「置き土産の術でダメージを与えよう、って考えてますよね? 無理ですよ」

 たぬきごときに考えを読まれてしまった。そこは大変な屈辱である。

 だが、何故無理なのかが気になる。

「私のおならは、あんな所まで届きません」

 なるほど、意外と言えば意外な欠点だ。背の高い相手には、たぬきの置き土産が使えないとは。ここぞという場面で、使えないたぬきだ。

「それならマスターの飛翔魔法で、たぬきを抱えて行って………」

 とここで、スレンダーマンの一体が私たちに顔らしきものを向けた。

 私たちを敵と見なしたか、巨大な掌を振り上げる。まるでバレーボール選手である。と思ったら、我々めがけて掌を振り下ろしてきた。

「よけろ!」

 全員散った。

 スレンダーマンの掌は、無人の地面を叩いたに過ぎない。

「アキラ! 私の飛翔では、単独でもアレに近づくのは難しいな!」

 歩く動くといった基本動作はノロいくせして、降り下ろしだけは素晴らしいスピードだ。

「それじゃあ、弱点を見つけないと!」

 ホロホロが言う。

 そうだ、弱点だ。ダイスケも言っていた。弱点はあると。

「そういうことでしたら………」

 ベルキラが首を鳴らす。腕をグルグル回して、斧をかまえた。

「弱点はここに決まっている! アキラ、コリン、私に続けっ!」

 突撃だ。

 動きの鈍いスレンダーマンに襲いかかる!

 そのスネめがけて、自慢の斧をフルスイング!

 カーーンという、乾いた音が響く。

 ………………………………。

 しかし、何も起こらない。

「うむ、ここは弱点じゃなかったようだな」

 そんなベルキラに、スレンダーマンのアタック。

 大きく体力を削られたベルキラは、二人に引きずられて戻ってきた。

 フィー先生の患者、第一号である。

「まったくベルキラさんってば、考え無しに突っ込むんだもんなぁ」

「お、アキラには何か策がありそうだな?」

「まかせておいてよ、マスター。リーチの差を埋める技術は、ボクシングこそ世界最高峰なんだから!」

 これは期待ができそうだ。

 アキラはスレンダーマンに近づくと、ピーカーブースタイルでかまえ、頭を小刻みに振る。

 スレンダーマンは掌を大きく振りかぶった。そして一撃を叩き込んでくる!

「このタイミング! 必殺、クロスカウンターっ!」

 を、スレンダーマンの顔に叩き込むつもりだったようだ。が、リーチが足りない。というか話にならないレベルだ。つーかアキラ、お前パンチを当てられるつもりでいたのか?

 アキラ、撃沈。

 負け犬の亡骸は、たぬきとコリンが回収してきた。フィー先生の患者、第二号である。

「でも、こうしてみるとアレよねぇ」

 デコがしみじみと語る。

「マヨウンジャーってホロホロの指揮が無いと、頭の悪い集団よねぇ」

 アタシは違うけどねと、デコはつけ加えた。

「私は頭がポケポケなだけですよぉ~~♪」

「もちろん私もベルキラたちと一緒にされたりすると、納得のいかないところがある。あ、たぬき。お前はしゃべるな」

 マヨウンジャーメンバーというか備品込みの中で、もっとも頭の悪いたぬきに釘を刺しておく。

ブックマーク、評価ポイントありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ