表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
399/506

私、アキラのピンチに立ち会う


 モンスターの討伐、アイテムの回収。そして進軍を繰り返し、私たちは森の深部へと足を進めた。やはりチンプ系のモンスターが多いのか、大きな群れにもう一回。そして小さな群れにも遭遇して、これを討伐していた。

「チンプ系のモンスターなんて、こんなものなのかしら?」

 (むくろ)と化したグランド・チンプを解体しながら、コリンが言った。もしそうなら、マイティ・チンプなぞ恐れるものではない、となるのだが………。

「そうあってもらいたいんだけどねぇ、そうは行かないと思うよ?」

「でもホロホロ、このグランド・チンプとかってのも、大概だったじゃない?」

 そう、グランド・チンプというモンスター。なかなかやるもので、クレイジー・チンプより攻撃力が高いものだった。

 基本的に地面で生活しているのだろう。文字通り地に足着いた闘い方をしてくれる。まず攻撃に、両手を使っていた。「当たり前じゃん」などと、言うなかれ。これはほぼ人間と同等の攻撃を仕掛けてくる、ということなのだ。しかもチンプはプレイヤーたちよりも頑丈(タフ)で、腕力も強い。アキラ風に言うならば、「ガッツあふれるスラッガータイプ」ということになる。

 なかなかに厄介な相手であった。

 厄介ついでに言うならば、グランド・チンプ。棍棒をはじめとした武器を、これまた両手で扱うのだ。単純に言っても、威力は倍増である。

 そんなグランド・チンプを、私たちがどのように料理したか?

「動きが単調でしたね」

 アキラが言う。

「集団戦闘は心得てなかったな」

 ベルキラはもらした。

 そこが勝因である。

 つまり私たちは、一頭ずつ前に出てくるチンプを、入れ替わり立ち替わり攻撃して袋叩きにしたのだ。

「あれはいい戦法だったね。まともに一対一を作らなかったせいか、全員無傷でクリアできたんだから」

 ホロホロは、鼻唄でも歌いそうなくらい上機嫌であった。それくらいパーフェクトな勝利だったのである。

「だけどアキラくんはぁ、なんだかもの足りなさそうですぅ♪」

「いやいやモモさん、そんなことありませんってば! 別にボクは、一対一で撃ち合ってみたかったなとか、どこから攻めれば効果的だったかなとか、そんなこと思ってませんってば!」

 いやアキラ、本音だだ漏れだぞ? というか、そこがアキラと言えば、そこがアキラなのだが。

 だが次のモンスターは、アキラの不得意とする形態のものであった。

 私たちがさらに奥地、C6エリアを目指していた時である。

「ホロホロさん!」

「御主人様!」

 アキラとたぬきが鋭く呼び掛けてきた。振り向くと、二人の尻尾が水平に伸びて小刻みに震えている。

 すでに戦闘体勢。アキラはクラウチングスタイル、たぬきもマシェット杖をかまえていた。

 私とコリンも背中合わせで警戒体勢。残りの者も防御姿勢をとった。

 数はどのくらいか?

 どの方角にモンスターはいるのか?

 訊こうとして、アキラに向き直ったとき………。

 どすん、ぷぎゅ。

 巨大な塊が降ってきて、アキラが下敷きになった。

 いや、なんの塊だ?

 肌色の塊で体毛のようなものが生えているが。

「なにこれ?」

 ホロホロが口にするまで、それが巨大な後頭部とは気がつかなかった。

 アキラを下敷きにした『頭だけ』は、ゲタゲタと笑っているようであった。

「………ま、マスター………助けてぇ~~」

 アキラの声が、か細く聞こえてきた。

 その声で我に返る。

 コリンはすでに雷撃を放っていた。そして弾かれる。

「待っていてください、アキラさん! すぐに助けます!」

 たぬきが突撃。

 しかし、パックンと一口で上半身が食われた。ベルキラの戦斧がモンスターの鼻に命中。おかげでたぬきは助かった。

 コリンとともに、ホロホロたちと合流する。そこでようやくモンスターの全貌が明らかになった。

 顔である。

 巨大な塊の正体は、だらしなくニヤけたハゲ頭で、ヒゲ面の顔であった。

「………これはまた、和風なモンスターですねぇ~~………」

「何か知ってるのか、モモ?」

「はい♪ これは妖怪つるべ落としですぅ♪ うかつに近づくとぉ、食べられちゃいますよぉ?」

 うん、知ってる。

 現にいま、たぬきが食われかけたし。

 妖怪つるべ落としはゲタゲタと笑いながら、その場で跳ねた。そのたびに下敷きのアキラが悲鳴をあげる。しなやかな四肢がビクンビクンと、痙攣するように突っ張った。

 これはピンチである。

 アキラの体力がみるみる削られた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ