私、所在地を明かす
マイティ・チンプを狩るための準備は整った。あとは出撃するのみである。
「とは言っても、やみくもに歩いたってマイティ・チンプには出くわさないのね」
私は、まだ拠点『下宿館』にいる。ホロホロのモニターで、マイティ・チンプ目撃箇所をしらべているのだ。
マップによると、私たちがこれまでに攻略した森林部よりも、さらに北寄り。まだ踏破していないC6という場所に棲息しているらしい。
「アタシたちはC3ルートを攻略してたから、そこから三ブロックずれなきゃならないのね?」
「どのくらいの距離があるんでしょうねぇ~?」
「ブロックひとつが、およそ四丁角くらいの広さだね。つまり交差点から歩き出して、交差点を越えて次の交差点まで。これが縦横の長さと考えてもらっていいよ」
「四丁角かぁ………」
「四丁角よねぇ………」
ホロホロの言葉に、アキラとコリンが頭に思い浮かべたのは、どのような光景か。
「狭いですね」
「広いわね」
と、別々の答えが返って来た。
「マスター、これはどういうことですか?」
ベルキラの疑問に、私は答えてやらなければならない。
「コリンは北海道の人間だ。一丁角の広さが桁外れなのかもしれない。極端な例だが、一面に広がる田んぼと畑が実は誰か一人の所有地だとしたら、一丁角が凄まじく広くなってしまう」
「釧路市じゃあ水田は少ないわよ」
「失礼、例えが悪かったね。連なる山がすべて誰か一人の所有地だとしたら………」
「例えがヒドくなってるわよ」
話が脱線してしまった。
「う~~ん、そうかぁ。ボクのところでも、サトウキビ畑が個人の所有地ってのは、あるもんなぁ………」
「サトウキビ畑?」
「言ってませんでしたっけ? ボクの所在地は沖縄県ですよ」
初耳だ。
というか沖縄県とボクシングとなると、どうしてもテレビの人気者しか思い浮かばない。私の世代で沖縄県と言えば、どうしてもアイドルを輩出した、歌や踊りの学校になってしまう。
「ボクの感覚では四丁角っていうと、みんな御近所さんなんですよね」
「北海道一部地域では、その御近所さんのところへ行くのに、クルマに乗って山を越えたりするわよ」
コリン、それは自慢になってないぞ?
「私の同級生はぁ、ウチに遊びに来る時にぃ、迷子になったりしますぅ♪」
そんなモモの家は?
「はい! 京都府迷路市字蛸薬師上ガル四丁目角右三番地下ル二の三松之下横町入ル………」
「………どこ?」
ホロホロの意見はもっともだ。
「あら、西区の川島さん家でタクシーに乗ったら、到着できないの?」
だからコリン、それは極端すぎると言うのに。
「ちなみにホロホロさんとベルキラさんは、どこ在住なんですか?」
「ヨコハマだよ♪」
「何も自慢は無いな」
いや、だからお国自慢のコーナーじゃないから、な?
「マミヤはどこ住みよ?」
「練馬だ。かつては『石を投げれば漫画家かアニメーターに当たる』と謳われたほど、業界人あふれる街だったんだぞ」
本日は短めの更新です