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私たち、隠蔽の稽古もする

通常更新です。

本来なら北海道釧路市在住のコリンは参加できないと思うのですが、この辺りは申し訳ありません。


 私たちにできる隠蔽技術は、まだ低級なものである。忍者の稽古は修得に時間がかかるし、高級すぎるからだ。

 しかしそんな低級技術でも、使い方である。これは私たちがチームを結成して以降、変わるところのない信念でもあった。

「ということで、私たちは低級隠蔽しか身についてないが、それを熟成させようと思う」

 カラフルワンダーに挑戦することを決意したのはこの隠蔽技術に基因したからなのだが、それが未だ低級というのも本末転倒な話ではある。しかし若者たちの勢いは止めることができなかったし、我々の成熟を待っていては挑戦などいつの日になるかわかったものではない。

 これは我々が怠けているというのではなく、『我々が努力をすれば、彼らもまた努力をしている』という原則にのっとったものだ。

 つまり、挑戦などというものに「まだ早い」は無い、ということだ。むしろ、「いつやるのかね、君ぃ」があるくらいである。

 さらに言うならば、上位討ちや番狂わせなどというものは、『自分たちよりも強い奴を倒した結果』なのだ。強くなりたい勝ち星を挙げたいというのなら、自分よりも強い奴を倒さなくてはならない。これはトーナメントを経験した私の実感である。

 あいつは強いからダメとか、こいつはランキングが上だからやりたくないとか、そんなことを言っている輩には成し得ないことである。そんな輩に限って下位ランカーに星を落としたりするのだ。何故なら下位ランカーたちは、上位ランカーを討ち倒すべく、日々研鑽しているからである。


 ということで、隠蔽技術の習熟である。

 稽古内容とその目的の説明は、ホロホロから。

「まずは、小柄な選手が大柄な選手の陰に隠れること。これが大原則ね! とは言っても終始陰に隠れてる訳じゃなくて、ここ一番。わかりやすく言うと突撃前に一度隠れることで、敵からすればどの角度から突入してくるか分からなくするのが目的だよ?」

 わかったかな? という問いかけに、ハイといういい返事。

 では早速、稽古開始。

 全員でベルキラの後ろに隠れる。

「ちょっと待て、みんな! ってゆーか、マスターまで………」

「あ、いやスマン、ベルキラ。つい………」

 つい私まで、ベルキラの頼もしい背中に隠れてしまった。

「こういうのは、二人一組のペアをつくっておいた方がいいんじゃないの?」

「そうだねコリン、ナイスなアイデアだよ」

 ということで、ホロホロはペアを指示。

 前衛のアキラはベルキラとペア。

 後衛のホロホロは、モモの背中に隠れる。

 ということで、中堅の私はコリンとペアだ。

「ちょっと待ってホロホロ、その組み合わせじゃあ決戦要員のマミヤが、矢面じゃない!」

「待って待ってコリン。それじゃあマスターが、コリンの後ろに隠れるっていうの?」

 コリンの主張を汲むならば、ホロホロの言う通りになる。そしてその姿を想像してみた。

 チビ。

 痩せっぽち。

 おデコのお姫さまが槍を構えて凄んでいる。その背後には、吸血鬼スタイルの中年男が小さくなって隠れている………。

 うん、物笑いのタネにしかならないな。事実他のメンバーは、腹をかかえて笑っていた。

「いやいやみんな、そう笑ったものではないぞ。私がコリンの後ろに隠れているから可笑しいんだ。想像の中の私に泰然とした態度をとらせてごらん?」

 娘たちは私のアドバイス通り、想像を働かせているようだ。

「………うん、絵になるかな?」

 ホロホロが賛同してくれる。

「なかなか格好いいな、ズルイぞマスター」

 ベルキラもわかってくれたようだ。

「なによ、ちょっとイイじゃない。マミヤのクセに………」

 コリンにはもう少し、素直になってもらいたいものだ。

「だけどマスター? なんだかこの構図、よく見る絵柄のような………」

 おや? 普段は素直なアキラが、異を唱えるのか?

「えっと、この構図。………狂犬と飼い主?」

 アキラ、言うてはならぬことを………。

「なによそれ! アタシが狂犬だっての? 冗談じゃないわよ!」

「ごめんごめん、コリン。なんだかコリンの勇ましさが、先に立っちゃって………」

「だからってそれは無いわよ! 犬っコロよ、犬っコロ! ワンコロよワンコロ! アタシはキャンキャン吠えたりしないわよ!」

 いや、コリンさん? いま現在まさに貴女は、キャンキャン吠えてるんですが。

「ちょっとマミヤ! なんとか言ってやりなさいよ!」

 急に振るなよ、バカったれ。

「………いや、私もそんなつもりで言った訳じゃないんだけどな」

「じゃあどんなつもりよ?」

 せっかくフォローしてんのに、お前が斬り込んでくるなよ! お前がっ!

「いつでも必殺の刃を抜くことができる、お姫さま?」

「なんで疑問文なのよ?」

「どう言ったらコリンが満足してくれるか、私も手探りなんだよ」

「そんな、アタシの顔色なんかうかがわなくてもいいのに」

 腕を組んでそっぽを向くが、頬の赤さが印象に残る。

「まあいいわ、そういうことにしときましょ。さっさと稽古をはじめるわよ!」

 場を仕切ろうとするコリンだが、まだ頬の赤さは抜けていない。


 だが、稽古に入ってみると意外な効果が現れた。

 二人一組で模擬戦をしてみたのだが、私とコリンのペアが好成績を残したのだ。

 つまり私がコリンの背中に隠れたり、彼女が私の背中に隠れたりと、どちらが突撃するか分からないようにできたのだ。

 これは模擬戦前に二人で打ち合わせたものであり、即席のペアにしては連携がよくとることができていた。

「これはさすがに、カラフルワンダーでもお手上げだよね………」

 我らが軍師ホロホロの口からも、お墨付きをいただく出来映えであった。

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