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実録 北海道大停電・最終章

最終章です。


 断水の情報に対応して、俺は水を溜め込んでいた。

 しかし、水が出たで御座るよ。


 なんだそれは?

 どういうことだ?

 考えてもわかる訳がない。当たり前だ、誰が出した断水情報か? それすら調べていなかったのだ。

 フテるようにして、テレビで情報収集。

 しかし最大被災地の厚真町と、液状化現象を起こした札幌市清田区の映像ばかりが流されている。つまり他の地域は『画にならない』ということだ。

 この十四時以降の時点では、まだまだ市街地の信号機などは復旧していなかったはずである。もちろん俺はこの段階から家を出ていないので、正確なことはわからない。しかし後の話で札幌などは、早い地域で電気の復旧は十五時以降と聞いている。

 そうなると、ことさら被害の大きかった地域の画ばかりを、故意に流していたということになる。もちろん最大被災地の情報を中心に報道するのは当然であるし、行方不明者が出ているのだ。なによりも報道するべき情報かもしれない。しかし大局的に見て、北海道全体がどのような状態なのか? 今後の経済にどのように影響するのか? より具体的な今後というものが報道されれば、道民はさらに安心できたかもしれない。

 最大被災地に比べれば大した被害は出てないんだろ? という問題ではない。俺が気になる『港』、海運関係の話がとんと出て来なかったのだ。北海道の災害は、他の地域とは少々異なる。海を渡って物資を運ばなければならないのだ。

 飛行機による輸送があるんじゃない? と、おっしゃるなかれ。浮いている船に荷物を載せて運ぶと、コストがかからないのだ。つまり物資に高値がつかなくなる。飛行機で運搬などしようものなら、トイレットぺーパーがいくらになるやら想像もつかなくなるのだ。


 報道のありかたについて、愚者なりにあれこれと考えていたのだが、ここで思い出す。

「楓さんにメールしないとな」

 こちらが断水に入ると報告してあるのだ。しかも彼女は、「必要な物資があったら送りますよ」と言ってくれていたのだ。もちろん宅急便が受け付けてくれたらの話ななだが。

 そんな彼女だから、今ごろ水を買い込んでいるかもしれない。

 さっそくメールして、現状を知らせる。


 明けて七日の話。

 現場再開である。

 早朝五時三〇分、いつものように家を出る。

 いつもなら現場近辺のコンビニで用を済ませるところを、近所のコンビニへ。

 もちろんコンビニ弁当やパンは無い。そこでナビスコ社のリッツを購入。昼飯代わりとする。

 そして、セブンコーヒー。熱いコーヒーをいただくのが、久し振りな気がする。

 酒棚を眺める。

 商品は全然減っていない。

 煙草棚を眺める。

 こちらも満載だ。煙草などは東日本大震災の折に、かなり減っていた気がするのだが。


 車を走らせて、隣街の現場へ。途中、石狩川を眺めることができた。小さなダムのような施設で水の勢いを弱めている場所は、いつもならば水を満々とたたえているのだが、この日は川底の砂地が顔を出している。

 俺たちの貯水が影響したのか? だとすれば下流地域、果ては札幌市民のみなさんに申し訳が無い。この段階ではまだ、電気も水道も通っていない地域が、札幌にはあるのだ。自分たちの生活が復旧すれば、それでいいということにはならない。

 現場付近のコンビニも、灯りがよみがえっていた。試しにセブン銀行で、現金をおろしてみる。通常化していた。ただ、弁当やパンが並んでないのは、こちらも同じ。本格的な復旧は、一週間後、というのは発電所のこと。復旧のためにさまざまな人が、寝ないで仕事に取り組んでいることだろう。

 俺も、働かなければ。

 しかし札幌の被害も、清田区に集中しているような話を聞く。もちろん札幌市すべてを、親方たちが歩いた訳ではない。それでも現地の人たちの声は、貴重と言えた。マスコミ報道が、それだけ偏っていたという証拠である。


 現場を終えて、帰路へ。今朝は市街地の信号機が復活していた。郊外はまだである。しかしコンビニのカップ麺は、贅沢を言わなければまだまだ残っている。

 大丈夫だ。

 復旧は進んでいる。

 しかし会社に戻ると、まだ電気が通っていないという従業員もいた。そして断水も、一部地域で起こっているらしい。一日も早く日常を取り戻していただきたいものだ。

 帰りに立ち寄ったマーケットでは、当たり前に鮮魚が売っている。本当に何事もなかったかのようだ。一部商品を欠品をのぞけば。





 そして大オチです。

 ある議員のツイッターから、「断水がある」とデマが発信されていた、と動画サイトで見かける。

 俺は散々『民族が』とか『国家』がと言ってきたので、この政党やこの議員を責めるのは、極めてアンフェアだと思う。だから政党名も議員の名前も挙げない。

 だが議員ならば、インターネットというものを利用して発信するならば、是非とも気をつけてもらいたい。

 今現在でも、被災地で苦しんでいる人たちがいるのだ。

『一緒に気をつけましょう』では済まないのだから。


 これが七日夜までに、作者の身の回りで起きた出来事です。

 まだまだ完全な復旧には遠いでしょうが………



 デマには一緒に気をつけましょうね

なお、誤解のないように。

時系列を確認すると、議員さんのツイッターは私が断水情報を聞いたあとに発信されたもののようです。

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