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私たち、熟成する


 魔法を仕入れたならば、今度はそれを熟成(エージング)である。単純な初級魔法であっても強力な一発に変貌することは、私の圧縮魔法や火の玉改で証明済みだ。

 これはすでに気合と精神力と根性で、イメージしてどうにかしろと、カラフルワンダーから教わっている。

 ホロホロが気合を入れて風魔法を使う。そよ風が渦を巻き、つむじ風になった。それを四つ生み出す。四つのつむじ風はたぬきに迫った。

 取り囲まれ、つむじ風になぶられて喜ぶたぬき。

 ホロホロは叫ぶ。

「赤胴っ十文字真空斬りっ!」

「やめなさい」

 精神力で真っ赤に燃えるアキラに、コリンが耳打ちしていた。アキラはアキラで納得したようにうなずいている。

「それじゃあマスター、ボクとコリンの合体技です!」

 アキラがシャ〇ン・ス〇レーと叫んで霧を撒き、コリンがシュー〇リーム・サ〇ダーと叫んで雷を放つ。技そのものはアキラの撒いた霧の中を雷光が走り、見るからに強力な防御魔法である。

 しかし。

「しかしだね、二人とも。その技名は私に対する嫌がらせなのかな?」

「そうなの、コリン?」

「そうねアキラ、年若いアタシたちには理解できない難癖ね」

 うん、わかっててやってやがるな、二人とも。いつかどこかでお仕置きしてやるから、覚えてやがれ。私は忘れっぽいけどな。

 最後にモモが根性を見せてくれるようだが。私としてはモモの防御魔法が、一番危険を感じていたりする。というかすでに不安は的中。変身ベルトを腰に巻き、変身ポーズをとっていたりする。

「一応確認しておくけど、モモ。そのベルトとポーズは何だ?」

「はいっ! 根性の証、変身ベルトに変身ポーズですぅ!」

「で、その根性で君はこれから擬人化されたあれこれを出す訳だけど、わかってるね?」

「ハイ! モモは流れを掴めるできる子ですぅ! トロくなんかありません! 運営さんたちからお叱りを受けるようなことをすればいいんですね!」

「ちげーっての!」

「ではいきますぅ! 回復系防御魔法、(いで)よ白血球ぅ!」

 ボボボンとモモの前に煙が立つ。その中から現れた白血球はっ………!

「………モモちゃんが五人いる」

 モモが五人いた。

 背中に竿を立てて、『白血球』と(のぼり)をあげている。なんのことは無い。ただそれだけのことであった。

 冷や汗をかかせてくれる。まあ、当然と言ってしまえば当然のこと。運営が自分の首を絞めるようなことをする訳が無い。

「じゃあみんなの防御魔法、それぞれテストしてみようか」

 私は火の玉を放る。

 まずはホロホロのつむじ風。これは私の火の玉をパシッと弾いた。火の玉改は貫通するものの、威力がかなり落ちる。ただしこれは、私が火の玉改をつむじ風に撃ったため。私が魔法の準備を始めてからでは、対応に難があった。よって上手いこと使わなければ、カラフルワンダー対策としては有効とは言えない。

 次にアキラの水霧。これもホロホロ同様の効果。使い方に工夫が必要である。

 ベルキラの砂魔法は、なかなか有効と言えた。咄嗟の場合にも『使い慣れ』しているので、出遅れが少ない。そして水や風と違い『物』であるせいなのだろうか? 防御効果も他より上な気がする。

 コリンはアキラとタッグを組んで、始めて効果を出した。それも、圧縮魔法による範囲魔法を散らせたのだ。ただし、タイミングを外すと効果は霧魔法のみと同等でしかない。

 さて、モモと五人のモモである。正しくは、モモと五人の白血球だ。

「それじゃあモモ、通常の火の玉からいくぞ」

「はい!」

「「「お願いしまーーす!」」」

 「」の数は足りないが、五人のモモ………正しくは白血球が返事した。

 ポーンと軽く、山なりの軌跡で火の玉を放る。

 すると五人の白血球がドタバタの右往左往。どうにか火の玉の落下ラインを読んだらしい。モモの前で壁をつくり主を守る体勢だが………。

「「「とうっ!」」」

 一斉に火の玉に飛びかかって、火の玉をどうにか押さえ込んだ。

 もちろんこんなにドタバタしていては、火の玉ごとき相手でさえ間に合わない気がするのだが。

 白血球たちは火の玉を押さえ込んだことにより、全員御臨終。新たな五人の白血球が呼び出された。

「次は火の玉改だ。押さえ切れるかな?」

「「「がんばります!」」」

 ということで、火の玉改だが。壁を築いた五人の一人に命中。すると五人とも消滅。多少威力が落ちたかもしれないが、それでもモモにダメージが入る。つまり、あまり役に立っていない。

「じゃあ次は範囲魔法ね」

「「「はい! がんばります!」」」

 返事はよかったし、五人全員でファイヤー・ボールを押さえ込んだのは良かったのだが、結果は玉砕。ファイヤー・ボールの威力はほとんど削がれなかった。

「とまあ、このように散々な結果ではあるが。どうだろう、みんなの感想は?」

 訊くまでもない。

 決戦が目前に迫っているというのに、この結果である。しかもカラフルワンダー相手。みんな肩を落としていた。

 アキラ以外は。

「ボクの防御魔法もたいしたことなかったけど、これに指環がつくんですよね? それならかなり効果があると思いますよ?」

 意外にポジティブだ。

「ボクたちの防御魔法は、正面からガッチンコすれば紙防御です。でも『受け流し』の道具に使えば、かなりイケルはずですよ?」

「ふむ」

 つまり使い方ということか。

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