表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
353/506

私たち、防御魔法を得る


 さあ、大車輪の稽古が始まる。まずは隠蔽の基礎となる忍者の指導。そしてシャドウを始めとした魔法部隊の攻撃を受け切る、防御魔法の稽古。いつものジャック道場の稽古に、私たちなりの隠蔽訓練。とにかく目まぐるしく時は過ぎる。

 ここでひとつ、メモのように記載しておくならば、コリンとモモは防御魔法があまり上手ではなかった。コリンの雷撃系魔法は弾幕を形成しづらく、モモにいたっては弾幕を形成する素材が無いのである。つまり私の炭火魔法、火の粉のような弾幕を形成し、敵の魔法を迎え撃つという真似が、できないのである。

「む~~………愛と平和の回復役に、防御魔法が作りだせないとは………無念ですぅ………」

 モモはがっくりとうなだれるが、たぬきがいらなく励ましていた。

「大丈夫ですよ、モモさん。いざとなったら白血球や血小板を擬人化して………」

 だからやめろと言うのに。

「ですがマスター、それってできない魔法ですかねぇ?」

 アキラが変なところに興味を示す。

「コリンの迎撃魔法が未熟なのは仕方ないとしても、回復役(ヒーラー)がやられっ放しってことは無いんじゃないかと」

「確かにアキラの言う通りだ。しかしそれならばすでに、カラフルワンダーの紫さんが惜しむことなく披露してないかな?」

「そこは盲点かもしれないよ、マスター」

 今度はホロホロだ。

「確かにカラフルワンダーは魔法の専門家、プロフェッショナル。だけど彼らがすべての魔法を網羅して、天才的に使いこなせるかどうか? それは本人たちにもわからないかもね」

 なんとも雲を掴むような話というか、博打の過ぎる想定というか。あまりアテにしてはならない『架空の話』というか。

「しかしホロホロ、少なくとも私たちは魔法において、カラフルワンダーの足元にも及んでないんだ。ここは一発、魔法なんか捨てて私の戦斧とアキラの拳に賭けてだな………」

「ベルキラ、貴女たち二人の突撃を活かすために、魔法の援護と防御は必須なの。二人は本当に私たちの切り札なんだから」

「こうなるとアレよねぇ、一度みんなで図書館にこもって、先人の知恵にすがるしかないわよね」

 コリンの言葉に、一同おぉと感嘆の声をあげた。

 お互いに顔を見合わせる。

「善は急げですね」

「早速行ってみよっか」

 ということで、私たちは徒党を組んで図書館へ。


 三人寄れば文殊の知恵。というのは用法が間違っている。だがしかし、人海戦術というのは正解だった。

 面白いものが見つかったのである。

魔法増幅(ブースター)の指環?」

「ハイぃ! これなんていかがかと思いましてぇ………」

 モモの話ではこの指環をはめて迎撃魔法を使えば、かなりの効果が見込めるのではないかということだ。

「確かシャルローネさんが厳冬期イベントで、敵の魔法を片手で叩き落としていたが………」

 それとは別物なのか?

 いや、例え別物だとしても私たちからすれば、カラフルワンダーと闘う私たちとしては、のどから手が出るほど欲しいアイテムである。

「これは、全員分欲しいね。………ベルキラ、造れる?」

「クラフトギルドに依頼すれば。………あとはこんなアイテムが出回らないように、口止め料を払っておけば」

 ということで、早速依頼。私たちはあまり買い物をしないので、ゲーム内通貨はため込んでいた。出費に問題は無い。

 続いて見つかったのが、防御魔法のコツである。

 実は決戦番長のベルキラが、防御魔法に長けていることが判明したのだ。

「どういうことだい?」

「簡単に説明するとね、初級では土埃、中級では砂の弾幕を張れるから、案外役に立つって話なんだよね。ついでに言うと岩を生やして盾にしたり、陣地を形成したりと。これまた使い勝手の良さは随一だとか」

 ホロホロが説明してくれるのだが、もっと訊いてもっと訊いてという顔をしている。

 仕方ない、リクエストに答えてやろう。

「他に何か面白そうな話はないかな?」

「よくぞ訊いてくれました! 実は風系魔法はほとんどの魔法と相性がよくて、みんなの魔法効果をアップすることができるの!」

 うん、たしか以前ベルキラの砂か礫を風にのせて、パワーアップさせていたね。

「アタシの雷は風にのせられないわよ?」

 コリンは口を尖らせる。

「コリンの雷魔法はねぇ、風で摩擦して威力を高めるってあるから、大丈夫! アップアップだよ♪」

 これにはコリンも満足顔である。

 そして肝心の、回復役の防御魔法だが………。

 読まなきゃよかった。

 やっぱり擬人化するみたいだ………。

 まあ、それはそれとしてだ。

「とにかくコリン以外はこれで、防御魔法の目処(めど)がついた。カラフルワンダー相手にどこまで通じるかわからないが、それでも手段が無いよりはよっぽどマシだ。拠点の道場に帰って稽古しようか」

 私は炭火魔法。つまり頭上に火の粉を撒き散らし、防御のための弾幕とする。

 アキラはミスト、すなわち霧。同じく敵の魔法を防ぐ弾幕だ。

 ホロホロの風も弾幕ではないが、敵の魔法を偏光のようにネジ曲げる。

 そしてベルキラだ。

「マスター」

「なにかな?」

 自信満々の表情に、嫌な予感が湧き出てしまう。

「こんなこともあろうかと、私はひそかに防御魔法を研究していたんだ」

「嘘つけ、さっき図書館で知って思いついただけだろ」

 突っ込んではみたが、ロリコン・ドワーフにたじろぐところは無い。それどころか青い矢印の入ったツナギに着替えて、これまた赤い矢印の入ったツナギ姿のホロホロに問いかける。

「古代、準備はいいか?」

「大丈夫です、真田さん!」

 古代って誰よ?

 真田さんって誰さ?

 真田さんってもしかすると、G1クライマックス。今年の夏イベントでライヤー夫人に対して忍者がホザいた、あの真田さんのことだろうか?

 だがそんな私の思惑をよそに、ベルキラは防御魔法を発動した。

「どうだマスター! これがドワーフの土系防御魔法! アステロイド・ベルトだっ!」

 ベルキラを中心にひらめく、天の羽衣のごとし。石に土塊(つちくれ)岩の欠片が、丸く円を描いて流れ飛び始めた。それはもう、一作のアニメーションを代表するような光景であり、この場面を眺めただけでスポンサーがウハウハ集まりそうな場面であった。

「………って、ンな訳あるかーーっ! ベルキラ、お前いつから宇宙戦艦ヤ〇トになったよ! つーかスポンサーとか生々しい話ヤメいっ!」

「ダメだってさ、ベルキラ」

「折角練習したのにな」

 お前ら本当に、事前のネタ合わせしてたのかよ。

「ですがマスター? 版権はアウトかもしれませんがぁ、これだけ滑らかに土を操れるのはぁ、ベルキラ姐さんの特質ですよぉ?」

 うん、だがモモ。問題は著作権とデザインの権利に関わる版権なんだ。そこがクリアされてないと、オジサン何も許したくないかなぁ?

「大丈夫ですよぉ、技の名前と技の表現方法をいじれば、あら不思議。別な技に早変わりですからぁ」

「具体的にどんな名前に変えるのかな?」

「ジャコビニ流星………」

「却下だ! 却下っ!」


 迷走戦隊マヨウンジャー。今まさに、迷走している最中である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ