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私、実況中継する

お盆には終わる予定だった今回の企画。ものの見事に『押して』おります。笑


 忍者はその後連勝を重ね、無事予選を通過。トーナメントへの出場を決した。

 そして我らが勢力における、最後の選手の出番である。

「まあ、シャルローネさんのことだ。間違いは無いだろう」

「まず距離を置いての魔法戦。ここで主導権が取れるというのは、大きなアドバンテージですね」

 今回も実況は私、マミヤ。解説は三条葵戦でひと皮剥けた、脱皮アキラだ。

「よろしければ親しみを込めて、『だっぴぃ』と呼んでください」

「本当にいいのか、アキラ?」

「すみません嘘です」

 軽いトークで掴みを入れて、さあ試合に集中だ。

「まず対戦相手の分析から入ろうか、だっぴぃ」

「許してくださいマミヤさん、ボクが悪かったですから。ということで対戦相手、楓さん。見た目は若いお嬢さん、種族人間の剣士ですね。ジャック先生や緑柳じいちゃんのような本職者ではなさそうですが、剣道の段くらいは持ってそうですね。打撃戦も魔法もできるオールラウンドプレイヤーですが、『コレ!』というような必殺技や極め手に欠けるところがあるでしょうか? ただしこの手のタイプに隙を見せると、こちらが倒れるまでしつこくしつこく、何度でも同じことを繰り返してくるので注意が必要かと思われます。序盤は様子見や観察というケースが多く手数も控え目。シャルローネさんへの注文とすれば、序盤で叩いて欲しいですね。楓選手は時間が経てば経つほど、粘りを見せてくる選手だと思います」

「対するシャルローネさんの解説をどうぞ」

「憎らしいくらいにおっぱいが大きいですね」

「私見は控えてください、アキラくん」

「失礼しました。シャルローネさんは氷魔法の使い手として知られていますが、実は他の魔法もかなり高いレベルでこなせるそうですね」

「そうなんですか」

「おまけに緑柳じいちゃんから怪しげな武術を授かっていて、得物のメイスを振り回せばたちまち血の雨。肉塊の雨が降りしきるそうです」

「ついたアダ名が血みどろ(ケツ)バット」

「最近ではマグラの森の折檻大臣というのもあるそうです」

「それでは試合展開の予想などをお願いします」

「まあ、楓選手も御自身のギルドではポンコツメンバーに囲まれて、大変な苦労をされているようですが、悲しいかな所詮はポッと出。シャルローネさんからすれば、粘るしか能の無い地味な選手に負けてはいられない。というところでしょう」

「つまりはシャルローネさんの圧勝?」

「はい、ホロホロさんはそう分析してました」

「ホロホロの分析かよ!」

「拳闘士のボクにそんな頭のいい仕事、できる訳ないじゃないですか!」

「………アキラ、世界中のボクサーに謝りに行こうか」

 さて、シャルローネさんの出場となると、またもやあの痛々しいコスプレにつき合わなければならない訳だが………。

「今回は謎の仮面騎士とか、ラ・セーヌの星とかで責めてきたら楽しいですよね」

「毎回毎回コスチュームを替えるのかい? いくらなんでも、それは無いだろう」

 答えると、背後でガタッと音がした。

 シャルローネさんだ。

 胸にベレー帽やマントを抱えている。そして「それで変装してるつもり?」な、アイマスクも。もちろん足元は、ロングブーツで固めていた。

 これがアキラの言う、ラ・セーヌのなんとかというコスチュームなのだろうか?

 あ、シャルローネさんが逃げた。

 その背中を眺めながら私は、「ポワトリンの方が近いんじゃないんだろうか?」と思った。


 そして、シャルローネさんの入場。

 ポワトリンでもラ・セーヌの星でもない姿だ。

 白い上着に黒い帯。そして下半身は青くテカテカしたスパッツ。

「マスター、あれは丈が長いからレギンスですね」

 そう、そのレギンス。

 それに白いリングシューズ………って、あの上着は柔道着じゃないか?

「なんで柔道着にレギンスなんですかね? ボクにはわかりません」

 アキラ、私もだよ。

 その時、耳元にチーム内通信が飛び込んだ。

「放送席放送席! こちらはカラフルワンダー・サイドですぅ!」

 すぐそばに座っているモモが、わざわざチーム内通信を使っているようだ。

「はい、モモさん。お願いします」

 対応したのはアキラだ。

「シャルローネさんの今回のコスチューム、なんでも放送席が先読みされてしまったため、シャルローネさん自身からキャンセルを申し出たそうですぅ!」

 どこにキャンセルを申し出たのよ?

「そして予備のコスチュームに変更を余儀なくされた訳ですけどぉ、何のコスチュームかわかりますかぁ?」

「いえモモさん、こちらではさっぱりでした!」

「なんとですねぇ、今回のシャルローネさんのコスチューム、柔王丸なんだそうですよぉ!」

「柔王丸はプラレス三四郎に登場したプラレスラーとして有名ですがぁ」

「こらモモ、私は柔王丸を知らないのだけど?」

「なんとこの柔王丸、当時最先端のセラミックボディを持ち、ステルス塗装(ペイント)までしていたという牛次郎先生渾身のキャラクターだったんですぅ!」

 ステルス塗装って、そんなに簡単にできるのか?

「チッチッチッ、マスター。ステルス塗装は軍用目的ばかりでなく、河船のレーダーを邪魔しないようにも使われてたんですよぉ?」

 いや、それにしても、だからって………。

「軍用目的ではない平和利用。それを訴えて主人公は、ステルス塗装を手に入れたんですぅ!」

 そうなのか、すごいじゃないか柔王丸。

「ちなみにこのマイコンで操作するプラレスラー、昭和五十八年頃の作品にもかかわらず障害者のリハビリにも利用できるという発想をしてましてぇ、現在VRMMOストーリーをリハビリ云々と語られている方々はぁ、足を向けて眠れない作品なんですぅ!」

「なにコキやがるか、このアホたれがーーっ! お前、世間に喧嘩売っとるんかーーっ!」

「それでは放送席に、危険球をお返ししまーーす!」

 いらねぇよ、バカーーッ!


 とにかく、柔道着にレギンスという風変わりな装束のシャルローネさんだ。

「いやぁ、実に落ち着いてますね!」

「そうだなアキラ、そのかわり放送席は大混乱だけどな」

「この服装から察するに、シャルローネさんの作戦は接近戦と見ましたが」

「でも彼女には魔法があるのだろ?」

「誰かさんがラ・セーヌの星を見破らなければ、こんな闘い方はしなかったでしょうに」

 アキラ、嫌味の腕をあげたなぁ。

 ちなみに、ラ・セーヌの星を先読みしたのは私ではない。アキラである。これはとんだ濡れ衣と言えた。

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