表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
312/506

私、戦士部門の幕を開く

本日も二話更新。11時に、もう一話をアップします。


 血と肉の祭典、戦士部門の開幕である。我々マヨウンジャーからは、アキラ、ベルキラ、モモの三人が出る。

 が、先鋒はまず本店の大矢参謀にゆずった。参謀の予選ブロックは、参謀だけが試合をしていなかったからだ。

 つまり大矢参謀からすれば、スタミナの浪費をおさえるためにも短時間で勝って、予選を通過したいところ。

 が、敵もさるもの。

 粘りに粘られなかなか決着つかず。どうにか初戦をもぎ取った、という形。

 続く二戦目は、あっさりと一方的な勝利。どうやら敵は戦闘未経験者らしく、ゲームの中で配布されるスキルからしか技を繰り出さなかった。

「玉石入り混じりよね」

 コリンの言う通りである。その玉が現れたときが大矢参謀の敗北だろうと、私も思う。

 幸いにして、大矢参謀のブロックに玉はいなかった。最後の相手は槍使いだったのだが、これがまた酷い。いきなり必殺技を撃ってきて、参謀にかわされるや背中を見せて逃走。必殺ゲージがたまるや再び必殺技。また逃走という、やる気があるのか無いのかわからない闘い方である。

「マミヤ、必殺技のゲージってものがあるのね? 初めて知ったわ」

「知らなかったことを恥じ入ることはないさ、コリン。実は私も、いま初めて知った」

 考えてもみれば、私たちは陸奥屋一乃組で修得した技ばかり使っていた。それ故に必殺技ゲージにたよった闘い方を、したことがない。

 コリンの龍尾槍などは、確かにスキルとして授かったものだ。だが普通の選手はそれを、コマンド入力のような『条件作動』をさせるだけ。

 しかしコリンは違う。基礎から練り上げた槍術で龍尾槍という技を反復練習し、角度を変えたりタイミングをズラしたりと工夫し、キッチリと身につけた技なのだ。スイッチを入れたらオートで発動するような、安っぽい技とは違うのだ。

 だから私たちは、あんなゲージなど気にも止めていなかったのである。

 で、大矢参謀。間を詰めて攻撃、逃げられても間を詰めて攻撃という、焦れったい展開を我慢しての一本勝ち。結果的にはパーフェクトだが、ようやっと手にした勝利であった。

 というような形で、戦士部門はダルな展開が大半を占めた。陸奥屋二乃組三乃組もそういった意味で苦戦するが、なんとか三戦全勝である。

 そしてダルな空気を吹き飛ばしたのは、陸奥屋一乃組ユキさんである。

 眼鏡で、少し地味な一本おさげ。そんな娘が腰に日本刀をおとして現れたのだ。観客も視線に、グッと力を入れる。

 敵は槍。苦戦は必至と誰もが思っただろう。しかもユキさんは下段に構えていた。待ちや受けの構えだ。

 観客席から落胆のため息がもれる。

 が。

 槍が音を立てて、地面でバウンドした。観客の中に、見えていた者は何人いただろう。ユキさんが槍を『巻き落とし』たのである。さらにその槍をとられないよう、足で踏みつけながら間を詰めて………。一方的な惨殺ショーであった。まったく無抵抗、無力化された選手がただただ殺害されたのである。

 技が違う。

 モノが違う。

 ゲーム、ドグラの国のマグラの森の中に、本物が登場した瞬間であった。


 そして力士隊。

 押さば押せ、引かば押せの精神のとおり。敵が攻めてこようが守りに入ろうが、攻めて攻めて攻め抜いての勝利。まさしく陸奥屋魂の具現化とでも言おうか。傷だらけの全勝である。

 モモはトゥイックタバック………いわゆるヌンチャクで登場。黄色地に黒くラインを入れたトラックスーツという出で立ちに、もらすような笑いも起こったが………。ファイトが始まるや観客の笑顔も凍りつく。

 普段はおっとりお姉さんのモモだが、剣も槍も足だけでかわす。そして敵の得物にヌンチャクを巻き付けるや、動きを封じたところで蹴る! 蹴る!! 蹴る!

 場合によっては寝技に持ち込んだり、ほどいたヌンチャクで徹底的に殴るなどして、三戦全勝を獲得した。

「陸奥屋一党の懐の深さ、思い知ったか」

 鬼将軍も満足そうにうなずいていたが、内心では予想外の強さだったのだろう。少しばかり冷や汗がにじんでいる。

 ベルキラの勝利も危なげなく、キッチリと実力を発揮。武器と柔を上手に入れ換え、最後は寝技で仕留めるという古戦場の手を披露した。


 そしていよいよ、若手最大の注目株。

 アキラの登場である。

 会場が妙に沸いた。

 もしかするとアキラは、ゲーム世界でそこそこ知られた選手になったのかもしれない。

 冬のイベントではマヨウンジャーの一員として、一度も撤退することなく、春のドラゴン狩りではキッドニーブローで龍を痛めつけたのだ。

 そして何より、普段の闘技場でマヨウンジャーのポイントマンとして活躍している。観客の中には、アキラにずいぶんと苦しめられたプレイヤーもいるはずだ。

 武器の携行が認められた戦場に、無手のアキラが真紅のブルマー姿で入場。鬼将軍も拳に力を込めて立ち上がるほど、熱く熱くなっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ