私、未知の技術をみる
本日は11時に二話目を更新します。
美人秘書御剣かなめの技術説明会が始まった。
「まずアキラ君、キミはファイティング・ポーズを取ったとき、両足ともカカトを浮かせるわね?」
「いえ、かなめさん。最近のボクシングはカカトをつけて、ベタ足で踏ん張った力強いパンチを………」
「浮かせるわね?」
「………はい」
有無を言わせず、アキラにうなずかせる。
「それじゃあ後退するとき、浮いていた後足のカカトをペタリとつけてみて?」
「?」
言われた通り、アキラはカカトをつける。だがそのまま、動かない。
「ダメダメそれじゃ。カカトをつけたらそのまま後退するの」
「はい」
後足、つまり右足をつけてその右足を引こうとするが………。
「かなめさん、動けません!」
御剣かなめは笑っていた。
「そうじゃなくてね、こう」
御剣かなめはパンプスを脱いで、ストッキングの足を見せる。
まずは右足のカカトをつけて、前に置いた左足を引いてくる。そのまま右足よりも後ろに引いて、いわゆるサウスポースタイルの足になった。
アキラも真似をする。
「………うん、スムーズに下がれますね」
「タイミング次第では、前足で地面を蹴って後退するより、速く下がれるわよ?」
「ですがかなめさん、前に出たり左右に動くには、どうしたらいいんですか?」
わからないことは素直に訊く。それがアキラの美点だ。素直に訊くから、相手も素直に答える。
「それはね、動きたい方角にカクンと落ちればいいのよ?」
………すみません、あまり素直ではありませんでした。
「カクンと、ですか?」
「そう、カクンと」
よく分かっていなくても、教わったまま素直に練習する。それもアキラの美点である。
アキラがあ~でもない、こ~でもないと反復練習する間に、シャドウの残り二戦をかいつまんで実況。
レベル14とレベル11が相手であったが、キッチリとしたショット&ランでパーフェクトゲームをおさめた。
のだが。
「ちょっとアキラ君、練習をやめてシャドウ君を見てもらえるかしら?」
かなめさんが試合場を指差した。
「シャドウ君の足をよく見て、分からなくてもいいから、頭の中に入れておいて」
そう言われたなら、私も見ない訳にはいかない。
が、見ただけでは何もわからない。ただ確信もなく言わせてもらうなら、一戦目に比べたらシャドウの動きが速く見えるだろうか?
「なるほどねぇ、シャドウさんはカクンと体を落とすんですかぁ」
「わかるんですか?」
「まあ、見ればね。マミヤさんにはわからないんですか?」
「お恥ずかしながら」
と、ここで声の主に目を向けた。
シャルローネさんだ。
「チャオ♪ マミヤさん」
「チャオじゃなくて。シャルローネさん、シャドウの動きを理解してるんですか?」
「同じような稽古は、伯士につけてもらいましたよ?」
「それで? できるようになったんですか?」
「はぁ、まぁ………。伯士から合格は貰いましたけど」
「どういう動きなんですか、アレ!」
アキラが食いついた。
「ん~~あれは確か、動きたい方角にスコン! って身体を落っことして、脚が着いていくような感じ?」
「こうですか?」
「いや、まだ脚が踏ん張ってるね」
「じゃあこう?」
「モーションが大きすぎ」
「じゃあ………」
「跳ねちゃダメだよ、アキラ君。こうするの………」
シャルローネさんの動きは、実になめらかである。もちろんそんな動き、アキラでさえ出来ないのに私にできる訳がない。
「あ、シャドウさんの試合、終わったね。それじゃあ私たち、カラフルワンダーが出ますから」
そう言ってシャルローネさんは、すぐそばのメンバーたちのもとへ戻った。
魔法部門へ、カラフルワンダーが出撃するのだ。