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私、勝手に想像する


 真夏の祭典(イベント)、個人で最強を決めるG1クライマックス。

 その総合部門に出場するコリンを、不安がらせるためのトークは続く。


「あれこれと注目の選手はピックアップしたが、それぞれの選手がどんな闘い方をするものだか、勝手に想像してみないか?」

「それは面白そうですね」

 アキラがすぐに食いついたが、コリンは「恐怖をあおる効果しか無いわね」と、あまり乗り気ではない。

「まずはベルキラさん注目の、秘書さんたちから行きましょうか。秘書さんたちって、どういうことができるんでしょうね?」

 いやアキラ、いきなり話を頓挫させるな。

「そもそも秘書って、このゲームで必要なのか?」

 ベルキラ、お前はお前で話の根幹をひっくり返すな。

「考えてみればぁ、不思議な存在ですねぇ?」

 そう、秘書さん二人は不思議(ミステリアス)な存在なのだ。だから何ができて何ができないか、推察することすらできない。

「だからといってみんな、謎ばかりでは一歩も話は進まない。ホラや大げさ、あり得ないような技でもかまわないから、秘書さんの技を推測してみようじゃないか」

 そもそも彼女らが、エントリーしてくるかどうか。それすら決まってないのだから。

「ね、ベルキラ? 秘書さんたちもカラフルワンダーの講習会、参加してたよね?」

「あぁ、ホロホロのいた場所からは見えなかったか。一応シャルローネさんから手ほどきを受けて、『たりはまくりはま』とか『ぅぶでびばでびび』とかやってたぞ?」

 う~んと唸って、ホロホロは腕組する。

「かなめさんが『氷の刃』を使ったり、冴さんが回復魔法を使うのは想像できるんだけど、それじゃありきたりだよねぇ?」

「話に面白味が足りませんねぇ♪」

 ホロホロ、モモ。お前たちの思考の基準は、面白いか面白くないか、なの?

「ボクが思うに、二人とも直接闘う姿って似合わないんじゃないかな?」

「お? アキラくんの発想がぁ、翼を広げましたよぉ?」

「つまりさ、かなめさんが指をひとつ鳴らすと、全身黒タイツの戦闘員が現れて、ライダーを取り囲むとか?」

 その戦闘員って、私たちのことじゃないよな?

「それなら天に散らせた名刺が、指を鳴らして戦闘員になるってのもよくない?」

「ホロホロさん、それ格好いいですね!」

 だからその戦闘員、私たちがやらされそうな予感しかしないのだけど。

「じゃあ冴さんは、さしずめ魔術師(マジシャン)かなめのアシスタントをつとめる、バニーガールのお姉さん!」

「可愛い可愛い♪ ………だけどホロホロさん、冴さんって、その………巨乳さんでしたよね?」

「うん、アキラ。慰めという名のお酒を飲も? コリンも交えてさぁ………」

 乳の大小でたそがれることができるとは。これもまた若さという不安定期がなせる技なのか。ちなみに私は、大きい方を好んでいる。

「しかしみんな、本店メンバーには小柄なメイドさんもいたな? 彼女は何ができるだろう?」

 恐らくは小さい娘好きなベルキラが、シリアスな面持ちで話題を作る。

「メイドさんといえばぁ、おもてなしでしょうかぁ?」

「疲れた選手には、甘いクッキーを。魔力を消費した選手には、回復材を」

「しかも毒入り」

「味方にデバフを仕掛けてどうする」

「でしたらぁ、いつの間にか敵陣に潜り込んでぇ、敵のお世話をしているメイドさんですねぇ?」

「甲斐甲斐しくクッキーや回復材を運んで………」

「全部毒が入っている」

「やっぱり毒オチかよ」

「ちょっと待て、みんな」

 さすがに私も口を挟む。

「どうしたの、マスター?」

「ホロホロ、よく考えてみろ。かなめさん冴さんメイドさんの三人が出て、闘ってるのはかなめさんだけだぞ?」

「やだなぁマスター、戦闘員が闘ってるから、かなめさんも闘ってないよ?」

「余計ダメだろ」

 まあ、真面目な作戦会議ではないので、私も笑っている。

「それじゃあ今度は、真面目に闘ってもらいましょうね。私が注目する執事さん。彼ならどんな闘い方をするかな?」

 執事さんは頭髪も白くなった、大柄な老人だ。強いというなら、彼は実に頼もしく見える。

「う~~ん………まず、ベトナム戦争の帰還兵って設定はどうかな?」

 アキラ、お前最近『ランボー』を観ただろ。

「上官とすれ違うたびに、空挺部隊のために! とか叫びながら、腕立て伏せを三〇回やるような、そんな訓練を受けてるんだね?」

 ホロホロ、お前は何故そんなコアなネタを知ってるんだ。

「ツライこともあったんでしょうねぇ。………通りがかった街でハンバーガーを買おうとしたら、保安官に『持帰(テイクアウト)りにしろ』って命じられたり」

 モモ、お前は小説『一人だけの軍隊』を読まなかったか?

「だけどベトナムを生き残るには、空挺部隊の訓練だけでは足りず、彼は必殺の古武術も身につけなければならなかった」

「その師匠が、忍者」

「出ましたねぇ、忍者さん♪」

「忍者さんが師匠なら、ベトナムでも中東でも生き残れそうですね」

 アキラ、苦笑いが様になりすぎだ。

「あの忍者なら、死ぬことは無いだろうな」

「変なところで不死身だろうしねぇ」

 私たち迷走戦隊マヨウンジャーの結論は、『全部忍者が悪い』ということで落ち着くに至った。

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