私、下馬評を語る
結局私の出場は変わらず、迷走戦隊マヨウンジャーは全員が夏イベント、G1クライマックス(笑)に参加と相成った。
ついでに言うならば、予選も本戦トーナメントも始まっていないのに、メンバーたちは火花を散らしてしまっている。
「同じ部門に出るからって、予選から激突することはほとんど無いから、入れ込み過ぎないようにな」
少々口をはさんでやらないといけない。
「そうなんですか、マスター?」
「ジャック先生ならこんな時こそ、誰と当たっても動揺しないように気を引き締めておけ、とか言うんですけど」
ベルキラもアキラも、あまり納得はできてないようだ。ならばリーダーとして、二人を納得させなければならない。
「まだまだその必要は無いよ。基本的に私たちは同じレベルだから、戦力は同等と見てもらえるだろう。そして予選ブロックというのは、強中弱を混ぜ込んでおくものだ」
そうしなければ、強い者だけのブロックと弱い者だけのブロックが生じてしまい、トーナメント出場への公平性が無くなってしまう。そうならぬよう、下馬評ならぬ戦力レベルを基にして、選手を割り振りするはずだ。
人間が主催するスポーツ大会ならば、戦前予想やら下馬評やらで公平なトーナメントとするだろうが、どこの誰やらというネットゲームの大会なのだ。レベルを査定材料とした、機械的な割り振りが行われると予想できる。………もっとも、本当に機械的な人数合わせの選抜をされたら、その限りではない。いやいや、ライヤー夫人の夏至ドロボウ祭人気に対抗した、運営側の目玉企画なのだ。それなりに納得できる大会のはず………。
ここは気を取り直して。
「私たちは全員レベル6だ。同じレベルの者を同じブロックには、入れたりしないさ。それに同門対決も、運営は避けるに違いない」
「あ!」
「どうした、アキラ?」
「ということはですよ? 同門じゃないレベルも違う人とは、予選からぶつかる可能性があるってことですよね?」
その通り。
その通りだ、アキラ。
だからその先は、言わないでくれないか………。
「ということは?」
ベルキラも気づいたようだ。
「ちょっと、怖すぎないかしら?」
コリンも青くなる。
「そだよ、みんな」
ホロホロは平然としていた。
「戦士部門のみなさんはぁ、予選からジャック先生とぉ、当たる可能性あり! ですよねぇ♪」
モモさん? そらアンタさんも同じでんがな。
「ちょっとマミヤ! アンタあのシャルローネさんと当たるかもしれないのよ! 大丈夫なの?」
「コリン、私はできるだけ現実から目を逸らそうと必死なんだ。たのむからツライ現実を直視させないでくれ」
「余裕あるな、コリン」
不安を打ち消すように、ベルキラがからんでゆく。
「あら、アタシは誰と対戦するかわからないから、本当に気楽なものよ? 総合部門ってこういう時に楽チンだわ♪」
そんなこと言って、ブロック表を見た途端、コリンは絶対に青くなるだろう。コリンの輝かしい未来に、私なら五〇ドル賭ける。
「それじゃあみんな、余裕ぶっこいてるコリンを不安のドン底に叩き落とすために、陸奥屋メンバーがどの部門に出場するか予想してみない?」
「面白そうですねぇ♪」
ホロホロ、モモ。
君たち何気にヒドイねぇ。
「まずはジャック先生とユキさん。この二人は戦士部門エントリーじゃなきゃウソだよね?」
「ダイスケさんもぉ、戦士部門でしょうかぁ?」
「あ、シャドウさんは魔法使いだけど、武術も相当にやりそうだよね?」
アキラが話題に参加した。
「そうなるとぉ、シャドウさんは総合部門でしょうかぁ」
「陸奥屋一乃組から総合部門に出場となると、忘れちゃいけないのが一人いるよね?」
ホロホロの目が、毒をふくんだ輝きを放つ。
「忍者だよ。あれこそ何でもあり、総合部門に相応しい汚さを持ってると思うよ」
「コリン、御愁傷様………」
「お盆休みにはぁ、お墓参りに行きますねぇ?」
「ちょっと! 縁起でもないこと言うんじゃないわよ!」
うん、賭けは私の負けのようだ。
コリンはブロック表を見る前に、青くなってしまった。
「魔法部隊や力士隊は、それぞれ得意分野で出場だろうから、問題は本店メンバーだな」
ベルキラも話題に参戦。
「あの秘書さんたちやメイドさん、どの部門に出てくるだろうか?」
「甘いわね、ベルキラ。私は総裁付きの老執事さん、彼に注目するわ」
ホロホロの眼差しは、さらに毒を濃くした。
「老獪な人間って、厄介なものだよ?」
そうだなホロホロ。君はカラフルワンダー魔法講習会で、あのジイさんから手ほどきされてんだもんな。
年寄りの手強さを、身に染みて知っているはずだ。