おまけ:他人の視点
本日は朝から二本立て。
男って奴ぁ生まれ落ちたその日から、どいつもこいつも暴れん坊よ。
もちろん程度の差はある。
だがよ、男ってのは原始人の昔っから、他の男を殴り倒して女を獲得してきたのよ。
まあ、さすがに法治国家現代日本でンなことしたら、すぐに個室の別荘へとご招待になっちまう。
そこでゲーム。
全男子の熱い闘魂を満足させてくれる、VRMMORPGというやつ。
この俺もまた腕力の衝動を満たすために、ゲームの世界へ入って来たって訳よ。
数あるバチャゲの中から、俺は「ドグラの国のマグラの森」を選んだ。
そこには理由がある!
まずは俺の話を聞いてくれ! 四分だけで良い。
このゲーム略してドグマは、女の子キャラのデザインが大変に可愛らしいのだ!
あきれるな! 俺の語りはまだこれからだ! 俺の話を聞いてくれ! 一分だけで良いから!
いいか、過激な戦闘の戦利品は、クオリティが高ければ高いほど、男の闘志を掻き立てるだろう!
よし、俺の正当な言い分は通ったな。
ならば俺が闘技場前の広場で、コーヒーを楽しむふりをしながら女の子ウォッチングに励んでいても、なんら後ろめたいことはないと理解してくれるはずだ。
いや、別に俺はナンパなチャラ僧なんかじゃない。見てくれはゴツイ・頑丈・立派と三拍子そろった、硬派なドワーフだ。熱血バトル野郎さ!
人は俺をボクシングの世界チャンピオンのように、こう呼ぶのさ! 激闘王ってな!
………まだレベル1で、ギルドにも加盟してない、フレンド無しのボッチだけどな………。
だから、いつか俺のことをこう呼ぶのさ! 激闘王ってな!
よしよし、またもや俺の正論が通ったところで、女の子ウォッチングを続けよう。
広場には屋台がならび、プレイヤーたちのアバターが行き交っている。
高レベルプレイヤーの着飾るような武具法具。そして顔立ちも絵に描いたような、美男美女。それが実在感たっぷりなのだから、まったく我が国の技術というのは恐ろしい。
そんな見ているだけでヨダレが出そうな世界に、手鐘の音が鳴り響いた。
「激レアアイテムが出ましたーーっ!」
あれは確か、存在そのものがツチノコ級と謳われた、運営直轄のアイテムくじ。
どれどれ、激レアアイテムとはどんなものか、女の子たちとのトークのネタとして、拝見させていただくか………。
と、まず最初に俺の体を駆け抜けたのは、嫌悪感だった。
なんだあのオールバック。キザったらしいスーツに黒マント。おまけにツラは美形ときたもんだ。
本能的に感じたね。
コイツは俺の敵だ、って。
美男はすべて敵。俺の信念だ、こいつは曲げられねぇ。
で、気色悪い美中年さんよ? お前の引き当てた激レアアイテムってのは、どれよ?
サラサラと柔らかそうな栗色の髪。
スカイブルーのつぶらな瞳。
小柄なくせに、抱きしめると柔らかそうな体。
一言で言うと天使。
二言で言うならばエンジェル。
もっと言うなら、フォーリンラブ。
………………………………。
見つけたぜ、俺の恋。
これが俺の存在意義、君に出逢うために生まれて来たんだ。
「御主人様」
鈴の転がるような声。
※個人的な感想です。
「たぬきです」
そうか、名前は環ってのか。
※もちろん「たぬき」を聞き間違えております。
うおっ! 環ちゃん積極的! あのキザ男に抱きついてるぞ!
おのれスケベな美中年! 手前ぇだけは絶対ぇに許さねぇかんな!
………はぁはぁ、と………とりあえず、落ち着くか。
さっきの愛くるしいウィンクを思い出し、俺は頭にのぼった血液を、下半身に集める。
………雑貨屋で、ティッシュ買って来るか。
しかし、魔族マミヤ。
手前ぇ、名前覚えたかんな。
ギルド名が、迷走戦隊マヨウンジャーだと? ふざけやがって。
しかもコイツ、プレイヤーレベルとギルドレベルが、まだ1じゃねーかよ?
よし、決めた!
俺はこのエロ中年をブッ倒して、環ちゃんを迷走から救い出してやる!
そのためにまず、ティッシュ買って来っか………。
引き続き、本編をどうぞ。




