私、ギルドを立ち上げる
ホロホロに心を滅多打ちにされて、受付へ。
デキル彼女は、まず事務的な笑顔から。そして、「あらマミヤさん、二勝を挙げたのね」と、私の勝利を祝福してくれた。どうやら私のことを覚えていてくれたようだ。
「ありがとう。お祝いに君のような美人を食事にでも誘いたかったんだが、生憎とゲームの世界なのでね。替わりと言ってはなんだが、ギルドを立ち上げることになったのさ」
「あら、それはいいわね♪ それじゃあまずはここに、ゲーム内でのプロフィールを記入して………そうそう、それからギルド名はどうする?」
「ギルド名か………」
考えていなかった。
背後で待っているホロホロとベルキラに目をやる。
「ギルド名? ………なにがいいかしらねぇ?」
「ホロホロ………私はこう、華やかな名前が良いと、思う………」
ベルキラは静かな口調、というか照れているのか。華やかな名前を好んでいる、ということに対して。
「それじゃあ、こんなのはどう?」
スケコマシと騙された乙女たち
ベルキラはホロホロの手首を取った。
そして横に首を振る。
なんて悲しい目をするのか、ベルキラ………。
「って、ホロホロ君? スケコマシとは一体、誰のことを指しているのかな?」
「受付のお姉さんを口説こうとして、鼻の下を六尺ものばしている、魔族の魔法使いさん」
「言い方にトゲがあるねぇ、君………」
さすがにそのアイデアは却下。ふたたびホロホロは、キーボードに向かう。
コルトは俺のパスポート
「君はどんなセンスをしとるのかね?」
「格好よくない? いいでしょ、エースのジョー」
「格好良すぎで、私には不釣り合いかな?」
ということで、これまた却下。
「マミヤさん、ギルド名は後から変更もできるから、仮の名前でもかまわないのよ?」
と、受付嬢。
なるほど、それは名案だ。やはりデキル彼女はひと味ちがう。
「そういうことなら、ポチポチポチ………っと」
おでこは標準装備です
「ベルキラ、君はおでこに自信はあるかね?」
ベルキラは首を横に振る。前髪を両手でおさえて、必死に振る。
「これならあの、おでこのコリンちゃんと再会できそうな気がして」
「ホロホロ、そのヘイトはいくらでも買うという姿勢は、どうにかならないのかね?」
主に私が恨まれそうだ、あのデコに。
「でもでも、マミヤさんはオールバックのキメキメな髪型だから、間違いじゃないと思うのね」
「………すみません、マミヤさん。私の相方に、ネーミングセンスが無くて………」
ほら見たまえ、相方のベルキラにまでこんなこと言われとるぞ、君ぃ。
「も~~それならベルキラは、どんな名前がいいの?」
ベルキラがホロホロにかわり、キーボードをポチポチポチ。
汚れた英雄
小説のタイトルそのまんまかよ? 却下。
蘇る金狼
同じだ同じ。というか君も、好みが偏っているねぇ。
マブい女は目でコロせ
そう有りたいと願う男子は数多いだろうが、それでは私がスケコマシと認めるようなものだ、却下。
「………なかなか決まらないわねぇ」
「難しいものです………」
「いや、ここまで君たちのアイデアを却下する羽目になるとは、さすがに私も想像しなかったぞ」
しかも却下の理由が「乙女すぎる」とか、「可愛らしすぎる」という方向ではなく、でんぐり返ったセンスのためというあたりが、まったくの予想外だった。
………………………………。
ふむ、そういう意味では、我々を象徴するギルド名は………ポチポチポチ。
迷走戦隊マヨウンジャー
「う~~ん………私たちらし過ぎて、他が思い浮かばないわ。とりあえず、私がレッドね」
「………ハマリ過ぎというのは、こういうことを言うんですね。私がレッドを勤めましょう」
「意外にも反対意見が出ないな。ではこれにするか」
私はリターンキーを押す。
「ハイ、マミヤさん。ギルド名は、迷走戦隊マヨウンジャーですね?」
「あぁ、お手数かけました」
「それではマミヤさんがレッドということで………」
「あの、私はわざとその話題に乗らなかったのだけど………」
デキル彼女はひと味ちがう。
やはり彼女は有能である。
「さて、ギルドを立ち上げたわけですけど、マミヤさん。このゲームでバトルに赴くには、六人いると便利です」
受付嬢は親切そうな笑みを、私にむけてくれた。
「ギルドメンバーの募集、かけておきますか?」
「そうだねぇ………」
我がギルドは、魔族の魔法使いにニンフの盗賊。そしてドワーフの戦士という構成だ。
「戦士があと二人、それからヒーラーが欲しいだろうか?」
「そうね、グーなチョイスだと思うわ」
「私にも、異存は無い………」
ということで、メンバー募集もお願いすることになった。
「それじゃあ定員になり次第、募集は打ち切りということで」
「よろしくお願いします」
初めて逢った頃にくらべて、受付嬢はずいぶんと柔らかい表情をするようになった。
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