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私、丘の上に立つ


 そして戦場。

 風のスニーカーの装備していると思われるプレイヤーたちは、すでに丘の頂、ハウスの並んでいる辺りの占拠を始めていた。

 そこへ範囲魔法が飛来してくる。範囲魔法であるというのは、敵側から我々の登頂者が見えていないから、と考えられる。

「魔法使い諸君、こちらも撃っていこう!」

 もちろん、射程距離の短い私に言ったのではない。鬼将軍が用意した、長距離魔法部隊に言ったのである。赤青緑黄色白と、カラフルな光弾が頭上を越えてゆく。もちろんその効果は目には見えない。だが、敵の先鋒部隊が姿を現さず魔法も飛んで来ないところから、それなりの効果があったと考えられる。

「みんな、気をつけて!」

 ホロホロだ。

「敵の先鋒が風のスニーカーを完成してるってことは、間違いなく私たちよりレベルが上ってことだから」

 西軍全体ではそうでもないが、陸奥屋においては我々が急先鋒である。当然のように、難敵と最初にぶつかるのは我々、ということになる。

 丘の上では、ハウス周辺での攻防が始まったようだ。魔法の光弾が見える。つまり我々も、丘の頂に近づいたということだ。

「ホロホロ、弓矢の準備を」

 私も火の玉改を待機させる。

 敵味方の範囲魔法が、交差するように降り注ぐ。標的はハウスの争奪戦をしている連中だ。

「マヨウンジャー! 着弾したら飛び込むぞ!」

 みんなに声をかけると、元気な声が返ってきた。

 着弾、様々な魔法が効果を発揮。そしてそれらが消えたところで、突入の号令をかける。

 広場のような場所に、プレハブ小屋のようなハウスが並んでいる。そして範囲魔法を逃れた敵も、まだまだ残っている。

 弓矢、火の玉、弓矢弓矢火の玉。

 私とホロホロで、突破口を開く。残りのメンバーは頭を低くして、一番手近なハウスへとたどり着いた。私とホロホロも、どうにか身を隠すことができた。

 ホロホロが本隊に通信する。

「マヨウンジャー六名、一番手前のハウスを確保! 現在はハウスを遮蔽物にしています!」

「了解したわ、同志ホロホロ。いま範囲魔法で援護するから、ハウスを次々確保してね」

「はい!」

 御剣かなめとの通信が切れた。そして魔法の準備か、しばしの間がある。その時間に我々は、誰がどのハウスを確保するか、どの辺りまで突入するかを決めておいた。陸奥屋は魔法部隊と力士隊をあわせると、四八名いる。ひとつのハウスに六人隠れるとして、八つのハウスが必要になる。ハウスは西軍側の列、真ん中の列、東軍の列と、三列ランダムに並んでいる。

 そうなると………。

「必然的に、東軍側の列まで占拠することになるね」

「危険極まりないな」

「とは言っても、やらなきゃならないじゃない?」

「コリン、マスターはやらないなんて一言も言ってないよ?」

 そうだ。私たちは陸奥屋の急先鋒なのだ。後続の本隊が進むも留まるも、私たちの出来にかかっている。

 陸奥屋の魔法が飛んだ。

 着弾してそれぞれの効果を発揮する。

「マヨウンジャー、突撃!」

 突撃という号令は、目的を達成するまで絶体に止まらないことを意味する。弓矢を放ち火の玉を放ち、私たちは走り出す。すると我々に呼応するように、西軍プレイヤーたちも走り出した。

 そうだ、これは陸奥屋とどこかの戦いではない。東軍と西軍の戦いなのだ。味方が周りにいてくれる。それだけで私の負担は軽くなった。

 生き残っていた敵プレイヤーは、いずれも私たちよりも高レベルであった。しかし度重なる戦闘により、いずれも虫の息。魔法を使わずとも、打撃のみで葬ることができた。

 状況は好調である。

 そう判断した時だ。すぐそばで倒れていた敵が、いきなり起き上がった。そして私に剣を降り下ろしてくる。

 絶体絶命の危機だった。しかしこんな時に限って、不思議なことに相手のレベルに目が行ってしまう。

 レベルは9。

 うん、これは一撃でヤラれるな。済まない、みんな。私はここで撤退するようだ。

「マスターっ!」

 聞きなれた声。

 誰かと記憶を探る暇も無し。必殺の刃が止まる。青い風が吹き抜けた。

 ボディボディボディ顔へのフック! 腹から顔面! たまらず敵は膝を屈し、消滅してゆく。

 アキラだ。私に笑いかけてくる。

「油断しちゃダメですよ、マスター」

「すまんな、アキラ」

「ボクにお礼よりも、みんなを守ってあげて!」

 他の四人はすでに、最前列の占拠を完了していた。もちろん私たちだけの力ではない。私たちを守る、両サイドの上位ギルドの援護あってこその結果である。

 総大将から全体通信が入った。

「さすが陸奥屋マヨウンジャーですね。初級ギルドで生き残ってるのは、みなさんだけですよ」

 しかもその生き残りが、ハウス最奥列まで占拠しているのだ。

 これは我々が強い、ということではない。陸奥屋という部隊の連携がとれているだけの話なのだ。そして味方の援護あってこそ。マヨウンジャーは一人として、この結果に慢ずることは無かった。

 陸奥屋力士隊が上がってきた。ハウスを遮蔽物にして、どんどん最前列へと迫ってくる。その行動には理由があった。

 陸奥屋一乃組が続く。二乃組三乃組が守っている。本店も頂上に登ってきた。その背後には魔法部隊。この一帯は陸奥屋と、西軍同志たちで占拠していた。

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