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私たち、陸奥屋一乃組をたずねる


 風のスニーカーが完成した。ほんの二~三〇分程度のことだ。早速お披露目である。

 ちなみにホロホロは緑色の髪がボサボサ、瞼は腫れ上がり、ボーッとして座っていた。何があったのかは、推して知るべし。

「スニーカーのデザインは、すべて有名メーカーの布製バスケットシューズを模倣させてもらいました」

「うん、御苦労様ベルキラ」

 まずはモモのスニーカーが展示された。足首、くるぶしを保護する、ハイカットのものだ。

「桃色ナースにピンクのバスケットシューズはどうかと思いましたが、ピンク色を濃い目にすることで対処しました」

「まあ、可愛らしいですねぇ。特にこの、羽根をイメージしたマークなど絶品ですぅ」

 モモは満足気に、桃色のスニーカーを抱き締めた。

「次に面白くも可笑しくもなく、私とマスターの黒いスニーカー」

「ベルキラ、面白くも可笑しくもなくは、余分ではないかな?」

 一応苦言は呈したが、本当に面白くも可笑しくもないスニーカーだった。もちろんこちらにも、羽根のマークが入っている。

「さて続いては、コリンのスニーカーです」

 レモンイエローと白を基調に、爪先とかかとに黒を入れている。もちろんくるぶしの白丸の中には、羽根のマークが入っている。

「と、ここで私は気がついたのだが、スニーカーのカラーは髪の色を使っているんだろうな」

「その通りです。と言いたいところですが、ホロホロのスニーカーは赤と白です」

「何故かな?」

「女の子カラーで可愛らしいからです」

 うむ、よく分かった。

 なんだか分からないが、よく分かった。

「そしてこれからが、本日のメインイベント! 日本女子アトム級タイトルマッチ、一〇回戦をおこないます!」

 待て待てベルキラ、アキラが立ち上がって華麗なステップとジャブを披露しているぞ。

「赤~~コーナー! 日本アトム級女王………八戦無敗八KO! 日本海のサブマリン! アキラ~~………ジャパニーズ・オーシャン・アサッシン! ………フレイジャーーっ!」

 ふたつの拳を突き上げて、二本の脚はシャッフル、シャッフル、シャッフル! ボクこそが日本王者だとばかり、私たちにアピールする。

 というかアキラ、フレイジャーとかいう名字にされたけど、文句は無いのか?

 そんな疑問を他所にベルキラが展示したスニーカーは………いや、ベルキラ。これはスニーカーじゃないだろ? 明らかに丈が高いよな? 布製じゃなくて、革製だよな? そして靴底は、誰が見てもペラッペラ。ヒールなんて存在しないだろ?

 有り体に言うならば、これはスニーカーなんかじゃねぇ。こいつは立派なリングシューズだ!

 カラーは赤。白い靴紐が鮮やかだ。そしておそらく、ハイソックスを履いたらさらに映える色合いだ。

「………あの、ベルキラさん」

 アキラが唇を引き締める。

「わかってるさ、アキラ」

 ベルキラはうなずいた。

 そしてチャンピオンベルトを贈呈する。

 アキラはそれを肩にかけ、満面の笑顔で両手を挙げた。

 嬉しそうなアキラは、まだ良しとする。しかしベルキラ。お前ホロホロから絞り取って、なに作ってんのさ?


 ということで私たちは、陸奥屋一乃組へ。厳冬期イベントへ挑むに際し、どのような動きをとるべきかを訪ねにゆく。

「丁度いい、いま本店からメールがあったんだ」

 ジャックはいつもの笑顔で、私たちを迎えてくれた。

「今回のイベントに対する作戦の事前説明会をするそうだ」

 やはり鬼将軍、策を練っていたか。

「しかしジャックさん、私たちは陸奥屋ではないし、作戦といっても打ち合わせ通りに行動できるかどうか………」

「謙遜謙遜、ホロホロさんの指揮であれだけ動けてるんだ。それに作戦と言ってもゲームなんだ。軍隊じゃないんだから、楽しむことが先決さ」

 なるほど、少し気が楽になる。

「それに事前説明と言っても、どんな強豪と向き合うかわからない。くじ引きのような運の良し悪しもある。さらに言うなら、二日目三日目もある」

「二日目三日目?」

「イベントの手引きを読んでいないかな? 二日目三日目のイベントスタートは、前日奪った陣地から、あるいは奪われた陣地の奪還から始まるんだ。当然、戦法も変わってくる」

 ジャックによると今回のイベントは、前回の東西戦とは趣を変えているらしい。

「動画のチェックはしたかな?」

「お触り程度にしか。ここのところ、アイテム製作に没頭していたもので」

「どんなアイテムだい?」

「足を速くするスニーカーです。これで少しでも、敵の魔法をかわせればと」

「なるほど、それはいいね。で、前回の東西戦の話なんだけど、関ヶ原をイメージしたようなだだっ広い草原で行われたんだ」

「それが今回は違うと?」

「どんなステージかは、お楽しみに、って話だ」

 どのようなステージなのか? 素人の私には、想像すらできない。

御来場いただき、まことにありがとうございました。お気に召していただけましたらブックマーク登録、ポイント評価、感想などお願いいたします。

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