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私、ルールを読み解く


「それじゃあホロホロの言葉もあったことだし、イベントの詳細を調べてみるか」

 それを一番最初に調べないでどうする、とお怒りの方もいらっしゃるだろうけど、人の誘いに乗る時などこんなものである。意外に間抜けなことをやらかしたりするので、注意が必要なところだ。逆に言うならば、誘われてイベントに参加するプレイヤーには、こうしたウッカリさんも存在すると、私は確信している。

 運営からのインフォメーションを開き、大まかなルールを読む。

 まずこのイベントは、レベル1から参加できる、とあった。

「そんなにレベルの差があってぇ、大丈夫なんでしょうかぁ?」

「私もそこは心配だな。このイベントに参加したおかげで、心が折れてはしまわないだろうか?」

「ちょっと待って、マミヤ。こっちに初心者への手引きがあるわ」

 それによると、レベルの低いプレイヤーは物理と魔法の区別なく、上位レベルのプレイヤーに一発でも攻撃を当てると、大きな得点またはアイテムなどを獲得できるという。

「探索の時に、ボクたちが陸奥屋に守られて、レベルの高いモンスターに一発入れたのと、同じですね」

 なるほど、確かにそうだ。高レベルチームからすればすでに卒業したアイテムでも、初心者にとってはお宝のようなアイテムだったりする。

 それに得点………つまりゲーム内通貨である。これは説明によると、課金して得たものと同じ価値がある、となっていた。

 ………課金。つまり、十八禁サービスを受ける際に、必要なものである。

「これは、かなりの人数が参加してくるだろうな」

 私はつぶやいた。

「そうね、どんなアイテムがもらえるのか、私も楽しみだわ」

 ………すまない、コリン。きっと私たちは今、お互いを理解し合えてないはずだ。

「さらに読みますよぉ? エントリーは、個人、ギルド、同盟同士でもOKだそうですぅ」

「つまり私たちのような初級ギルドでも、仲間に守ってもらうことができるのね」

「場合によっては、魔法よけの盾にされるかもしれないな」

「ですがマスター、初心者はキルをされないことがコツって書いてますよ?」

 なるほど、敵にキルを与えないというのは、勝利への第一歩かもしれないな。しかしそうなると、消極的戦法………つまり、裏切りのごとく動かないプレイヤーも、数多く現れるのではないだろうか? いやそれとも、十八禁サービスの魔力に抗えず、無謀な突撃を繰り返すだろうか?

 その辺りは、動画や掲示板で確認が必要である。

「ルールを読み進めよう。………なになに、東西の分割はランダムですが、できるかぎり戦力に差がないよう務めます、か」

「数的有利を作りたいなら、当日翌日三日目も、這ってでも参加しろ、ってことよね?」

「つまり初日で、いかに初心者を楽しませるか? 翌日も参加したくなるようにするか? そこがベテランの腕の見せどころだろうか?」

「逆に言うとぉ、ベテランさんが自分のことしか考えてないとぉ、イベントそのものが失敗しますねぇ」

 私もドグマグ以外のゲームについて、こっそり調べたことがある。どこのゲームでも、かなりの確率でその辺りの不満が出ているようだった。

 そこに関しては、あまり期待しない方が良いと思う。そして我々は、陸奥屋の同盟者として参加するのだ。彼らの支援は期待できる。

「………マスター? ボクは三〇人対三〇人っていうイメージでしたけど、なんだか様子が違うみたいですよ?」

「ふむ? ………戦闘は誰が誰を攻撃してもかまいません、か。………フラフラになった上級者から、初心者がキルを獲ることもあり得ます、とあるな」

 ほとんど惨状になっているのではないか、このイベント? 血で血を洗うような泥沼の死闘。そんな状況しか思い浮かばないぞ?

「もちろんボクたちマヨウンジャーは、陸奥屋と同じ陣営に入れるんだよね、コリン?」

「そうね、その点はハッキリ書いてあるわ」

「だとしたらマスター。ボクたちはマヨウンジャーとしてじゃなく、陸奥屋の魔法使い班とかアタッカーチームとかに振り分けられるのかな?」

 ふむ? それはあり得る。なによりもその方が効率が良い。

「もしそうだとしたら、私たちマヨウンジャーは、何部隊に配属されるんだ?」

 カラフルワンダーのような魔法特化ギルドなら、明確に魔法部隊になるだろう。しかし私たちは、魔法も物理もあるんだよ? という普通のチーム。悪く言うなら中途半端。あるいは凡庸な集団である。

「その辺りはぁ、総裁の判断になるでしょうねぇ」

 確かに。今この場で私たちが、あれこれ気を揉む話ではない。というか俊足になるスニーカーが出来上がったら、陸奥屋一乃組へ出向き、確認を取れば良いことだ。

 クラフトルームから、ホロホロの変な声が聞こえてきた。

 本当にお前たち、密室で何をしているんだ?

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