私、連敗を喫する
初戦の白星に気をよくして二戦目。
しかしここでは、活躍らしい活躍もできず撤退。初戦でホロホロが教えてくれたように、戦車役の主砲をたじろがせ、立ち上がりを良い形にできたのに、だ。
私からすれば、いくら敵を背後から叩いても、味方がそのチャンスを活かせずにいた。
もっと分かりやすく言うならば、叩いて動きを止めたはずの敵が振り向いて、私に襲いかかってくるのだ。
私にとっては不思議なばかり。ベルキラでもアキラでもコリンでも、手伝いをしたら敵は反撃などしてこない。それなのに今回は、反撃され滅多打ち。撤退を繰り返していたのだ。
しかも、撤退した時に聞こえてくるのが罵詈雑言。
戦闘中は味方としか会話できないので、罵詈雑言を浴びせてくれたのは味方だ、と分かる。
曰く、「なに早々に撤退してんだ、クソ雑魚が!」「使えねーサルは帰って寝てろ!」「おらボケよく見てろ! バトルってのはこうやんだよ!」などなど。
ちなみに最初の発言者は、私が成績表を眺めている最中に撤退。その違いは三秒ほど。
二番目の発言者は、そのキャラクターが動かなくなった。敵が群がり、彼を撤退させる。………復活して来ても動かない。そして浴びせられる、罵詈雑言。
三番目の発言者もまた、早々に撤退。復活してからは動かない。もちろん、罵詈雑言が浴びせられる。
そして合戦終了を迎えた時、まともに活動していたのは私と、もう一人の初心者だけだった。
ただ今の戦闘を、振り返りますか?
運営から質問が来た。
はい、と答える。
第三者視点、私を中心にバトル全体を眺めることができた。
序盤戦、私は思う通りの動きができていた。しかし、背後から攻撃を与えていた時、共同して叩くはずの味方が、明後日の方角に駆け出したのだ。
当然敵は振り向いて、私に攻撃を仕掛けてくる。
私、撤退。浴びせられる罵詈雑言。
罵詈雑言の主はドワーフ。ちょこまか動く盗賊相手に手こずり、敵ドワーフにとどめを刺されて撤退。
二人目のプレイヤーが苦情を訴えると、すぐに動かなくなった。もちろん滅多打ちにあって撤退。復活後も活動する気配無し。
三人目が撤退した。ここで味方の不満が爆発する。
「抜きやがったか根性なし!」
「フカしただけの仕事はしろや!」
「お前戦犯! 晒し決定!」
もはや誰が何を発言しているのか、それすらわからない。
ただ私は真面目に出撃し、背後から攻撃しては、敵から追い回された。
私も撤退。
唯一の味方も撤退。
このラウンドは、まったく勝負になっていない。
ほぼ壊滅という状態で、敵に白星を献上することとなった。
反省を踏まえて、三戦目。
しかしここでも憂き目に逢う。
ホロホロの教えてくれた戦術がまったく役に立たず、各個人勝手に殴り合いをしていた。
こうなると、もはやチームの勝利とか戦略などというものは、ネットプレイヤーたちにはどうでもいいのかもしれない、と思ってしまう。
勝てない相手に無謀な突撃。勝てるはずの相手にキリキリ舞いをさせられて、それで体力を削られている。
うん、これでは勝てる訳が無い。
みんな自分が得るキルの数に、心奪われてないか?
協力せねば勝ちを得ず。
この精神を知らないのか?
すぐに罵り合いを始め、罵った者に限って大した働きもできず。
ネットゲームというのはそんな状況なのだと知り、心が折れかかった四戦目。
「おや、ホロホロにベルキラ?」
「はぁい♪ マミヤさん!」
「………………………………」
ブリーフィング・ルームで、ホロホロとベルキラに逢う。今回もまた、チームメイトのようだ。
「また会ったね、二人はこれで何戦目だい?」
ホロホロは「あはは」と、困ったような顔をみせた。
五戦一勝四敗。
二人の成績は同じものだった。
「私も一勝二敗。なかなか奮わない成績だよ」
「みんな突撃やドツキ合いが好きだからねぇ」
「それにしても、罵り合いまでするのだから、たまったものじゃない」
そこでホロホロから提案があった。
「もしも今回勝てたら、マミヤさんがギルドを立ててみたら?」
「ギルド? あの、チームを作るような、アレかね?」
「そ、アレ。ギルドを立てて仲間同士になったら、自然と罵り合いはなくなるわよ?」
「私のようなド素人がギルドなど立てて、良いものなのかい?」
「ギルドマスターが謙虚だと、ギルドの雰囲気も和らぐと思うよ?」
「というか、何故君が立てないんだ?」
あははと、ホロホロは苦笑い。
「どうにもこのゲーム、ナンパさんが多いみたいなんだよね。女の子がギルドを立てると、バトルそっちのけで、そういうコトに励む人が多くなるから」
なるほど、そういうものなのか。
女子プレイヤーには女子プレイヤーの苦労というものがあるらしい。
「罵り合いから解放されるなら、それもまた良いかな?」
「じゃあその時は、私とベルキラがメンバーになるからね♪」
もうギルドが立ったつもり………というか、勝ちを得たつもりでいる。
だが私に異存はない。
何故か彼女は初心者なのに、このゲームに詳しい。ド素人の私にとっては、貴重な存在なのだ。
「じゃあ早速、フレンド登録しようね♪」
フレンド登録。
またもや私の知らない単語が現れた。が、うっすらと想像はできる。
「フレンド登録しておくと、メールのやり取りができるのよ」
なるほど、想像通りだ。
「では、勝利とギルド設立にむけて、奮戦するとしますか」
いざ、合戦に御座る。
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