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私、コリンと語らう


 魔法対策をどうにかしなければならないのだが、当たり前に図書館で検索をしても当たり前の情報しか得られない。ここは何か変化球が欲しいところだ。

 さてそうなると、どのような変化球が必要か?

 魔法が通じない、で検索する。司書が何冊か本をチョイスしてくれた。

 鉱石の本、モンスター百科、植物図鑑。そして、魔法防御大全という本だ。

 まずはそのものズバリ、魔法防御大全のページを開く。訳のわからない公式や図式が並んでいる。うむ、この本はシャルローネ向きだ。そっと本を閉じる。だが一応………。貸出記録に目を通してみる。

 ………あったよ、シャルローネの名前。それからカラフルワンダーのメンバーたちも、この本を借りている。なるほど勉強熱心な若者たちだ。ただし、この方程式をどれだけ正確に理解しているかは、未知数なところがある。

 次、行ってみようか。

 鉱石の本である。

 これはマグラの森の正反対にある、ラフーノ山で採取できる鉱石を加工することでアイテムを作製できるらしいが………。ラフーノ山とはどこかな? 調べてみると、私たちのレベルではまだ、足を踏み入れることが出来ない領域らしい。ということで、これも没。

 その後もモンスター百科、植物図鑑と開いてみたが、あまりパッとした情報は得られなかった。

 これは検索ワードが悪かったかな? つまり、発想のひらめきがイマイチだったのではないかと疑いを持ってみる。

 ならば、どのようにひらめくべきか? 思わず首をひねる。

「お邪魔するわよ」

 声がした。

 目を上げると、コリンがいる。私に断りも無しに隣に座り、本を開く。

「調べものかい、コリン?」

「いくらマミヤが年長者でも、調べものすべてを押しつける訳にはいかないでしょ?」

 アタシに感謝しなさい、と続くかと思ったが、「アキラもそのうち来るわ」と教えてくれた。

「他の娘たちは?」

「ベルキラはドワーフの組合で聞き込み、ホロホロは魔法屋で情報収集。モモは武器屋よ」

 それで、いいネタは見つかったの? と訊かれる。芳しくないと、私は答えた。

 コリンは私の積み上げた本を見る。そして彼女が開いていた本は、私がかつてお世話になったアイテム本だ。

「お互いに検索の発想は同じだな」

「どういうことよ?」

「その本は以前、私が目を通している」

 コリンは貸出記録を見て、「アラ、本当だわ」と声に出した。

「もっとこう、発想を変えた検索をしなければ、良いアイテムは産み出せない、と私は考えたのさ」

「それでその本のチョイスだったのね? いま気がついたわ」

 すごいじゃないと、コリンは私をほめる。

「マミヤは私たちよりも歳上なのに、発想が柔軟だわ。年期の違いかしら?」

「こりゃどうも」

 ボルサリーノをちょっとだけ持ち上げて、頭を下げる。コリンが私をほめるど、明日は槍の雨が降るかもしれない。

「で、結果はどうだったのよ?」

「あまりよろしくはないね。どうにもひらめきや発想が足りないらしい」

「………そう、残念ね」

 慰めの言葉か、コリンは頬杖をついて一緒にため息をついてくれた。

「ね、マミヤはどうして、このゲームを始めたの?」

 いたずらっ子のような眼差しを向けてくる。

「私かい? 私は職場の部下にすすめられただけだよ。………いや、正確にはゲーム機械の購入をすすめられた、かな?」

「へぇ………」

「そこで自分に合いそうなゲームを探していたら、ドグラの国のマグラの森に行き当たったという次第さ」

「大人でも、部下とゲームの話をするのね?」

「いや、たまたまだよ。私はゲーム初心者だったから、ゲームの話題には疎くてね」

「なんとなくはわかってたけど、本当に初心者だったんだ………」

「ネットゲームは他のプレイヤーに迷惑がかかるだろ? だから二の足を踏んだのさ」

 そういうコリンは、どうしてこのゲームを始めたのか?

「アタシは、こんな口調でしょ? 友達がいないのよ」

 ちょっとだけ、言いにくそうだ。

「だからゲームはよくやる方で、まあ、そんなところかしら」

「私も友達はいないな」

「そうなの?」

 大人なんてそんなものだ。職場に仲間はいても、友達ではない。

「気心の知れた同期なんて、出世争いのライバルでしか無いし、結婚すれば友達より家庭を重視するようになる。仕方のないことさ」

「寂しくないの?」

「特には。………人間には二種類あると、私は思うんだ」

「うん」

「独りを楽しめる人間と、そうではない人間。私は前者なんだろうね」

「格好いいわね、その考え方」

 ますます珍しい。コリンはうっとりと、とろけたような眼差しを私に向けてきた。

「いや、きっと私はどこか心が壊れているんだろうな。人と接することに、どこか面倒を感じてしまうんだよ」

「それは個性よ、誰とも違うマミヤだけのものだわ」

「ありがとう、それじゃあ調べものに戻ろうか?」

「あ、そそそそうね」

 何故かコリンは顔を赤くしている。可愛らしい額まで真っ赤だ。具合が悪いようには見えないのだが………。

「マミヤだけのものか………。ねぇ、アタシたちマヨウンジャーだけのものって、何かあるかしら?」

「よそのギルドのことはわからないから、単純に比較はできないが」

 と前置きして。

「ジャックさんたちに稽古をつけてもらってる、ってのは個性かな?」

「それよ!」

 コリンの額が輝いた。

「私たちの魔法対策は、足を使うことじゃない? それなら足が速くなるアイテムを探してみたら、どうかしら!」

 それだ!

 やるなデコ!

 さすがだデコ!

 明日はホームランだ!

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