表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
136/506

私、足元をすくわれる


 バンザイ三唱。

 私たちは闘技場ロビーであるにも関わらず、思わずはしゃいでしまった。なにしろ我々レベル3のギルドが、レベル6のギルドに勝ってしまったのだ。

 運営からも、金星(きんぼし)の勲章が与えられた。大物食いに与えられる勲章だが、普通はもっと上のレベルで発生するものらしい。レベル3では、あまり無い話だそうだ。

「おめでとうございます、マミヤさん」

「やあ、リンダ。ありがとう」

 受付の有能な美人、リンダも祝福してくれた。

「でもね、マミヤさん?」

「なんだろう?」

「レベル3で魔法の圧縮技なんて、使わないでくださいっ!」

 え? なんでなんで?

「普通のプレイヤーは火の玉なら火の玉、礫は礫としてしか使えないんだからっ! あんまり無敵魔法を作り出さないのっ!」

「いや、私たちも稽古と研鑽の日々において開発したものだから………」

「まあ、今回は上位グループが相手だったから見逃すけど、あまり強く無さそうな対戦相手には使わないで欲しいのよ」

 そう、あまりに圧勝してしまうと、対戦相手が萎えてしまいゲームが過疎化してしまうというのだ。

「大体にしてあんな魔法の使い方、どこで覚えたんですか!」

 腕を組んでぷんすこしているリンダに、カラフルワンダーというギルドのマスター、シャルローネから教わったと答える。

「チッ」

 ん? いまチッとか言った?

「またあの娘たち? 今度は増殖しようとか企んでるのかしら?」

 小声でブツブツ。

 いや、リンダ。カラフルワンダーというのは、増殖する生き物なのかね?

「まあいいわ。マミヤさん、カラフルワンダーの言うことをあまり真に受けてはダメよ? あの娘たちは魔法が好きすぎて、ロクでもない研究をすることを厭わない娘たちなんだから」

 だとすると、図書館の知識の大半は、ロクでもない研究の成果ということになる。シャルローネも魔法知識に関しては、図書館に依存しているはずだからだ。

「御忠告、ありがたく頂戴する」

 頂戴するが、実行に移すとは、一言も言ってない。何だかんだで圧縮技は、シャルローネからもらった知識で生まれたのだ。彼女と疎遠になることはできない。むしろ先生とか師匠とか呼ばなければならない存在なのだ。

 カラフルワンダーに対する義理と、リンダへの人情。

 やはり義理が重たいのだ。それが男たちの世界である。ウチのメンバーは女の子ばかりだが。

「本当にもう………マミヤさんは大人なんだから、友達は選んでくださいね?」

 うむ、これで「私は陸奥屋とも繋がりがあるのだ」と告白したら、彼女は卒倒しているだろう。もちろんそんな子供心は出さないが………。


 しかし、金星は金星。

 嬉しいことに違いはない。

「ねねね、マスター? リンダさんはああ言ったけど、この勢いでもう一戦、いかない?」

 ホロホロの提案だ。

 メンバーの顔を見渡す。

 みな戦意旺盛、気力充実という顔だ。

「よし、行くか!」

「もちろん強そうな敵だったら、ね?」

 圧縮技だな? もちろんそんな敵には使わせていただく。

「ただし、相手が萎えない程度にね」


 ということで、いざ連戦だ!

 ブリーフィングルームで入ってくる、敵情報は………と。

「お? これはまた」

「レベル2って、珍しいね?」

「どうやらレベル1を卒業したて、らしいわね」

「ここは大人気(おとなげ)のない真似はせず、余裕を見せつけてやとの、神の思し召しかな?」

「メンバー構成もさっきのギルドと同じ、初期のボクたちそっくりですね」

 やはりバランスが重要と、みんな考えているのか? そのことに異論をはさむことはしないが、しかしシャルローネとカラフルワンダーを見ていると、特化突出型のおそろしさもまた捨てがたくなる。

 何を選び、何を捨てるか? そのチョイスは重要だと、私は思う。

 そんなことを考えていたら、銅鑼である。戦闘開始の時間だ。

 両陣営ともに接近。

 まずは名刺交換の魔法攻撃だが………。

「キャッ!」

 コリンが被弾?

「どうした! 調子が悪いのか!」

「ちょっと油断しただけよ………あっ! アンッ!」

 またもや被弾、コリンが戦列から遅れをとらされる。

 チラリと見た感じでは、何ということもない普通の魔法攻撃。だが、コリンの対処が良くない。集中力を欠いているというか、防御がいささか雑になっている。

 逆に長距離砲台であるべきホロホロが、アキラと並んで前線を駆けていた。

「ホロホロ、弓矢だ! 長距離攻撃に徹するんだ!」

 ホロホロも気がついたようだが、もう遅い。両陣営の前線同士が衝突。敵のアタッカーたちは、ホロホロに攻撃を集中。これを撤退させた。

 アキラが猛然と拳を振るうが、敵は複数でラン&ショット。決して無理をしない。

「あっあっアンッ!」

 可愛らしい悲鳴をあげて、コリンも魔法攻撃に沈んだ。

「もう2キルもとられたのか!」

 なんとかアキラがカウンターを決めて、こちらが1キルを奪う。しかし今度はモモに魔法攻撃が集まった。アタッカーたちまで足を止めて、魔法を撃ってくる。こちらもチラリと見たのだが、攻撃方法が丁寧である。撃つべき射手が撃って、翻弄する役が駆け回る。役割分担が、実によく出来ていた。

 私とベルキラも前線に到着。必死にポイントの奪還をねらうが、良い攻撃を当てても魔法攻撃により邪魔をされて、追撃がままならない。

 そしてコリンが前線に復帰すると、ふたたびこれを狙ってくるということで、我々は主導権を取ることなく6対3で敗れてしまった………。

御来場いただき、まことにありがとうございます。お気に召していただけましたら、ブックマーク登録、ポイント評価、感想などお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ