私だけの火の玉を作る
ではまず、メラメラと燃える炎と青白く噴き出す炎。この違いから検証してみる。
「まずは燃え盛る炎からだよ」
「ドンと来い!」
呪文を詠唱。標準装備のダイスケ君に、思い切って炎の柱を浴びせてみる。ぐぐっと減る体力値。そして尽きる炎。
ダイスケ君は、ウムと納得顔。
「なかなか良い攻撃でした。効きましたよ」
上位レベルで標準装備、しかも撃たれ強いドワーフ相手にこれだけの成果、というくらいな数値は出した。
「だけどマミヤさん。この炎なら、周囲が燃え盛って逃げ場が無いとか、真っ黒な煙を見せた方が怖さを感じるかな?」
「フム、周囲を燃やす訳にはいかないだろうから、煙をイメージしてみようか?」
フィー先生に回復魔法を施され、ダイスケ君復活。私も空になった魔力を時間経過で回復させる。
「ではダイスケ君、もう一度」
今度は煙を添付したイメージで、視界に影響が出るような炎の柱だ。
ダイスケ君の巨体が炎と煙に包まれた。正直に言うと、私の側からも視認できないくらいの、炎と煙である。しかしその効果は………?
「お?」
「さっきよりも減ってますか?」
目に見える効果だ。
最初の炎はダイスケ君の体力を、三割近く削った。しかし今回は、三割を越えている。三割二分といったところか?
「浴びた側としては、どんな感じだったろう?」
ダイスケ君に訊いてみる。
「やっぱり視覚効果ですかね? ヤラレタ感が高かった気がします。それに煙のせいで視界を奪われて、それも不快につながったのかな?」
思いがけない実験で、思いがけない結果を得てしまった。実験というものには副産物が付き物だとは言うが、自分で得てみるとなかなか嬉しいものである。
では、本命の実験だ。
今度はガスバーナーのように、青白い炎をイメージしてみる。そう、プロパンガスからホースが伸びてノズルの調整でオレンジ色から青白い炎へ変わる、あの炎だ。
呪文を詠唱し、炎を絞り込むイメージで………。果たして炎は派手さは無いものの、青白いものへ変化した。ただし射程距離は短く、半分ほどになっていた。
「いくぞ、ダイスケ君!」
「どすこい!」
青白い炎を受けとめてくれるダイスケ君だが………。
「ぐあぁぁっ!」
演出として苦悶の声がもれる! そして体力値がゴリゴリと削られる。
効果あり! それも素晴らしい効果だ!
ダイスケ君の体力は、四割近く削られた。絶大な効果と言えよう。上位レベルのドワーフで、この結果だ。同じレベルの妖精や人間種などでは、ほぼイチコロなのではないか?
「いやぁ、効いた効いた! ってか、おっかないおっかない!」
ダイスケ君の一声だ。
やはり精神的なストレスやプレッシャーが、効果を増幅しているようだ。
「………………………………」
シャドウが何か言いたそうにしている。
「マミヤさん、今の炎は何かこう………絞ったようなイメージに見えましたが………」
「うん、そうだね。炎の出口というか噴出口を絞ったような、そんなイメージかな?」
「だとしたら今度は、炎その物を絞るというか、圧縮するというか。そんなイメージは、どうでしょう?」
「まるで拳銃の弾だね」
と言ったところで、ハッと気づく。
アキラの水魔法でもできたのだ。私の火炎系魔法で、できない理由が無い。
「できませんかね?」
シャドウが訊いてくる。
「試す価値は、ありそうだね」
私は答えた。
「そして、撃たれるのは俺ね」
ダイスケ君は笑った。
まったく、気さくな男だ。
ということで、さらに実験である。
呪文詠唱。
長く伸びる炎の柱を、小さく小さく圧縮して………。
「………………………………」
「どうしました、マミヤさん?」
「いや、炎の柱の圧縮は、難しいみたいだ」
失敗である。
アキラのような必殺の飛び道具を、手に入れられると思ったのだが………。
「俺は火炎系の魔法は知らないけど」
と、これはダイスケ君。
「さっきの火炎放射よりも、火の玉の方が圧縮しやすいんじゃないかな?」
………………?
火の玉?
「………………それだっ!」
というか、何故いままで気がつかなかった、私!
ということで、またもや呪文詠唱。今度は火の玉だ。これを圧縮して、圧縮して………。うん、これはやりやすい。
小さくなった火の玉を、弾き出すように………射出っ!
ステッキの飾り玉が、跳ね上がる。心地よい反動だ。そして一〇メートルほど離れたダイスケ君に、命中!
「ギャッ!」
演出の悲鳴だ。
さすがのタフガイも、体力値が半分になっている。しかも私の魔力は、火の玉一個分しか消耗していない。
「これはいいぞ………」
大発見だ。
そしていつもの火の玉よりも、はるかに効果と命中率が高い。
だがしかし、だ。
この程度の魔法、カラフルワンダーならば、とうの昔に通り越しているだろう。
それだけではない。
こんな技を使う連中に出くわしたら、たぬきの八畳敷も突破されるに違いない。
対魔法防御。
こちらの研究も、力を入れなくては。
攻撃力が上がれば、防御を考えなくてはならない。
まったく、いたちごっこである。
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