私、魔法を考える
イメージが大切ですかと、陸奥屋一乃組でシャドウが唸った。シャルローネとの対談で得た情報を、伝えた反応である。
「面白い発見ですね。さすがカラフルワンダーです」
「そのカラフルワンダーと引き分けたんですから、さすが陸奥屋一乃組と、私は思いますけどね」
「いえ、年末のアレは凶器攻撃に闇討ち同然の奇襲戦法。それだけ駆使しての引き分けですから、ウチの負けと同じです」
「またまた、御謙遜を」
私がフォローすると、シャドウは静かに首を横に振った。
「マミヤさんはそうおっしゃいますが、シャルローネさんの言葉を授かって感心している俺。それが現実です」
「ではシャドウ、イメージを重視するのが良策と知って、君はこれからどんな魔法を使うんだい?」
そうですねと、マヨウンジャーのメンバーを見渡すジャック。
「ベルキラさん、ちょっと前へ」
低いレベルとは言え我がメンバーは、すべからく魔法を使える。その中でも魔法下手な、ベルキラが指名された。
「あそこに藁人形がある。あれに向かって、目潰しの砂を撃ってくれ」
言われた通り、ベルキラは目潰しのような砂を、パッとまいた。あまりダメージは見込めそうにない。目潰しの砂なのだから、当然だ。
シャドウは言う。
「今度はパンチを叩きつけるような、そんなイメージで打ち込んでください。………そう、砂をひとまとめにして、ばらまくのではなく叩き込むようにです」
ドン! という重たいパンチのように、砂の効果が変わる。これならばダメージも見込めそうだ。
「どうですか、ベルキラ?」
「………………………………」
彼女は目を丸くしていた。
「いまのは藁人形の顔面をねらいましたが、もしもこれが現実世界でボディをねらったら?」
「すごいダメージになりそうですね」
答えたのは、アキラだ。
「まだまだ、ベルキラの魔法はこんなものじゃない」
次は礫の魔法だ。
「石槍のように尖った石をイメージして………その石は遺跡から発掘されたもののように………ナイフのような切れ味の石だ………」
それを一直線に飛ばすという。
ベルキラの礫が矢のように飛び、藁人形に刺さった。いや、正しく言うなら、貫通して道場の壁に食い込んでいる。
藁人形を確認した。鋭利な刃物で突いたような跡が残っている。
ベルキラのスキルが追加された。砂弾と石の刃だ。
「もしかしたら、ボクにも何かできるんじゃ………」
アキラが前に出た。
シャドウは耳打ちをする。アキラはうなずいて、藁人形の前に立つ。
そしてこちらも、小さく頼りない目潰しの水を放つ。
だがこれも、藁人形を貫通した。いや本当のことを言うなら、アキラが水を放つところなど、肉眼では確認できなかった。それくらい速い水滴だったのだ。
「すごいねぇ、まるでピストルの弾みたい」
ホロホロも感心していた。
「と、なると。マスターの火の玉も、イメージをしやすいんじゃないのかな?」
「今度は私かい?」
フムと、ひとつ考える。同じようなことをやっても芸が無い。ならばここは………。
以前探索の時、ゴブリンにステッキの先の火の玉を近づけたことがあった。ゴブリンはそれを嫌がり、ダメージも与えていた。
ならば!
自分の体に火を着ける。そのまま藁人形に突撃。藁人形に抱きつき、炎を燃え移らせた。
「何やってんのよ、アンタっ! バカじゃないのっ! アキラ、水! 水!」
「心配いらないぞ、コリン。このゲームにはフレンドリーアタックは存在しない。私にダメージは無い」
「見てる側がダメージ負うわよっ!」
「さすがマミヤさん、コリンに心配されるとは」
「すごいだろ、シャドウ?」
「アンタら本っ当にバカよっ!」
だがしかし、私の自爆攻撃のおかげで、コリンにもひと技生まれる。
「ね、コリン。雷撃魔法を自分にかけてみて?」
「なによ、それ?」
「それで放電しないように、体を雷を鎧で包んでるイメージで………」
「こ、こうかしら?」
なんだかんだで、コリンも新しい魔法に興味があるらしく、ホロホロの言いつけを聞いている。
「じゃあベルキラ、斧で攻撃してみて?」
軽く斧を振るうベルキラだが………。
バチンと音がして、ベルキラの方が吹っ飛んだ。目を白黒させている。
「思った通り。コリンに触れると痛い目を見ることになるね」
まさしく、雷撃のカウンター攻撃である。
魔法攻撃が貧弱に見えたメンバーが、ちょっとした工夫で強くなっていく。その光景に、シャドウの方が驚きを隠せない様子だった。
「これは俺も、ウカウカしてられませんね」
巨大な杖を振り、火の玉を放つ。その火の玉は、野球の変化球のようにカーブした。
「マミヤさん、この変化球の練習をしましょうか?」
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