表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
124/506

私、決着する。


 人数の上では敵六に対しこちらは五。一応不利ではある。しかしあちらのアイという娘は戦闘に参加しない。ということで数は同数。しかしこちらには、いつでも召喚できるたぬきがいる。数と奇策の上で有利だ。

 おそらくマジックマッシュルームも、警戒しているだろう。にらみ合いの膠着状態になるだろう。

 と思ったが。

「魔法、来ますっ!」

 アキラだ。確かに呪文の詠唱を始めている。それも長距離魔法の使い手がだ。

 ちょっと呆れてしまう。君たちは敵が手も足も届かない場所から、魔法を大量にブッ放してこそモノになるのだろうが。それがこの至近距離。少し駆ければ打撃の届く距離。魔法ならばさらに、だ。

 つまり彼らは………。

「魔法は三人からよ! マミヤ、やってやりなさいっ!」

 つまり彼らは、魔法の使い方を理解していない。もっとストレートに言うならば、考え無しに魔法を使っているということだ。

 私も新しい魔法の準備をする。あえて描写はしていなかったが、新しい魔法を使えるようになった者はすべて、魔法屋で呪文を購入してあった。

 さあ、魔法が飛んで来たぞ! まずはよく見ろ。そして自分に届く順番を、きっちり見極めるんだ。

 敵からの魔法を、ひとつひとつ丁寧にかわしてゆく。その上でジリジリと敵陣に近づいてゆく。

 が、アキラが私の前に出た。水の鞭を振るう。

 敵の範囲魔法使いが、二人足止めされた。

 いつの間に近づいてきたのか。正直、肝の冷える思いだった。しかし冷静を装いなおも足を進めてゆく。

 範囲魔法使いたちは、さらにホロホロの矢を受ける。そこへコリンとモモが突入した。槍技、双龍尾。さらにダブルのモーニングスターが乱れ撃ち。コリンの電撃魔法から、アキラの拳がうなる。

 範囲魔法使いたちは、完全に足止めされていた。ここまで御膳立てされて、失敗しましたとは言えない。私も慎重に、かつ大胆に敵へと近づいた。

 そして射程距離。

「我が声に応えすべてを焼き尽くす力を与えたまえ」

 詠唱は、残りあと少し。

(いで)よ、(ほむら)の柱っ!」

 ステッキの玉飾りから炎が吹き出る。左端の敵へと炎が伸びた。顔面からボディ、そして左脚を燃やす。

 敵の全身が燃え上がった。体力が削られる。

 私はステッキを真ん中の敵に向けた。こちらも燃え上がる。しかしこれで、炎の柱は焼失した。

「バカが! 調子に乗ったな!」

 残った敵が、私をねらう。

 しかし慌てることはない。私は八畳敷をかぶった。ステルス効果のある、隠れ蓑だ。突如姿を消した私に、敵も混乱している。その隙に背後へ回り込む。八畳敷を解いて、指環を外した。

「いくぞ、たぬき!」

「合点だーーっ!」

 二人掛かりで殴りつけてやる。

 いまだにポイント差は一点。終盤戦で私たちは、まだキルを獲得していない。が、アキラの拳で範囲魔法使いを一人退治。ここで同点。さらにモモとコリンで、もう一人。

 ついに逆転だ。

 私とたぬきは殴りつけた敵に大ダメージを与える。だが炎の柱で燃やした敵がカムバック。私を痛めつけてくれた。

 最早これまでか………。たぬきを呼び戻し、八畳敷でダメージを軽減するが、私の体力は削られる一方だ。

「マスター! 受け取ってくださいっ!」

 モモの声がした。

 体力がよみがえる。

 ヒーラーの回復魔法だ。

 これで私は、まだ少し闘える!

 しかしここでまた、意外な展開が。残る長距離魔法使いたちに、アキラたちが襲いかかったのだ。

 キル、キル、そしてまたキル。ポイント差は広がるばかりだ。

 ならば私がねらうのは、ただ一人である。

 私はアイの前に立った。

「………残る試合時間は、あと少しだ」

 アイに語りかける。もう、仲間の復活は見込めない。

「どうする?」

 アイは少女らしくない形で、顔を醜く歪める。

「なによ! なによアンタたちっ! 格下のクセに私たちをボコるなんて、ありえないわよ! ひょっとしてアンタら、不正してんじゃないのっ!」

「他人を不正と疑うのは、自分が不正をはたらいているからだ。何故なら不正をしない人間には、不正をしようという発想が無い。不正をする者には、不正をするという発想があるからだ。ならば貴女は、どちらですか?」

「なに訳わからないこと言ってんのよ! もしかして勝者の余裕? すごく偉いわね、たかがゲームごときで! あぁ、偉い偉い!」

 さまざまな感情が、私の胸を去来した。いや、私などどうでもいい。心の処理の方法は、すでに心得ている。むしろ娘たちだ。

 コリン、アキラ、モモ。いずれも悲痛な面持ちである。ケアしてやらなければならないだろう。

 だがしかし、私たちにはやるべき仕事がある。

「覚悟はできてるな?」

「勝手にしなさいよ! どうせ新しいゲームを落とせばいいだけの話なんだか………」

 みなまで言わせない。

 私たちは、持てる技のすべてを尽くして、アイを葬った。

 終戦の銅鑼が鳴る。

 闘技場は歓声に包まれた。

 だが私の胸には、虚しさだけが吹き抜けていた。

御来場いただき、まことにありがとうございました。

お気に召していただけましたら、ブックマーク登録、ポイント評価をお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ