私たち、流れを掴む
長距離魔法のねらいは、再びホロホロに。というかコリンが襲われていた間に、ホロホロは私たちとの距離をかなり詰めていた。
「散開散開ーーっ! 敵は私をねらっているよーーっ!」
その言葉に従う。ホロホロも不規則運動で近づいてきた。
そして敵の範囲魔法使いは、二人目も復活。猛然と駆けてくる。
駆けてくるということは、前衛の私たちを標的にしているということ。
「ここは私の出番だな!」
二人の敵を引き付けて、範囲魔法のファイヤー・ボールを御馳走してやろう。
「マスター、気をつけて!」
私たちは一度、ホロホロから離れるように散開。そのホロホロも小柄な体と機動力を活かし、被弾を避けている。
そして二人の敵は、私を追いかけてきた!
頃合いを見計らい、まずはファイヤー・ボールで足止め。それから八畳敷で二人を捕まえる。そこへたぬきの置き土産。密閉したガス室に、残りわずかな魔力を使い、火の玉を放り込む。私の必殺コンボだ。解放した敵は大ダメージ。しかしまだ体力が残っている辺り、やはり上位ギルドの証だ。
しかしここで敵が、悪手を打った。長距離魔法のねらいが、ベルキラ・アキラのコンビとホロホロ。さらには私と、ねらいがバラバラになったのだ。
当初の標的ホロホロに、なかなか魔法が当たらない。そしてベルキラたちの突撃が脅威である。しかし、二人同時にダメージを負わせた私も見逃せない。という理由で、動きが変わったのだろう。
いや、理由はどうでもいい。問題は………。
「敵の動きが乱れたよ! 突撃、突撃っ!」
ここが勝機ということだ。
私はステッキを振るい、目の前の一人にとどめを刺す。敵は意外なほど、肉弾戦には弱みをみせた。これで4対3。ポイント差を縮める。そしてもう一人は………。
ホロホロの矢が貫いた。風魔法も付加した一射だ。かなり効いている。
「マスター、お先にどうぞ! 本陣に向かってください!」
復活したモモが走ってきた。同点の敵はモモが決めてくれるようだ。モーニングスターを提げている。
「まかせたぞ、モモ!」
私は走り出す。
この頃には長距離魔法が、ベルキラとアキラに集中。ホロホロの弓矢で援護されながら、どうにか回避に成功している。
コリンも復活した。槍を片手に駆けてくる。
同点のポイントが入った。モモが敵を仕留めたようだ。
しかしベルキラが直撃を食らう。さらに連打。威力倍加の不正は初級魔法でも、体力をゴッソリ削ってくれる。結果、ベルキラは撤退。またもやポイント差がつく。
しかも前衛は、アキラ一人という状態。好機が危機に早変わりだ。
「アキラ! マスターのところまでさがって! さがって!」
ホロホロの声だ。
そうだ。ベルキラが撤退した今、ポイントマン兼トリックスターのアキラを失う訳にはいかないのだ。
敵の範囲魔法術者も、間もなく一人復活する。
ではアキラの退却を楽にするために………。
私は指環を抜いた
「頼むぞ、たぬき!」
「お任せあれです!」
長距離魔法術者の前に、投げつけた。
ぼわんという煙とともに、突如現れたのが武装した女の子。これには敵も驚いたようだ。攻撃の手が止まる。
「隙ありっ!」
八角棒で三人を撃つ。そして目指すは、本丸ともいうべきアイという娘!
「あぁっ! 姫っ!」
「くそっ! 行かせるなっ!」
「魔法っ、魔法だっ!」
振り向くが、もう遅い。たぬきの一撃がアイをとらえた。
「まてっ! ここで魔法を撃ったら、姫に当たる!」
ということで、たぬきはさらに一撃。
「こうなったら、肉弾戦だ!」
チームメイト同士の通話を忘れているのか、肉声が丸聞こえだ。というか、君たち。このゲームはフレンドリーアタックが無いのだよ? 魔法を撃っても、『姫w』は無事なんだ。つーか、そこまで大事か? こんな小娘が。
まあ、他人の価値観にケチをつけるのは、私の信条に反する。それにそのおかしな価値観のおかげで、彼らの注意はたぬきに集中。アキラは無事に退却。モモが合流、コリンも間もなく追いつく、と我々には良いことづくめなのだが………。
どうやら敵の範囲魔法術者も、一人復活したようで、これもまたたぬきを追い回している。たぬきはアイへの攻撃を中断して、撹乱に専念していた。
「もう充分じゃないかな、マスター?」
「うむ、たぬき! 戻って来い!」
「わかりました、御主人様!」
たぬきは指環になって、私の元へ戻って来た。
ベルキラも間もなく復活する。前衛は、アキラ、私、モモ。追いついたコリンの四人。援護の位置にホロホロ。
敵はほぼ密集。現在範囲魔法術者が復活中で、六人が揃うところだ。
ポイント差は、一点。
時間を見ると、そろそろ終盤戦というところだ。
そして今、流れは私たちマヨウンジャーにある!
御来場いただき、まことにありがとうございました。
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