表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
109/506

私、奴の足跡を見る


 ということで、対魔法革防具を作ってみた。防具作りはすでにお手の物となっていた、ベルキラがまず革防具をひとつ分解する。

 その間に私はお札を六枚作製。革防具の中へ忍び込ませて、とりあえず完成。

「アタシが試してみたいわね」

 実験にはコリンが名乗りをあげた。本当はマッコイさんにお願いしようと思っていたのだが、本人が「アタシも魔法を弾く感覚って、経験してみたいのよ」と、ずいぶん乗り気だったからだ。

「それでは私の火の玉を弾いてもらおうか」

「ドンと来いよ!」

 見た目にもわかりやすいように、効果(エフェクト)をオンにしておく。その上で火の玉をぶつけてみる。

 で、その結果だが?

 アフロヘアで、お姫さまドレスもコゲコゲのデコが完成した。

「………なによ、コレ?」

 黒い煙と一緒に、不満の言葉を吐き出す。

「うむ、どうやら失敗のようだな」

「そうじゃなくて! アタシがコゲるのは仕方ないとしても、革防具が無傷ってどーゆーことよっ!」

「………コリン」

 細い肩を、ベルキラがそっと叩く。

「すまなかった、失敗も失敗。大失敗のようだ」

「そ、それは仕方ないって分かってるわよ」

「そしてこの効果(エフェクト)に関しては、運営の悪ふざけだと思う」

 ベルキラの肩が震えていた。

「………いいわよ、ベルキラ。笑いなさい」

「いや………笑っては失礼………失礼………」

 だが、防波堤はもたず、決壊してしまった。

「と、とりあえずマスター………」

 ホロホロも笑いをこらえている。

「対魔法革防具が作れるかどうか、調べてくれるかな?」

「うむ、早急に対処しなくては、みんなの腹筋がもたないだろうからな」

 ということで、速やかに図書館へ。


 図書館の来客数は、あまり伸びていなかった。おそらく利用者たちは年末のうちに、サービスを受ける資金を使い果たしたのだろう。

 まあ、そんなことはどうでもよろしい。私が利用するのは蔵書の方であって、大人向けサービスではないのだ。

 いつものように司書にリクエストを出して、いつものように書物を受け取る。そしてこれまたいつものように、無人の室内で知識を得るのである。

「なるほどね、これは失敗するわけだ………」

 答えは簡単に出た。

 革防具に挟むお札は、三枚必要なのだ。私たちは一枚しか挟んでいない。

 それがどのような理屈で三枚に増やされているのか、そこまでは書かれていない。もしかしたら、腕を二本自由にするために、お札が二枚余計に必要なのかもしれない。ただ今回の場合は、そういうものなのか、と納得するのが一番なのだろう。

 そしてこれまたいつものように、貸出履歴に目を通し、陸奥屋本店の御剣かなめの名前を………。

 ………他にも名前がある。

 魔道繚乱カラフルワンダー、シャルローネ。

「………………………………」

 奴か。

 奴もまた対魔法革防具の知識を得たのか。

 よもやと思い、対魔法楯の書物………魔法屋のオヤジに薦められて目を通した一冊も、チェックしてみる。そちらの貸出履歴にも、シャルローネの名前はあった。

「………確か奴らは、魔法特化ギルド」

 ならば対魔法研究に余念が無いのも、理解できる。もちろん今すぐに我々が、カラフルワンダーに挑むものではない。いや、その日が訪れるかどうか、それすら怪しい。

 しかし、奴らが対魔法兵器に対する知識を持っているか否か。その違いは天と地ほどに差が出てくるだろう。

 いや、むしろ鬼に金棒。その存在は脅威と呼べるほどである。

「………だがしかし、それならもっと上にランクされてても、いいようなものなのだが」

 何故私たちのような、底辺ギルドの目に届くような場所にいるのか?

「………まさか魔法の研究にかまけて、レベルアップを忘れてるんじゃないだろうな?」

 ゲームというものは、楽しみ方など人それぞれ。しかし私は、ランクが上がったり達成感のあるという、わかりやすい目的は理解できるのだが、先にあげた通好みな楽しみ方は理解できない。

 マジック・マニア。

 ついついそんな言葉を造ってしまう。

「まさかね………」

 独り言で自分の思いつきを否定してはみたが、どうにも心の中から捨て難い。この思いつき、捨ててしまうには何かが尾を引いた。


 ともあれ、革防具の改造方法は手に入れたのだ。早速帰って仲間たちを、腹筋地獄から救い出さなくてはならない。

 ………………………………。

「ということで、対魔法革防具が六体完成しました!」

 ベルキラ会心の作である。

 もちろん試験結果も上々。その出来栄えには、みんな満足していた。

 が。私は奴らのことを知らせてやらなければならない。

 カラフルワンダー。

 あの連中もまた、対魔法兵器の研究をしていると………。

御来場いただき、まことにありがとうございました。

お気に召していただけましたら、ブックマーク登録、ポイント評価してくださると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ