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私、ジャックにダメ出しをくらう


 まずは、敵の魔法を真正面から楯で受ける練習。これが正しくできていないと、他の技に移るにも移りようが無いはずだ。この考え方は、陸奥屋一乃組への出稽古で身につけたものだ。

 目的までの道のりを数段階に分け、各段階を確実にクリアして次に進む。古武道というのは教育カリキュラムであって、実戦技ではないとジャックも言っていた。だからこの練習方法は間違っていない。おぼろ気ながらも私は、そのように感じていた。

 ということで。

 まずは楯をかまえて、そこに魔法を撃ち込んでもらう。私をのぞくすべてのメンバーから、一人ずつである。これは土、水、雷、風と様々な種類の魔法になれるためだ。

 私の楯は脚のある立て掛け式の長方形。敵の魔法のレベルが上がるとどうなるかわからないが、とりあえず同じレベルの魔法なら脚を出して立て掛けておくだけで、完璧にさばくことができた。しかしこれは練習。そんな手抜きはせずに、きっちりと構えをとる。

 ベルキラ、アキラは物量をともなう魔法のはずだが、まったく圧力や抵抗を感じることが無い。ホロホロの風魔法も然り。コリンの雷魔法など、音と光しか感じなかった。ただし、最後の締めくくりとして撃ち込まれる、モモのモーニングスター。これにはズッシリとした重みがあった。

 そのようにして全員が、自分以外の魔法を受けるのが第一段階。

 第二段階は、魔法を同じ場所に撃ち込んでもらうのだが、スタートの時点で楯は下にさげている。魔法が発射されてから、タイミングよく構えの体勢に入り、これを受け止める練習だ。タイミングよく、というのが肝である。

「はい、モモさん。少し水を浴びましたね」

「ううう………これはハードルが高いですぅ~~………」

 モモがアキラの水弾を受け損なう。

 これはモモが鈍いというのでは無い。私にも受け損ないはあったし、他の楯メンバーも全員受け損ないは発生した。

 もしかしたら、楯メンバー全員がどんくさいという最悪な考え方もできるかもしれないが、「そんなことがありませんように」と神に祈るしかない我が身である。まあ、タイミングを合わせるというのは、それだけ難しいということだ。

「少し間合いが近すぎるんじゃないのかな? しっかり魔法の発射を見届けて、そう………野球のキャッチボールのような感覚で。その方が上手くいくと思いますよ?」

 なるほど、言われてみれば。魔法を撃ってもらう、という頭があったので、間合いが剣や槍のものになっている。普通、魔法はもっと距離をとって放つものだ。

 で、距離をとってみるとこの第二段階は、思いのほか上手く行った。第二段階修了と言って良いだろう。

 第三段階は横からの攻撃を、第四段階は上からの攻撃を受け止めるものとした。


「なるほど、それが対魔法楯ですか」

 陸奥屋一乃組への出稽古。私たちが楯を装備して出向くと、シャドウが関心をもってくれた。

「初級のものですね?」

「うん、だから上級者の魔法相手に、どれだけ効果があるのかは未知数なんだ」

「そこは押さえておきたい数字ですね」

 シャドウの父と思われるジャックが、楯の稽古はしているかと訊いてきた。ホロホロが稽古の段階を説明する。ジャックは肯定も否定もせず、うなずくだけだった。

「ということは、マミヤさん。基礎基本は踏んだということになりますね」

「昨日今日の稽古です。まだまだ練度は低いです」

「そうですか」

 ちょっとだけ残念そうに、シャドウは目を伏せた。いつの間にか引き寄せていた魔法の杖を、そっと傍らに戻す。やはり、試す気満々だったのだ。

 ジャックは言う。

「それじゃあいつもの稽古を、ちょっと見せてもらえるかな?」

「えぇ、もちろんです。足りない部分があったら、教えてくださいね」

 ジャック担当のホロホロが返した。

 ということで、私たちは第四段階までの稽古を披露した。

「どうでしたか、ジャックさん」

 ホロホロが問うと、ジャックは珍しく渋い顔をした。

「まず、実戦投入の段階には無いね。もうしばらく稽古が必要みたいだ」

「他には?」

 ホロホロが食いつく。

「攻撃力………具体的に言うと、ホロホロとマミヤさんが楯を持っているおかげで、弓矢とステッキ打撃の攻撃力が落ちるだろうね。で、ホロホロの楯は立て掛け式のようだけど、これだと立て掛けた場所に居着いてしまうかな? 機動力が著しく奪われるけど、何か対策は?」

 していない。

「片手武器のベルキラさんとモモさんが、楯を持つのは正解だと思う。アキラとコリンが楯を持たないのも正解。問題は、マミヤさんとホロホロだ」

 シャドウが手を挙げた。意見があるようだ。

「ホロホロさんの機動力に支障があるのなら、固定砲台のような魔法を………そう、広範囲なものか長距離でも命中させるような、そんなものを考えてみてはどうだろうか?」

「それで事態が改善できるのかな、シャドウ」

「………………………………」

 それよりも面白い方法がる、とジャックは言った。

「ベルキラ、この楯はどういう構造になっているのかな?」

「板を二枚張り合わせてますが、その間にマミヤさんのお札が挟まってます」

「ならば君たちの革防具、一度ほどいてお札を忍ばせてはどうだい?」

 それならば、全員両手が空く。アキラもコリンも装備できるし、敵から対魔法装備しているのが分かりにくい。

 もちろん開発に成功すはれば、の話なのだが。

御来場いただき、まことにありがとうございました。

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