私たち、楯で悩む
日曜日の更新はタイトルで「ボルサリーノ」としておきながら、本編では「ボリサリーノ」としておりました。指をさして笑って下さい。
私たちの楯は丸楯だが、ホロホロの楯は長方形に変更。そして、脚をつけて立て掛けることができるよう、改造をほどこした。
これによりホロホロは、だだっ広い闘技場においても遮蔽物を確保したことになり、より安全に弓を射ることが可能になった。
ということで、いよいよ迷走戦隊マヨウンジャーによる、楯装備ボテクリこかし編の開戦である。
闘技場にて………。
「あーーっ! マミヤーーっ!」
「マスターっ、そんなに簡単に被弾しないでくださいっ!」
「仕方ないだろっ! 楯には馴れていないんだっ!」
「あっはっはっ、よい子のみんなーーっ♪ ホロホロお姉さんは、そろそろ敵に囲まれちゃうぞーーっ♪」
「のんきなこと言ってないでっ! いま行きますから、ホロホロさんっ!」
「おぉ~~………今度はアキラ君に、魔法攻撃が集中しちゃいましたねぇ~~」
「なんのアキラなら………って、広範囲魔法を撃たれたな………足が止まったところに、ワンツーっ! 返しの魔法をもう一丁かよっ!」
………我々マヨウンジャーの基本的な考え方は、馴れないハイスペック武器よりも、なれたロースペック武器、である。
つまりどういうことかというと、私たちは楯の稽古もろくにせず、闘技場へ突撃してしまったということだ。
人生に失敗は付き物だ。失敗の原因がマヌケであればあるほど、失敗というものはついてまわる。大切なのは、おなじ過ちを繰り返さないことだ。
楯装備初陣、迷走戦隊マヨウンジャー。十二対四で敗戦。
「うん! 清々しいまでの負けっぷりだったね♪」
さすがの軍師もお手上げだ。
「いやぁ、稽古もしてない新装備で、いきなり実戦なんてするものではないなぁ」
私も笑っちゃうしかない。
「敗因がわかりましたから、すみやかに改善しましょう、マスター! 特訓です!」
そしてアキラは、変に生き生きとしていた。
我々の稽古不足というならば、楯の使い方をあまり理解していなかった、という点に尽きる。より具体的に言うならば、『楯で敵の攻撃を受け損なう』という事態を、認識していなかったということになる。
さらに簡単に言うと、楯の使い方が下手だったのだ。
「特訓するという方針っていうのはいいけど、具体的にどんな練習をしよっか?」
「それに関しては、私から提案を。………闘技場のファイトでは、どうやら敵の魔法を受け損なう、というのが多かったような気がする。もしかするとこの対魔法楯、真正面やど真ん中で受けないと、効力を発揮しないのではと考えるんだが」
「………確かに。実験の時にはボクも、楯の忠心をねらって水弾を撃ったような」
アキラが言うと、ベルキラもうなずく。
「私の砂かけ魔法も広く砂をまいていたが、基本的には楯をねらって撃ったものだからな」
もちろん私の火の玉も、楯の忠心をねらっていた。
つまり、ねらわれた部位を楯で守った状態なら、効果的なのでは? という仮説に至った。
「そういえばマミヤ。アンタ、範囲魔法をマッコイさんにぶつけたとき、楯をねらってなかったかしら?」
「む、そう言われれば………」
「それじゃあ、もう一度実験が必要じゃない? マッコイさんの足元に範囲魔法を撃って、燃えるか燃えないか? もしも燃えたら、本当に楯で敵の魔法を受けないと、対魔法楯の能力は発揮できないってことになるわよ?」
ということで、我らが藁人形マッコイさんのカムバックだ。
メンバーが見守る中、私は呪文を詠唱。杖の先にファイヤーボールを形成する。
「………魔法使いマミヤが命ずる! いでよ、ファイヤーボール!」
バスケットボール大のファイヤーボールを、マッコイさんの足元に叩きつけた。藁人形を中心に、半径三メートルほどの範囲で炎が上がった。あっという間に、マッコイさんは燃え上がる。アキラの消火活動も、間に合わないほどだ。
………………………………。
「………燃えましたね」
「燃えちゃいましたねぇ~~♪」
とりあえず、モモの回復魔法でマッコイは復活したが、対魔法楯には弱点があると判明した。
敵の魔法をしっかり受けないと、効果が無い。
より具体的に言うと、足元が弱点なのだ。
ちなみに、ホロホロの立て掛け式でマッコイさんを守り、ファイヤーボールを撃ってみた。私たちの予想通り、こちらの楯は藁人形を守り切ったのだ。
「ならばベルキラ、楯の形を縦長に作り替えるか?」
「う~~ん………」
果してそれが正解なのかどうか? ベルキラは判断しかねているようだ。
「私は反対かなぁ?」
「ホロホロ………」
なんと使っている張本人が、反対の声をあげた。
「正直言うと、立て掛け式の楯は移動に邪魔なところがあるんだよね。これは私がチビだから、だけじゃなくて、みんなにも同じことが言えると思うの」
「私たちの戦法は、軽快快速を旨としたものが多かったが、立て掛け式にしてしまうとその障害となる、か」
ならば、どうするか?
アイデアは、ホロホロの口から出た。
「八畳敷は持ってるけど、立て掛け式を増やすなら、マスターがいいと思うよ? 私と同じ、長距離攻撃ができるから」
つまりガンマンやスナイパーが、物陰に隠れて射撃するのとおなじである。
それを踏まえた上で、特訓開始である。
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