【第5話】エレクト
町から黒い煙が上がっている、俺は走る速度をさらに上げた。
町に到着した、町の入り口には救助隊が既に到着していた。
救助隊とは災害が起きた際に魔法や道具を使い、救助活動を行う仕事である。
イキリ術師の使う魔法は戦闘に特化しているが、救助隊の使う魔法は人を助けることに特化している。
どうやら大規模な火災が起きたようだった、町は火に囲まれ、中には逃げ遅れた人が多数見られた。
「…何か妙だ…」
ハットリはあることに気づく。
さっきから救助隊が消火活動を一切しようとしない。
何故だ?水属性の魔法を使える人間がいないのか?
…いや違う。
答えは救助隊の視線の先にあった。
1人の男が救助隊の前方にたたずんでいた、男は手に炎を纏い、その目は殺意に満ちている。
恐らくこいつがこの火災の原因、こいつが邪魔で消火ができないんだ。
俺は消火隊の横に立った。
「俺があいつの注意を引きます、その間に消火をしてください。」
俺はそう言い、火の男に向かって歩き出した。
「何を言っている?!やめろ!危険だ!」
消火隊の男はそう言ったが、俺は歩みを止めなかった、火の男との距離が縮まっていく。
「俺に向かってくるとは命知らずだな、お前何者だ?」
火の男は言った。
「俺はハットリ、いつか最強のイキリ術師になる男だ。」
俺がそう言うと、男はニヤリと笑った。
「お前、矛盾してるぜハットリ。」
「どういうことだ?」
「死んだら夢は叶えられねぇってことだ。」
男は手を前に突き出した、何が起こるのかは、すぐにわかった。
俺は横に飛び出した、次の瞬間、男の手から炎が噴出された。
少しでも反応が遅れていたら焼き殺されていたかもしれない。
「まさか口だけじゃねえよな?もっと楽しませろよ!!ハットリィッ!!」
男はまた、こちらに手のひらを向けた。
一回目の攻撃をかろうじて回避した俺は、うつ伏せの状態で地面に倒れ込んでいた。
「その体勢じゃ、もう躱せねえだろ!?」
また、俺の方に炎が飛んでくる。
「俺は股間にも足が付いてるんだよ!!」
俺はちんこを即座に勃起させ、宙へ飛び上がった。
毎日の特訓『ちんこだけで10kmマラソン』がここで役に立つとは思いもよらなかった。
俺は両足で着地し、また男と向き合う。
「中々やるじゃねえか、だがもうわかったろ?お前は俺には勝てねえよ。」
男は言った。
「…わかっている、俺はお前には勝てないだろう…」
「だったら、もう諦めて死…」
「だが!!それは今まで通りの俺だったらの話だ!!」
今、股間に力が集まっていくのを感じるっ!!後は相手にこの力をぶつけるイメージを思い浮かべるんだ!!
【電勃起(雷)】
俺のちんこから雷撃が放たれた。
「何っ!?」
男は予想外の出来事に身動きが取れずにいた、そして雷撃は男の体に命中した。
「グアアアアアアアアアアアアア!!!」
明らかに効いている、初めて成功した魔法が実戦で役に立っている!!
「クソがッ!!テメェもう許さねえからなッ!!」
こいつまだ動けるのか?!まずいぞ!!
その時だった。
「イキリ術師が来たぞ!!」
背後から民衆の声が聞こえた、どうやら騒ぎを聞きつけたイキリ術師が到着したようだ。
「クソ!!テメェ覚えてろよ!!いつか、ぜってぇブッ殺してやる!!」
男は逃げようとした。
「待て!!お前は何者だ?!」
俺は男に聞いた。
「俺の名はシオザワ・ナイトポップ、テメェを殺す男だッ!!覚えとけ!!」
シオザワは逃げて行った。
「君、大丈夫か?」
イキリ術師が俺に向かって言った。
「大丈夫です、どこも怪我してません。」
俺は答えた。
「そうか、それは良かった、しかし炎を操るリバーズ…一体何者なんだ…」
「あっ、あいつシオザワ・ナイトポップって名前らしいですよ。」
俺はそれから数十分の間、質問攻めに会い解放された。
「やっと家に帰れる…」
「ハットリくん!!」
声のした方向を見るとビィトがいた。
「魔法使えるようになったんだね!すごいよ!」
何だと…ちんこから電撃を放つところをビィトに見られた…?
「実は私、逃げ遅れてて…ハットリくんがいなかったら危なかったかもしれない…ハットリくん!ありがとう!!」
自分の力で人の命を助け、そして感謝される。
今日の一件でハットリのイキリ術師への思いはより一層、強くなった。