フラッシュバック!
どこの学校にも、ヤンチャな人がいると思うが、まさにこの「田辺恵介先輩」もその一人だった。
見た目はイケメンで、黙ってれば何処かの俳優みたいな雰囲気なのだが、「キレやすい」「一年の時上級生をボコボコにした」「何人か妊娠させて停学をくらった」等々、噂に絶えない有名な先輩だった。
「何してたの?」
「あ…あの、バレー部で片付けを…その…あの」
「ふぅ~ん…で、今の話聞いてた?」
私はドキっとした、怒られる?殴られる?ど、どうしょ…
「あ…あの…偶然、偶然聞こえ…て…しまって…その…」
「名前は?」
ひぃ~!今日が私の命日か!!
「み、美樹です!!一年の柳美樹です!!」
静まりかえる体育館に、美樹の大声がこだまする。
「内緒にしといてな。今聞いた事。」
「え!!はっはい!!勿論でござります!!」
「ござります?…ぷっ!!あははは、美樹ちゃんは武士なの(笑)」
美樹は緊張して、「ございます。」を「ござります。」と言ってしまった事に気づいた。
しばらく笑う田辺先輩をみて、ハズかしさと&緊張の気
持ちが入り乱れ、かぁ~っと美樹の顔が赤くなる。
「あぁ~久々に笑ったよ。美樹ちゃんって面白い子だね(笑)じゃあ~美樹ちゃん、お互いに今の事は内緒って事でよろしく。」
そう言って、優しい笑みを浮かべて去って行く、田辺先輩の姿を見送り美樹は、やっと安堵した。
「はぁ…こ…怖かった…。」
しばらく体育館にたたずみ、フッと時計を見ると午後19時に差し掛かる所だった。
「ヤバ!!バスの時間が!!」
慌てて体育館のカギをかけ、職員室にカギを届けてバス停迄ダッシュする。
「はぁ、はぁ、間に合った…これ逃すと又30分待たなきゃ~だったわ!!」
美樹はバスに揺られながら、帰路についた。
「ただいま~」
「お帰り~今日は美樹ちゃんの好きな、ハンバーグ作ったよ~♪」
「本当に?やった~ママの作るハンバーグ美味しいから好き♪」
美樹の母、「柳カオル」は小さい時から料理が好きで、作れるレパートリーも広く、今では週に2回程料理教室を開く程だった。
しかし、美樹にはその遺伝子が受け継がれていない様で、美樹は料理を作る事がはっきり言って、ヘタだった。
「凄く美味しいょ♪ママ♪」
「ありがとう~♪愛情がタップリ入ってるからね♪」「美樹ちゃんも、早く料理覚えないと~未来の旦那様が困っちゃうよ?私がパパと初めて会った時ねぇ、」
「ママごちそうさま~お風呂に入って来るね~」
「あ!!美樹ちゃん~。もぅ~又逃げられちゃった♪」
危ない危ない…ママの長い話に付き合わされる所だった。
「(ザブン!!)フゥ~今日も一日疲れたなぁ~。」
未来の旦那様かぁ…ボンヤリと湯船に浸かり考えていると、「美樹ちゃん面白い子だね(笑)」
フッと頭に田辺先輩の笑顔が思いだされた。
!!イヤイヤイヤ、ダメダメ、女子が告白してるのに、凄く冷たい態度だったし、噂一杯あるし、怖い先輩だし…
でも、以外に…噂程怖くなかったなぁ…それどころか、逆に笑顔で優しかったし…田辺先輩なんで告白断ったのかなぁ…?もう付き合ってる人がいるのかな…?
イヤイヤ~ない・ない・ない、田辺先輩となんて、絶対ない!
忘れよ!!今日の事は忘れよ!!
美樹は、お風呂を上がりすぐにベッドに入って、今日の出来事を忘れるべく、電気を消して目を閉じた。
しかし色々な事が、浮かんでは消え浮かんでは消えと、眠りに落ちたのは朝方の事であった。