~話の種の種の話~
ダイナの胸はどのくらいあるんでしょうね。多分ほぼ筋肉ですね。
ジャーッ、ジャーッ、と、並べられた野菜を順に受け取って洗う。洗われた野菜は、おやっさんがもらってまな板の上へ出される。コルドは左肩を抱えて階段を降りながら、時計のように動く野菜を見ていた。
「ピーマンって、種取るんだよね。」と、サンダーは、特に今さら聞くことでもないことを、ダイナの方をチラリと見て言った。
「そうだよ。」と、ダイナは口だけで答えると、腰をかがめて引き出しから鍋を取り出した。サンダーは、小さく肩を落として、また野菜を洗いにかかった。
テーブルに座ると、三人の姿は上半身しか見えない。おやっさんは、サンダーから渡される野菜を、ざっとまな板の上に並べると、端にあった肉から順に切り始めた。小気味いい音がトントントントンと台所に流れる。三人は、何もしゃべらずに自分の作業をしていた。コルドは順番に三人を見た。
「辛いからね。」
ふと、ダイナがクルリと横を向いて口を開いた。
「ん?何の話?」
「さっきの種の話よ。ピーマン、種食べちゃったことある?」
「ないな。ダイナはあるのか?」
「あるわよ。私、一人で料理すると、ほら、細かいことは気にしない派、だから。」
「大雑把、だな。」
「ダイレクトに言わないでよ。でも、サンダーはしっかり取ってくれるから、助かるわ。」と、ダイナはフフと笑う。
「まぁ、種を食べるなんてこと俺はしたくないからな。」と、サンダーは慌てて洗う野菜に視線を移した。ダイナはより一層フフフと笑う。
「だって、種は次世代を紡ぐものだろ。それを食べるということは、その種が紡ぐべき未来を奪うことになるじゃないか。」と、サンダーが急にクルッとダイナの方を向き、指を指しながら言う。ダイナはとうとうブッと吹きだした。
「そんなこと言って、その種捨ててるじゃないの。」と、ダイナは口に手を当ててかがみ、肩を震わせながら言う。
「え、あ、ま、まあ、食べてないから・・・その、気分の問題だよ。食べたら罪悪感があるというか。」と、サンダーがしどろもどろに言うと、ダイナは急にスッと立ち上がり、腕を組んで、キッと眉間にしわを寄せてサンダーを見、もったいつけて言った。
「イチゴのつぶつぶ、あれ、種だよ。」
「ええええ・・・。」
サンダーは指を指しながら、膝をついて、ひゅーっと腰が低くなっていった。ダイナは、覗くように彼を見下ろして、肩をキュッと上げてクスッと笑った。
「別にあなたが心配しなくても、農家さんが来年の分の種は用意してるわよ。」
「え、農家さんって、都市伝説じゃないの?」
「いや、普通にいるし。いる上に都市じゃないし。」
「欧米でも有名だったりしないの?」
「農家さん世界共通だから。世界に誇るべき日本の伝統芸能とかじゃないから。」
「サムライ!ニンジャ!ノウカサン!」
「だから違うって。」と、ダイナはサンダーのおでこを軽くデコピンした。本人は軽いつもりである。受けた当人は軽い脳震盪を起してグラグラしている。
「それから。」と言って、ダイナは、腰をかがめて、サンダーの手を、そっと握った。ダイナは、彼の指をすっと握り、二人の間に持ち上げた。サンダーは、顔をあげて首をかしげた。
「人に指は向けない!」と、ダイナはその指をぐいっと反らした。
「ちょ、いて!いて、いてててて!ちょ、俺の指の未来が奪われそうなんだけど!」
ダイナがどこに収まるかは、まだよく決めていない感。ぱっと出のキャラかもしれないね。