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~一寸のノミにも五分の魂~

書いてみたら意外と長くて引いた。

 急に、ジャッー、ジャッー、という音がしてきたので、木目をどこまで数えたか忘れてしまった。コルドはちゃぶ台に突っ伏していた体を起こし、スッと少し後ろに下がり、足を組んで座禅をした。深く、深く息を吸って、静かに目を閉じた。


 ・・・私の記憶の奥底に眠る真実よ。再び私に木目の数を教え給え。私はいくらまで数えていたのだろうか。私は一つ一つ指でなぞりつつ、その数を数えていた。そう、あの木目。一体何個目の木目であっただろうか。私は、その端にそっと指を立て、すでにおぞましい数となっていたであろう数を、口から出したはずである・・・。


 ・・・さらに記憶を奥深くまで掘り下げよう。私の目は、ツゥーっと滑るその手の先をぼぉーっと眺めていた。その時私が口にだした言葉は・・・いや・・・あの時・・・数を口に出していなかったかもしれない・・・。数えるより先に、私の目にとまったものは何だ・・・。あれは・・・そう、木目の間のノミであった。多分・・・。


 ・・・ノミは三匹いた。私は思わず滑っていた指を止めた。ノミはちゃぶ台を囲んで座っている。床もちゃぶ台である。向かい合って座ったノミが二匹、その間にいて、肩をすくめながら、しきりに横の二人を交互に見ているノミが一匹・・・。


 「ほら、見てみなさいよ。お隣さんはもうプッツンされてしまったわ。私たちももう終わりよ。」と、向かい合っている片方のノミがため息をつきながら喋っているのが聞こえた。

 「そんなこと限らんじゃないか。」と、もう片側の方もため息交じりに喋っている。


 「私には分かるわ。最期なのよ。そもそもあなたが、人間の家に住んで一旗揚げるなんて言ったときから、嫌な予感がしていたわ。あなたはいつもそう無茶なことばかり言って、困るのは私たちなのよ。でも、もうそれも終わりね。せめて、貴方を怨んでプッツンされてやるわ!」

 「何を言うんだお前は!お前だって、いつも何も考えないで、俺に色んな事を押し付けて、責任から逃げてるだけじゃないか。」

 

 ・・・ため息のつき合いから、怒号の押収の場に変わったちゃぶ台の真ん中で、見えない怒号に押されるように、小さいノミが肩をすくめている。小さく震えているようにも見える・・・。


 「あ、あの・・・や、やめようよ・・・。」と、小さいノミが少し前に乗り出しながら声を出したが、取りつく島もなく、むしろ二人は、その小さいノミをギロッと睨むと、その矛先を彼に向けだした。そしてとうとう、二人はちゃぶ台を彼の元にひっくり返して・・・。



 

 「やぁぁぁぁめぇぇぇろぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 「カァァァァァッツゥ!!」

 

 急に肩にビリリッと激痛が走り、コルドは天井の方までかっとんだ・・・と思う間もなく頭にも衝撃が走り、私は後ろ向きにコロリと倒れた。


 「修行が足らん。」と、首領が袈裟を着、折り畳み傘を両手でしっかり握りながら、目だけで倒れた私を見た。床に倒れてグルグル回している目には、その目がとても慈悲深い物に見えた。何やら髪もないように見えてきた。


 「一寸の・・・ノミにも・・・五分の魂ってやつ・・・ですかな・・・。」

 「ノミに肩とかがある時点で、多分コルドの妄想だと思うんだ。」

 「私も・・・多分・・・そうだと思いま・・・ガクリ。」

ちゃぶ台の木目にノミがいるかどうかなんてそんなことは知らない。

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