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都市伝説~ぼっち専用アプリ~

作者: 明日穂

今や総人口のほとんどがスマホやタブレットでネットにつながっている時代。


「どこでも誰とでもつながることができる」という選択は「どこでも誰かとつながっていなければ」という強迫にも似た感情を生み出した。


学校でも会社でも町内会や老人会までがたくさんの「サークル」を持ち、ゲームや読書、動画を見るにしてもそこに集まる「誰か」とつながり、コメントのやり取りをしなければ存在が認められないような世の中になってしまった。


そうなると困るのは「ぼっち」だ。

事務的に入らなければならないグループを除いては所属しているサークルがほとんどない。

入っていても積極的に投稿をしてコミュニケーションを取る勇気もないまま、タイムラインがひっきりなしに流れ続けていくのをただ見ているしかないので、やがて退会していまい、新しい所へ行くのもはばかれ、数少ないおひとり様OKの所にひっそりと生息している。


だが、もはやコメントのやり取りでマナーモードにしていてもうるさいくらいの通勤電車の中、文字入力をせずにただじっと画面を見ていることなど到底できる雰囲気ではないのだ。


そんな現状を救うアプリがあるという。

所属している「サークル」や会話のやり取りが少ないと思われる人にひっそりと招待URLが送られてくるらしい。

そのアプリを使うと実在しない架空の相手とさもつながっているように会話ができるのだ。


しかも相手をしてくれるのは一人ではない。

性別や年齢、性格や「二人の関係」などを設定するとそれに見合った対応をしてくれる相手が5人まで作れて、3人までと同時に会話ができるという。

恋人と設定すれば甘い会話ができるし、浮気相手を作って修羅場を作ることも可能だ。

課金をすれば最大20人まで枠を増やすことができるらしい。


これを利用すれば、行き帰りの公共機関の中や学校や会社などでも相手のいない「ぼっち」だとバレる心配はない。

本当は誰からも誘われなくても「仲間の多い忙しいヤツ」のフリができるのだ。


しかし、これらの話はあくまで噂に過ぎない。

このアプリは決して話題にはならないのだ。いや、なってはいけないのだ。

このアプリを使っていることがバレたら自分には本当は相手などいないことがバレてしまうのだから。

(アイコンもカモフラージュできるというのも噂の域を出ない)


当然、宣伝も広告もない。このアプリは表面上は「存在しない」ものなのだ。

うっかり話題にしようものなら利用者確定とされてしまう。

だから誰も大きな声では言えないが、噂が噂を呼び、都市伝説と化しているのだ。


そんなある日、このアプリのサーバーがダウンした。

復旧には時間がかかるらしく、少なくとも朝のラッシュ時には間に合いそうにない。


あのうるさいほどのマナー音の中、ただじっと画面を眺めているなんてことは恐ろしくてできない。

こういう時の奥の手はもう「スマホを忘れてきてしまった」フリしかない。

持っていなければ、なにもしていなくても変に思われることはないはずだ。


そうしてやってきた満員電車の中。

人々は驚愕の事実を知る。


スマホやタブレットを触っている乗客が、今日に限ってほとんどいなかったのだ・・・・



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― 新着の感想 ―
[良い点] ラストはある意味「予想通り」でしたが、面白いオチで楽しめました。 文章も引っ掛かりもなくスムーズに読めました。 [気になる点] 行頭の字下げがないのが、ちょっと違和感を感じました。 [一言…
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