第五話 重戦士グローリアス
魔の森
「キキキ・・・来たぜ、勇者が来たぜぇ・・・」
「来たか・・・」
「来た・・・来た・・・」
ざわ・・・ざわ・・・
魔の森はざわついていた。
久しぶりの獲物、勇者が森にやってきたからだ。
「今回のパーティは3人だそうだぜ・・・」
「男が一人、女が2人だ・・・キキキ」
この魔物たちはセクターと呼ばれている。
魔王軍に所属している精鋭部隊だ。
この森を仕切っている、かなり強い魔物だ。
コードネームは「初見殺し」
場違いな強さが、新米勇者を襲うッ!
「まだだ・・・まだ俺達の出番ではない・・・キキィ」
「奴らが最も油断している時・・・その時まで待機・・・!」
「おー!ここが魔の森か!」
「やっと着きましたねっ!勇者様っ!」
「あぁ、そうだな・・・ふっ」
「あれだ・・・今回の獲物ォ・・・!」
「さぁ、行けっ!大ねずみ共!」
「う、うぅっ・・・こわいよぅ・・・」
「おい!大ねずみ!まず勇者に倒されるのがお前の仕事だろうがっ!」
「ひぃっ・・・わかりましたぁ・・・!」
大ねずみ3体が現れた!
「勇者っ!モンスターが出たぞ!」
「勇者様っ!」
「ふっ・・・エイシャ、ソーニャ、下がれ。俺一人で十分だ。」
「う、うぅっ!チュ、チュチューーッ!!!」
大ねずみAが飛びかかってきた!
「・・・雑魚が」
勇者アダムの、通常攻撃!
ズバッシャァァァァァァ!!!!!
大ねずみA、B、Cは倒れた!
「い、一撃・・・!勇者様、ステキ・・・!」
「や、やるじゃねーか、勇者・・・!」
「ふっふぅん・・・」
「キキッ・・・?今回の勇者、なかなか強いじゃねえか」
「ハッ、大ねずみが弱すぎるんだよ!」
「でも、あいつの攻撃で大ねずみが跡形もなく消えちまったぞ・・・」
「きっとヤベェ攻撃だったんじゃ・・・」
「馬鹿野郎!ここは最初のダンジョン、魔の森だぞ!今まで強い勇者が来たことあるか!?無いだろ!?落ち着け!」
「キィ・・・それもそうか・・・」
10分後・・・
「ここの魔物は弱すぎるな・・・つまらん」
「あたしもそう思うぜ!」
「あぁっ!なんて頼もしい勇者様!」
「今だ!奴らは最ッ高ーッに油断している!」
「まずはお前がいけぇっ!」
「いざ・・・初見殺しッ!!!キキキキィィィ!!!」
モンスターが現れた!
「キキィ!」
「な、何だコイツは!」
「虫の魔物ですっ!気をつけてっ!」
「俺の相手ではない・・・」
くくくっ!
まず奴らは様子見で通常攻撃をしてくるだろう・・・
「くらえ・・・!」
勇者アダムの通常攻撃!
「キキキ!」
無駄だ!!!
俺達に物理ダメージは全く通らない!!!
魔術攻撃でしか倒せんのだよォ!!!
ズバッシャァァァアァァァ!!!
セクターは倒れた!
「・・・・・・・・・・・・・ひょ?」
リータサイド 魔の森 入り口付近
「はぁ・・・やっと着いた!」
ここが魔の森。
ターゲットはすでにこの森に入っている!
急いで追いかけないと!
「追いつけるかなぁ・・・」
アリアさんが不安そうにつぶやく
と、その時・・・!
ボコンッと勢い良く、地面から何かが生えてきた!
「な、何だっ!?」
「敵の攻撃ですのっ!?」
「美しく参上ッ!ソーーレッ!」
地面から生えてきたのは、剣と鎧を装備した、ちっちゃな男の子だ。
体が何か緑色だけど。
「あぁ・・・この子、アルリオの部下ですわ・・・」
「その通りっ!もっと見たまえよーっ!」
「うん、言動が似てるね・・・」
「自分は、アルリオ様に後方支援を任されている!」
なんだか頼りないなぁ・・・
アルリオさん本人が来ればいいのに・・・
「むっ!なんだねその見下したような視線は!」
「別に・・・」
「自分を馬鹿にしているな!ちっちゃいからか!」
「違うって・・・」
うん・・・本人に似て面倒くさい・・・
「見てろっ!・・・見てろよっ!」
そう言うと、懐から小さな笛を取り出し
ピーーーッと鳴らした。
その直後!
ボコボコボコッと何かが次々に地面から飛び出す!
何だ!?
「「「美しく参上!!!」」」
うわぁ、同じ奴がいっぱい・・・
「はははは!この一帯に配置されているアルリオ様の部下!300体だ!!!」
「多すぎだよっ!!!」
「美しきアルリオ様は、あらゆる場所に根をはり、我々を生み出しているのだ!」
アルリオさん、そんなことしてたんだ・・・
働いてるのあんまり見たこと無いけど・・・
「ちょっと数減らして・・・身動きが取れないよ・・・」
余りの数に圧倒されて後ずさる。
「うぎゃっ」
「あっ、ごめんっ」
アルリオさんの部下の足を踏んでしまった。
「うぎゃあああああ」
「えっ」
アルリオさんの部下が消滅した・・・
「弱っ」
「・・・」
「・・・こほんっ。とにかく、早くチート勇者を追いますわよっ!」
「そうだね・・・」
「う、うろたえるなっ!あと299体もいるっ!」
「待てェ!!!お前らァ!!!・・・うわっ何かごちゃごちゃしてる」
「お、お前は!!!・・・ゴリラっ!!!」
「ゴリラじゃないウホォォォォ!!!」
何その矛盾した否定っ!?
っていうか!こいつさっき殺したはず!
死んだはずの人間が蘇ってる!!!またかっ!!!
「さっきはよくも!この俺様を!!!殺してくれたな!!!」
これも神の仕業か!?
このゴリラ、さっきより大きくなってるし、金色の鎧を着けてる!
「ウホホホ・・・この神から貰った力があればぁ!お前らなどスライムだスライム!!!見ろ!この金色に輝く、対魔術アーマーを!!!この白銀に輝く、雷鳴の槍を!!!」
「何ソレ!?」
どっから持ってきた!!!
「オラァ!!!一閃ッ!!!ウホホホォ!!!」
「なっ!?避けて!!!」
「何ですのっ!?」
「うわっ!?」
思いっきり横に飛ぶ。
直後、アルリオさんの部下299体が消し飛んだ。
周囲の地面が大きく削れている。
「まさか・・・このゴリラまでチート化したのか!?」
「すさまじい威力だね・・・」
「とても人間とは思えませんわっ!」
「ゴリラだ・・・!」
「ウホォォォ!!!俺様はゴリラではないっ!!!皆、俺様のことをゴーリラだのゴリラだのと呼ぶが!俺の名前はグローリアスだあああああ!!!」
「知るかああああ!!!」
「ウホホゥ!神から授かったスパイクシールドと、神の兜を装着だ!!!みなぎるみなぎるぅぅぅぅ!!!」
「ポンポン変な物出すなよ!!!」
「このチートゴリラを何とかしないと、チート勇者を追えませんわっ!」
「リータちゃんっ!先にこっちを片付けるよっ!」
「分かりました!」
「まさに鉄壁ィ!!!負ける気がしねぇ!!!覚悟ォ!!!」
次回、本編最初のボス、ゴリラ戦です。