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第二話   ここが魔王城

   魔王城


「ただいま戻りました」

「戻りましたわっ!」


「おー!戻ったか!よくやったぞ!」


   ピョコピョコと、ちっちゃい女の子が走ってくる。

   この方が、魔王様だ。

   もう200歳以上なんだけど、外見のことは言ってはいけない。

   深いわけがあるのだ・・・!きっと・・・!


「いやー!すごいぞ、リータ!さすが我が軍のたいちょーだ!」

「あ、僕って隊長だったんですか」

「うむ!リータは強いからなー!」

「いや、僕なんかより、パペッ子姉さんの方が遙かに強いですよ・・・」

「たいちょーは男じゃないとダメなのだよー!」

「知りませんよ・・・」


   もう一度言おう。この方が、魔王様だ。

   喋り方が馬鹿っぽいが、気にしてはいけない。

   

「魔王軍の男は軟弱者ばかりですものね」

「そーだなっ!リータが一番ましだ!まし!あははっ!」

「ひどいですよ・・・だったら、強い男の魔物を作ればよかったじゃないですか・・・」

「あたし、男って嫌いだからなー!」

「あ、そうですか・・・」


   訳分からん。もうやだ、こんな職場・・・


「でもでもっリータは好きだぞ!可愛いからなー!あははー!」

「うぅ・・・そうですか・・・?」


   よし、今日も頑張ろう。


   魔王様は、あはははーっと笑いながら走って行ってしまった。

   絶対、悩みとか無いんだろうな・・・


「あらあら、ロリコンってやつですの?」

「ち、違うよ!」

「真っ赤になって・・・ほんと、可愛いですわねー」


   くっ・・・!

   この魔王城では男の地位が低い・・・!

   早く何とかしないと・・・


「じゃあ、わたくしは先にお風呂に行ってきますわ」

「うん、行ってらっしゃい」

「あ、一緒に」

「さっさと行ってらっしゃい!!!」



   ふぅ・・・この魔王城に来てから、一ヶ月か。早いものだ。

   人間の頃には、もう戻れないんだよな・・・元々人間ではないけど。


   


   

   昔、僕は人間の村で、人間たちと暮らしていた。

   物心着いた頃から父さんは居なかった。

   出張という奴らしいが、ずっと帰って来なかった。

   母さんも、よく家を開けてたな・・・


「ちょっとショタ漁ってくる!」


   うん・・・母さんはサキュバスというヤツでした。

   ちなみに父さんは人狼らしい。

   おかげで僕の外見は人間そっくりだ。耳がちょっとイヌっぽいけど。

   母さんの影響で翼を出すこともできる。

   一応、誘惑する能力も持っているが、これは必要ないかな・・・

   体質的にはサキュバスじゃないし・・・



   そしてある日、母さんは死んだ。

   ショタ勇者を襲ったら、返り討ちにされたそうだ。

   あんまり悲しくは無かったが、僕は村を追い出された。

   魔物の子供だと言われて、殺されかけたりもした。

   

   それから、いろんな場所を旅していたが

   力尽きて倒れてしまった。

   

   そんな僕を救ってくれたのが、魔王様だ。

   ご飯も、住む場所も、仕事もくれた。

   命の恩人だ。

   ま、そういうわけで魔王城で働いている、リータ(15歳)です、っと。



「ま、回想はこの辺にして、料理作らないとな。」


   魔王様のために、料理を作るのも僕の仕事だ。

   材料は、今日獲ってきた、うるさい人間だ。

   ついでに、他の奴らの飯も作る。


   


   キッチンに向かっている途中で、ゴブリン達が筋トレをしているのが見えた

   うん、ちゃんとやってるな。



「調子はどう?ゴブリン」

「どうもこうも無いですよ!リータ隊長!」

「あ、その呼び方浸透してるんだ・・・」



「やっぱり無駄です!」

「俺達みたいな、大量生産の雑魚キャラが鍛えてもダメです!」

「どうせ俺らは儚く散っていく運命なんだ・・・!」


「だーかーらー!君達がそんなんだから、この城での男の地位が低いんだよ!」


   まったく!そういう卑屈なのはダメだと思う!よくない!


「そう言われましても・・・俺達には伸びしろがないんです・・・」

「素質無いんですよ・・・」

「それでもやるの!少しでも生存率を上げないと!」

「隊長には俺達の気持ちなんて分かりませんよ・・・!」

「な、なんだよ・・・」

「だって、隊長は、人間とウルフとサキュバスの力を受け継いでるでしょう!」

「恵まれてるんですよ!隊長は!」


「「「ずーるーい!ずーるーい!」」」


   ゴブリンたちのずるいコール。

   あぁもう!


「うるさーい!何でもいいから訓練しろよもう!」


「うわーん!リータ隊長が怒ったー!」

「どうせ俺達なんかー!」


   非常に面倒くさい。

   

「はぁ・・・さて、オーク達は・・・?」



「はぁ、はぁ、や、やっぱり・・・パペッ子様が一番だろ・・・」

「いやぁ、俺は断然、魔王様が萌え・・・幼女萌え・・・」

「あぁ・・・リータきゅん・・・はぁはぁ・・・」



「さ、サボってるーーー!!!しかもなんかキモい奴居るーーー!!!おまえ今後一切、僕に近づくなよーーー!!!」


「や、やべぇっ!」

「サボってるのバレたよ・・・!」

「リータきゅんが怒ってる・・・!か、かわいい・・・!」


「なんなんだっ!ここの男どもはっ!」

「だ、だって・・・」

「どうせ死ぬんだから、訓練なんかしても・・・」

「お前らもかっ!たるんでる!男どもたるんでるよー!」


   やっぱり、モンスターの中で常識というのがあるのかも知れない

   「大量にいる魔物は弱く、鍛えても強くならない」といったような・・・

   

「努力は必ず報われるから!いずれは一匹でパーティ全滅できるようになるよ!」


「ほ、本当ですか・・・?」

「うん!僕が言うんだから間違いない!」

「は、はいっ!」

「だから、まず痩せて!ダイエット!」

「だ、ダイエット・・・」

「俺らの嫌いな言葉・・・」

「次サボってたら、パペッ子姉さんに頼んで無理やりダイエットさせるからね!」


「は、はい・・・」

「それはそれで・・・イイ・・・」


   もうっ!・・・あっ、早く料理作らないと! 

   ・・・今度、強い男の魔物をスカウトしてこよう・・・


   早足でキッチンに向かう。

   無駄な時間使っちゃったよ・・・急がないと!

   今、ブーン!とか言いながら魔王様が走ってったけど、どうでもいい!


   

   キッチンに着くと、アリアさんが食事の用意をしていた。


「あ、リータちゃん。」

「アリアさん!僕の仕事なのに、すみません・・・ちゃんはやめてください」

「うん、リータちゃん遅かったから、やっちゃった。ごめん」

「いや、いいですよ。あと、ちゃん付けは・・・」

「私、お料理得意なの。」

「・・・あぁ、確かにテキパキしてますね・・・腕が8本なだけに・・・」

「うふふ」


   アリアさんは蜘蛛の魔物だ・・・

   見た目は人間なんだけどね・・・


「この前、2本でしたよね・・・?」

「あの姿は潜入用だから。本気出したら完全な蜘蛛になれるんだよ?見たい?」

「いや、いいです・・・」


   精神的にキツそうだ・・・ 


「リータちゃんだって翼出せるし、狼になれるんでしょう?魔王様から聞いてるよ?」

「もう、ちゃんでいいや・・・」


   確かに、なれるにはなれるけど・・・

   この前、鏡見て、自分にビビっちゃったからなぁ・・・


「まぁ、こんな感じですけど・・・」


   サキュバスの翼を出し、体を人狼に変化させる。

   怖がられないかなぁ・・・




「や、やっぱり可愛い!可愛いよリータちゃん!」

「えぇー?」


   ここの人たちの感覚はよくわからない。


「えーと、じゃあ折角だから、ちょっと私を誘惑してみて?」

「・・・え?」

 

   いきなり何?折角だからって何?


「サキュバスの力、持ってるんでしょ?見てみたいなー」


   持ってるけど・・・この人に使うのは危険そう・・・

   よし、逃げよう。


「やっ、やめときまーーーーす!!!」


   キュウヨウヲオモイダシターーーッ


「うぐえっ」

「もう、逃げないの」


   くっ、糸が絡まるっ!


「やだやだ!やめてよアリアさーーーん!!!」

「ふふふ・・・」


   やばいよっ!!!

   この人、僕をどうするつもりなんだー!


「やめなさい、アリア」

「あっ!パペッ子姉さん!!!助けてーーーっ!アリアさんがいじめる!」

「いじめてなんかないよー?遊んでただけなのに・・・」

「リータはわたくしの物ですわよ?」

「少なくともパペッ子のものじゃないと思うけど」

「何ですの?」

「なに?どっちかって言うとリータちゃんは私の・・・」


「僕は誰のものでもないよー!!!あえて言うなら魔王様の物だーっ!!!」

「「やはりロリコン・・・!?」」

「違うよーっ!うわーーん!!!」


   命の恩人なんだーーーー!!!






   危ない二人から何とか逃げ出した僕は、捕らえた人間のいる部屋に来た

   あ、そうだ・・・魔王様の食事を作らないと・・・



「お、お前はぁ!!!・・・お、俺をどうするつもりだー!」


   相変わらずうるさい。


「お前は、魔王様の食事の材料だ」

「何ィ!?」   

「だから、おとなしくして欲しいんだけど・・・」

「できるかー!い、いやだーーー!」

「あぁもう・・・」

「くそー!やってやる!俺だって出来るんだ!ファイアーボール!」

「痛っ!何するんだよもう・・・」

「ば、化物かコイツ・・・!効いてねぇ・・・!」

「あ!見張りが一体死んでる!よくも!」


   だから鍛えておけとあれほど!




「あ!リータ!何してるんだー?」


   こ、この馬鹿みたいな喋り方は!


「ま、魔王様!」

「あぇ!?こ、こんなのが魔王!?」

「あ、今日のごはんかー!?」

「ヒィッ」


「お腹すいたから、もう食べる!」

「えぇっ?生だとお腹壊しますよ?」

「がまんできないっ!食べるったら食べるぞ!」

「好きにしてください・・・」

「いっ、嫌ァァァァ!!!俺おいしくないよー!!!」

「いっただきま・・・」

「うあああ!ファイアーボール!!!」




「ぎにゃああああああ!!!」




「あ」   

「・・・アレ?」


   魔王、戦闘不能。


「あ、あう・・・いたい・・・」

「だっ大丈夫ですか!ほら、早くこの薬草を!」

「あ・・・あむ・・・よーし!全回復ー!!!」

「薬草で全回復だと!?お前はレベル1かっ!」


   人間のツッコミが入る


「なんでそんなに打たれ弱いんですかね・・・」

「うーん、長くなるからあとでなっ!・・・じゃあ、いただきまーす!」

「うわあああああ・・・あふぅ」


   人間がバタリと倒れこむ。

   魔王様が食べるのは魔力だ。

   人間の中にある、魔力を生成する源を食べる。

   料理したほうが美味しいのに・・・

   魔王様は甘い味付けが好きなんだけど、今日は空腹が調味料らしい。


「うん!おいしー!・・・じゃあちょっと遊んでくる!」

「転ばないように気をつけるんですよー」


   転んだだけで、体力の半分削られるからな・・・


「わかった!リータはやさしいな!あ、そいつの肉は食べていいからなー!」

「あ、分かりました」


   僕だって、嗜むくらいには人間を食べる。

   父さんが人狼だからね。


   他の魔物にも分けてあげよう。

   でも、あんまり食べ過ぎると、アリアさんの料理が食べれなくなるから。

   程々にっと。



   さて、今日は色々と魔王様から聞かないといけないことがある。

   チート勇者という奴のこと、魔王様自身のこと、等々・・・

   さっさと食べて、食堂へ行こう・・・




「こ、こいつ肉かたい!これだから人間のオスは!」





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