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序章:脱色
それは突然の出来事だった。毎朝ベル音が俺を目覚めさせる。夜更かしの所為か、身体が怠い。とりあえず、アラームを消してもう一度布団に潜る。さっきまで何か嫌な夢を見ていた気がするが、思い出せない。思い出したいと思わないが、思い出さなければいけない気もする。
『ボクとゲームしろ』
あ、確かそんな感じ。ふと脳内を過った記憶は不敵に笑む口元と子どもっぽい命令。よく考えれば思い出せそうだったけど、昨日出された宿題がまだだったから、そっちに気がとらわれてた。重い頭を持ち上げて、無理矢理体を起こす。メールを確認するつもりで携帯を持つ。
「ん?」
何かがおかしい。始めは携帯に違和感を抱いた。その時は、まだ寝呆けてるのかと思った。周りを見渡しても、普段見慣れた景色とは違うモノクロの世界。何度目を擦ってもそれは治らなかった。気が付いたのは、目覚めてから約10分経った後のことだった。
俺は、色を失っていた。