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三毛猫ミケ  作者: 月並
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はじまり

私の名前は、『ミケ』である。見た目通りの三毛猫であるから飼い主が、私をミケと名付けた。


 私は、もともと捨て猫であったが為にガリガリでやせ細り、見た目は汚いハウスダストの塊のような毛並みをしていた。今では丸々肥え太り、毛並みはつるつるで天使のリングが出来ている程だが、残念ながらの中年のおっさん猫である。


 飼い主は、20歳半ばの物書きである。フリーター生活が、今年で2年目。夜間のコンビニで働いていた時に私を発見。仕事は、定時を迎えたので早めに着替えて1人暮らしのボロアパートへと 私を抱き抱え、持ち帰った。飼い主は、汚い私をウェットティッシュで顔を綺麗に拭き始めた。


 正直に言おうか、がっかりである。私は元来の風呂好きであったので、いてもたってもいられずその場から逃げ出し、カビくさい風呂場へとそそくさと入り込んだ。そして、温かいお湯を出せ!と、ばかりに盛んに鳴いてやった。すると飼い主は『まじか。猫は風呂好きであるのか!』と一言。それからおもむろに私を洗い出した。しかし飼い主は、『何か、ドラッグストアでもらった要らない試供品なんかを使ってみよう』と、言い出し、なんたらさすーんだの、◯ヴールなんかを使って洗い出した。


なんという奴だ!しかし、私は思いの他綺麗に天使のリングが出来る程の綺麗な毛並みを取り戻した。


 餌なんかも、飼い主は、鳴いたら鳴いた分構わず出してくるので、私は肥えてしまった。私のせいではないのだ。全て、飼い主に責任があるのだ!


 飼い主に飼われだして1年。分かったのは、飼い主は、書物のネタが切れてくると嫌がる私を無理に抱き上げ、飼い主の腹の上に置き、『猫の上にも3年!猫の上にも3年!』としきりに叫んだり、やたらと私にちょっかいを出してくる事である。私は時たまに構ってやるが、面倒になるとそそくさとお風呂場に逃げ込む。そして、ここぞとばかりに鳴き喚くのである。すると飼い主は、『シャンプーは、もうさせんな!腱鞘炎になるから!やめてー』と、言い布団に潜り込むのだ。してやったりである。


 どうやら飼い主は、去年ある公募で佳作をとってからというものの、今年はいいものが、書けず入選すら出来ない模様でかなり、苦しんでいる。そんな飼い主を見るとやはり、猫である私でもだ。力になりたくなる。


 布団にくるまる飼い主に近づき、どすんと乗っかてみる。『…猫の上にも3年…。』ぼそっと布団の中から呟くと飼い主が、ひょこりと顔を出してきた。そんな飼い主の顔をまじまじと乗っかりながら見つめる。『…ふっ。ブサイクだな』そういって布団から飛び起きると、ノートパソコンに何やら激しくタイピングしだした。


ばさりとめくり落ちる布団をしゅぱっ!とはよけきれず。そのまま布団の闇への中へと落ちる。飼い主は何かに取り憑かれたように何かを書き始めたようだ。私は、何だか布団の温かさと程よい暗さで眠くなってきたので丸くなって寝る準備をする。


 はてはて?私は、飼い主に何をしてあげられたか?よくは分からぬが、ただ今は温かく、心地よいので寝てしまおうか。

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