表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/28

27話 拓海ファンクラブ

 晴菜から貰った弁当を美味しく頂いた拓海。毎度のことながら特に何もしていないくせに、どうしてここまで恵まれているのだろうか?むしろ、この環境を当たり前と感じている拓海もどうかと思うところであるが。

 昼が過ぎればあっという間で午後の授業も終り放課後となっていた。

 拓海は椅子に座りながら今日も一日やりきった感を前面に出しながら深く息を吐いていた。いつもながら特に昼食を食べる以外、何もしていないと言うのによくもまぁそこまで出来るものだ。そして、拓海は席を立ち上がるとかけてあった鞄を手に取り意気揚々と教室を出る。

 かったるそうに廊下を歩いていると騒がしい声が聞こえ前方から何かが接近してきた。段々と近づく影


「ん?翔太?」


 視界に映るのは逃げるように必死で走ってくる翔太の姿


「おぉ!拓海ナイスタイミングだ!」

「はぁ?」


 ニカっと笑いながら走って来ると拓海の肩を叩き


「後は任せたぜ!」

「だからなにが?」


 拓海にタッチしながら後ろへ下がる翔太に視線をやるが次の瞬間


「待てこらぁ~」

「は?……って、おいっ!」


 視線の先にはこちらへ猛突進してくる友里香の姿だった

 条件反射で拓海も自然と足が動き進行方向を逆に走り出す。

 同時に隣を走る翔太に拓海は


「……翔太、今度は何をやらかしたんだ?」

「何もしてねぇよ!」

「じゃぁ、なんで今回も追われている?」

「今回もって言うな!」

「はぁ、はぁ、何故に俺まで逃げなければならんのだ!」

「知るかっ!」


 部活をしている翔太と違い拓海のスタミナは持続するはずが無く意外と早くに途切れてしまう。

 そして、ついに足を止め


「なぜに俺が逃げねばならないのか……」


 愚痴を漏らしていた


「あっ、拓海君?」

「ん?」


 突然に声をかけられ視線を向けると、そこに居たのは友里香だった


「そういや、翔太のやつ見なかった?」

「翔太?」


 どうやら一緒に逃げていた拓海には気付いていなかったらしい


「翔太ならあっちに走って行ったが?」


 廊下の奥を指差すと何の躊躇ちゅうちょもなく拓海は友里香に言う


「逃げ足だけは速いんだから」

「あいつはまた何かやらかしたのか?」

「またというか、翔太の存在自体が罪ね」


 友里香は掌を返しながら呆れ口調で言う


「何か因縁でもあるのかよ」

「別に無いけど」

「理由も無く追われるのか……これだから女は怖い」


 身震いしながら拓海は呟いていた

 それから友里香は再び翔太を追いかけ去って行った。そんな光景を見つめる拓海は少しながら翔太に同情を感じながら廊下を歩く。

 拓海は立ち止まると何かを思い出す



(あれ?そういや何かを忘れているような気が……)



「あっ!モモがいない!」


 習慣付いていないせいか、拓海はすっかり忘れていた。急いで教室へとんぼ帰りするが殆んどの生徒は下校し誰もいない、教室内を見渡すがモモの姿も見当たらなかった。


「どこにいった?」


 誰もいない教室を見ながら思う拓海だが暫くして恐らく先に帰ったのかもしれないという結論に至り教室を後にした。そして再び廊下を歩きだすとまたしても騒がしい声が聞こえる。


「今度は何だよ……」


 もはや嫌な予感しかしない拓海

 それでも帰る為には行くしかない訳である。進めば進むにつれて騒がしさが増し拓海の不安も増すばかり。


「もう追われるのは勘弁してくれ」


 拓海が呟いていると


「拓海様?」


 モモが部屋からひょっこり顔を出していた


「あっ、モモ?」

「えっ?拓海君?」


 モモの背後から姿を現したロングヘアの女の子


「は?誰?」


 拓海が見知らぬ女学生に疑問の声を漏らしていると遠くから呼ぶ声がする


「かいちょぉ~!」


 叫びながら走って来たのは友里香


「また来たよ……」


 拓海はついさっき会ったばかりなのにと肩を落とし呟く

 そして友里香は拓海の下まで来る


「あれ?拓海君どうしたの?こんなところで」

「こっちの台詞だよ。翔太を追いかけて行ったんじゃなかったのか?」

「えっ?あぁ、こいつのこと?」


 そう言いながら指差す友里香の後ろには惨めにも小さく丸くなってしまっている翔太の姿があった。

 どうやら、捕まってしまったらしい。


「無事に確保したわ」


 友里香は誇らしげに言うが拓海は呆れていた


「何もしてないのに確保されんのかよ。恐ろしいな……」

「友里香、またそんなのを追いかけていたの?」

「あっ、会長」

「会長?」


 友里香に声をかけたのはさっきモモと一緒に居た女学生。

 腰につくほどある綺麗な紫色のロングヘアに澄んだ瞳、上品な顔立ちはお嬢様の様である。

 拓海の疑問に友里香は答える


「そうです。この方が三崎学園生徒会長の久遠ほむら、生徒会長を務める傍ら『拓海君ファンクラブ』の設立者ですよ」


 何故か自慢気に友里香は言う


「……なぁ、翔太」

「なんだ?」

「この場合、俺はどうすれいい?」

「知るかっ!」


 拓海の振りに翔太も激しく突っ込みを入れてしまう


「ところで、なんでモモはここに居るんだ?」

「会長さんとお話をしていたですの♪」


 可愛らしく笑い言う


「だから何でここに居たのかと聞いているのだが」

「私が連れて来たのよ」


 ほむらがモモとの会話に入り込む


「なぬ?」

「見慣れない生徒だったものだから、そうしたら拓海君の知り合いと聞いてこの子と居ればきっと拓海君が現われると思ったのよ」


 嬉しそうに語るほむらに拓海は引き気味に答える


「モモをエサにして俺を釣ると?とんでもねぇ会長様だな……」

「よかったわぁ。結果こうして拓海君と会えた訳だし♪」

「ほんとうに女って恐ろしい生き物だ……これだから嫌なんだよ」


 拓海は心底嫌気がさしていた。そして、翔太に視線を向ける


「おい、翔太」

「今度はなんだ?」

「後は任せた!帰るぞ、モモ!」


 言い放つとモモの手を取り拓海はその場から離れる

 さっきとまるで逆パターンである。一方の翔太は


「はぁ!?ちょ、ちょっと待てよ!」

「待たん!これ以上俺を巻き込むな!」


 急に走り出した拓海に友里香とほむらも振り向く


「あっ!拓海君!」


 気付いた時には遅く拓海とモモは颯爽と走り去って行った後だった

相変わらず不定期更新ですw

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ