24話 予感
一人帰ってきた拓海は早々と家に上がりリビングへ向うとTVをつけるが、お目当ての番組は終わった後だった。 そして、拓海はディスプレイを見つめながらリモコン片手に凍りついていた。
「くそっ、遅かったか……」
TV相手に愚痴を飛ばしていると家の呼び鈴が鳴る
外は暮れかかり時計に目をやれば時刻は六時を廻るところだった。
拓海はソファーから立ち上がると玄関に向かいドアを開ける
「モモか」
「ただいまなのです」
そこには買い物袋をぶら下げて玄関先に立つモモの姿があった
すると、モモの背後から声が聴こえ
「どうしたのよ?急に居なくなって」
モモに並ぶ様に現われたのは晴菜だった
「晴菜?なんでここに居るんだ?」
「あのねぇ……何でじゃないわよ。拓が言ったんでしょ?」
晴菜は呆れた様子で溜息をつきながら言い返す
「あっ、そうだったな」
「まったく、晩御飯を作りに来ただけよ」
「おう、悪いな」
「いいわよ、慣れているから」
そう言いながら晴菜はビニール袋を携えて家の中に上がり込んで行く。
その後、拓海は久し振りにまともな食事にありつけたと思いながら晴菜の料理に舌鼓を打っていた。
食事を終えソファーに座りながら寛いでいると晴菜が何かを思い立ったように口を開く
「そういえば」
「なんだ?」
拓海はモモの淹れたお茶を飲みながら晴菜の問いに答える
晴菜も拓海の隣に座るモモに視線を向けると
「モモちゃんって、学校とか行ってるの?」
「……ん?」
「だから、学校とかはどうしているの?」
晴菜の問いに拓海は黙り込んでしまう
何故なら答える事が出来ないからである
「何だか毎日の様に家に居るみたいだけれど?」
「そ、それはだな……」
( くそっ、ここまで考えてはいなかった……どうすれば…… )
まさか、こんな質問をされると思ってもいなかった拓海はまたしても脳内フラグを発生させてしまう。
追い詰められると浮かぶ選択肢による状況判断というのは都合が良いのか悪いのか、どう考えたらそうなるのだろう。
1.『そんな金など無いからだ』
2.『メイド服しか無いからだ』
3.『そんな金など無いからだ』
発生させたのは三択と言うよりは二者択一といったところである。
しかし、どうして思い浮かぶのはこんな事ばかりなのだろうか?拓海にとってみれば悩ましい問題なのだろうが第三者からしてみれば、どうでもいい様なことにしか聴こえない。さて、どちらかは選ばなければならない訳であるが仮に1.『そんな金など無いからだ』を選ぶとしよう。
極貧の拓海なら迷う事なく『1』を選択するはずだ。
しかしながら、いつも思うのだが両親は海外で会社を経営している程なら金などあるのではないか?と思うのだが……どうやら、仕送りがされていないだけらしい。
拓海の極貧話はさて置き、残る選択肢などは2.『メイド服しか無いからだ』だけになるのだが、確かこの台詞は今まで何度も口にしてきた訳で今さら言ったところで何の説得力にも欠ける。
大体、いままでの会話の流れでこんな言葉が出てきている時点でどうかとも思うのだが、考えるだけ無駄のようだ。 一つ間を置き晴菜に視線を向け、拓海が選んだ答えは
「それは……あれだ」
「なに?」
「金も無ければ、メイド服しかないからだ」
まさかの選択肢を繋ぎ合わせるという荒業であった
「……それだけ?」
「そういうことだ」
「もう、なんと言っていいか」
一方の晴菜は頭を抱え呆れ返っていた
「どうした?」
「そんな理由だけでモモちゃんを家に置いているわけ?」
「理由にそんなもこんなもない!」
何故か勝ち誇った顔で言い返す拓海に晴菜も何と言えばいいか分からず
「ドヤ顔で言われても……」
すると、脇で会話の内容を聞いていたモモが割り込んでくると
「学校なのですか?」
「えっ?そうよ。モモちゃんは学校に行きたくない?」
「ちょっ!晴菜、何を言って――」
拓海が言葉を言い終えるより先にモモが口を開く
「はいなのです♪」
「……はい?」
「ほら、やっぱりモモちゃんだって学校に行きたいみたいじゃない?」
「ぃゃ……そういう訳でなくだな」
拓海が悩んでいるのは勿論、モモは二次キャラなので学校云々の問題なのではないだろうかということである。
そんな事など知るはずも無い晴菜は知らぬ間にモモとそんな話で盛り上がってしまっている訳で、それを見つめる拓海もどうすればいいのか複雑な気分であった。