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21話 遭遇

新キャラ登場の回です。

 買ってきたクレープをかじりながら拓海と晴菜は商店街を歩いていた

 すると、拓海は何かを思い出したように


「ところで」

「なに?」

 歩きながらクレープ片手に晴菜へ視線を向け言う

「何を買っていたんだ?」

「えっ?」

 拓海の問いに少々戸惑う晴菜は

「なにって、別に……」

「ん?それじゃないのか?」

 どうやら、晴菜の荷物に気付いていたらしい

「ちがっ!これは――」


 晴菜が言い返すより先に拓海は買い物袋へ手を伸ばそうとするが、間一髪といったところで思わぬ人物から声がかかる


「あれ?拓海、こんなところで何をして……あぁ、なるほど」

 声の先に居たのは翔太であった

 視線が合ってしまった拓海だが動じることなく

「翔太、こんなとこところで何をしているんだ?」

「それはいま俺が聞いたよ……ってか、邪魔したか」

 そう言いながら翔太はチラリと晴菜に目を配り言う

 勿論、翔太の勘違いなど知るはずもない拓海は不思議そうな表情で

「邪魔?なんのことだ?」

「何のって、デート中だったんだろ?晴菜ちゃんと」

「デート?」

 その言葉にようやく拓海は、事を理解したのか晴菜に目を配る

「そうなのか?」

「えっ?えぇ~と……こ、これはあくまでも罰としてよ!」


 突然の問いに晴菜は反応出来ず、加えて翔太も居るせいか照れ隠しに言ってしまう。

 だが、こういった事には察しがいい翔太は場の流れを逸早く感じ取ったのか、軽く溜息を漏らすと呆れる様に


「……はぁ、晴菜ちゃんも大変だな」


 翔太からすれば晴菜の行動は丸分かりらしい。というよりは、分かって当然なのに拓海が鈍すぎるだけなのだろう。大体、ギャルゲーの主人公も鈍い性格というのが殆んどだが拓海ほど鈍い主人公キャラなどは存在しないだろう。そんな設定の主人公が出るゲームがあったとするならば全攻略にどれだけ時間がかかるのか分かったものではない。

 これでは、現実世界の主人公である拓海に攻略などできるのだろうか?

 すると、拓海は翔太に再び疑問をぶつけると


「ところでもう一度聞くが、翔太は何でここに居るんだ?」

「何でって、あそこで遊んでたんだよ」

 そう言いながら翔太が指差した先を見てみると、視線の先にはゲームセンターがあった。

 それを見た拓海は

「なんだ、またゲーセンか」

「そんないつも遊びに行っているみたいな言い方するなよ」

「まったく、ゲーセンなんてのは巨大な募金箱じゃないか。一回プレイする金があるならカップ麺を買った方がいいに決まっている」


 あながち間違ってはいないが、拓海の概念からすればゲームセンターは募金箱の集まりにしか過ぎないらしい。

 しかし、どこをとったらそんな考えに辿り着くのか不思議である


「募金箱って……そんな発想が思い浮かぶのは拓海くらいだろ」

 拓海と翔太のやりとりを晴菜は無言に呆れながら見つめていた

「……」

 黙る晴菜をよそに拓海は翔太に問う

「ところで、翔太一人で遊んでいたのか?」

「いや、他にもいるぞ」

「なるほど、また例のナンパか?」

「何に納得しているのか知らないが、事例のような言い回しはやめろ」

 翔太の言葉に何故か残念そうな表情を浮かべる拓海は

「なんだ、違うのか……」

「まるで俺が悪いみたいな言い方だな」

 すると、ようやく晴菜が二人の会話に入って来ると

「でも、翔太君は何で一人なの?」

「えっ?いゃ……委員長に見つかってしまってだな」

 苦笑いする翔太に拓海は考え込む様にあごに手を当てながら

「なるほど、状況は読めた。ようするに……逃亡中か?」

「まぁ……その通りだ」

「委員長?それは友里香先輩のこと?」


 三人が口を揃えて言う委員長とは三崎学園生徒会員の風紀委員長である、近衛友里香先輩。学年は拓海達より一つ上、顔立ちは良く淡い蒼のポニーテールがチャームポイント。高校入学からずっと生徒会役員を務めており、性格は極めて規則に厳しい。

 よって、風紀を乱しまくっている翔太は常習犯として友里香に目をつけられているわけである。

 すると、拓海は不思議がりながら


「そう言うが、今日は日曜だぞ?」

「そうなのだが、状況があれなのだ……」

「余計にわからんな」

 等と言い合いをしていると、なにやら声が聴こえてくる

「待てこらぁ~!」

「あっ!やべっ!」


 段々と近づき見えてくる姿、翔太を追いかける様走ってくる友里香だった。

 だが、翔太はあと少しという所で逃げ遅れてしまう

 友里香は息を切らし拓海達の下へやって来ると


「はぁ、はぁ……やっと、追いついたわ」

 すると、観念した翔太は友里香に視線を向け

「なんだよ、休みの日くらい遊ぶのは自由だろ?」

「えぇ、確かに休みだし遊ぶのは自由ね」

「だろ?なら別に――」

 翔太が言い終える前に友里香が付け加える様に

「でも、ところ構わずにナンパするのはどうなのかしら?他校の生徒さんも居たみたいだけれど?」

 やりとりを聞いていた拓海は割り込むように翔太へ質問すると

「やっぱり、ナンパしていたのか?」

「違う!あれは人助けだ!」

「あれが人助け?随分と楽しそうな人助けだこと」

 友里香は青空の様に透き通る様な瞳を翔太に向け疑惑の声を言い放つ

 晴菜も軽く溜息を吐きながら翔太に声をかけ

「はぁ、翔太君も懲りないわね……」

「そんな、晴菜ちゃんまで?」

 勿論、空気を読まない拓海は翔太の肩に軽く手を添えると

「まっ、頑張れよ」

「慰めてるのか、バカにしているのか、どちらにせよ拓海に言われると腹が立つぜ……」

 ここでようやく拓海の存在に気付いた友里香は

「あっ、もしかして拓海君じゃない?」

「ん?あぁ、そうだが。なにか?」

 不思議に返す拓海を友里香は急に明るい表情に変わり

「キャ~!拓海君とこんなところで会えるなんて!」

「……はっ?」

 何を言っているのだと言わんばかりな表情をする拓海だが友里香の興奮は鎮まることがなく

「生徒会風紀委員の近衛友里香と言います!私、拓海君ファンクラブに入っているんですよ。ちなみに会員番号は三番です!あっ、一番は会長ですけれど」

「翔太……これはどうゆうことだ?」

 どうやら、あまりの急な出来事に状況を把握出来ていないらしい

「つまりだな……拓海も知っていると思うが、お前は学校内では有名人なんだよ。ファンクラブだってあるしな。というか、会長も会員だったとは驚きだな。しかも、一番って……」

「そうなのか?」

 翔太は深く溜息を吐くと

「はぁ……ここまで鈍感だと救いようがねぇな。何で拓海みたいなのがモテまくるのか不思議だ」

「俺もこの状況が不思議なんだが」

「知らねぇよ!」

 翔太との口論をよそに友里香の視線は晴菜に注がれ

「あら、晴菜ちゃんじゃないの?今日は仲良く『幼馴染み』として買い物だった?」

 友里香は晴菜と拓海が幼馴染みということを知っていただけあり、意味深な言い回しで質問をしてきた

 一方の言われた晴菜は

「えっ?まぁ、そんなところです……」

 素直な言葉を言い返す事が出来ずにいた

 すると、拓海は先ほどの話を思い出し

「そういや、翔太」

「なんだ?」

「ナンパした子は、どうしたんだ?」

 その台詞に翔太は我に返ったように

「あっ!しまった!」

 これには流石に晴菜も気になったのか

「だったら、その子はまだ待っているんじゃないの?」

「そうね、晴菜ちゃんの意見も一理あるわね。私も翔太を追う事で必死になっていたわ。仕方ない、ここは一時休戦としましょう」

 友里香の言葉に翔太は安堵の声を漏らす

「ふぅ、助かったぜ」

 だが、友里香は釘を刺す様に

「まぁ、あくまでも今だけよ」

「やっぱりか……」


 そして、友里香を加えた拓海達は肩を落とす翔太を連れ女の子を捜す為に、ゲームセンターまで足を運ぶことにした。


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