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ハイル・ヒットラー

「今日は嫌な雲だね、降られない内に帰りましょうか。」

「それがいいな。」


ルルの提案に異論はないので、皆、家に帰ることにした。途中、兄ちゃんが水筒を忘れたことに気づいて、僕を一人で帰らせた。



母ちゃんの説教を二度聞いた次の日。

いつも通り、ティキ兄ちゃんは父ちゃんへの挨拶を済ませて朝の手伝いに入った。少し肌寒くなる季節に、なかなかこれはキツイ。


「さて、今日は畑仕事手伝ってね。」

「ん~、ハーイ。」


畑仕事は一番キツイ仕事の一つだ。まあ、説教された次の日だから、二人とも従うしかないんだけど。


「フ~終わった・・・じゃあ、母ちゃん、遊びに行ってくるね。」

「あ・・・。」

「どうしたの母ちゃん?」

「いや、何でもないわ、気をつけていってらっしゃいね。」


いつも笑顔で手を振ってくれるのに、どうしたんだろう?



朝から、ちょっとおかしなことにあったけど、まあ遊んでる間にそんなこと忘れちゃったよ。今日は、アリード兄ちゃんが初めて僕たちと一緒に遊んだ「草の中のかくれんぼ」をして遊んでるんだ。


緑の草に身を隠して、兄ちゃんが探し当てれないような場所に逃げる・・・といつもはそうだったんだけど、今日からはちょっと違う。ルルとリリがいる。


「なかなかこれは・・・面白いわね。」

「ていうか踏まれるんじゃないすか?」

「そんなにうまく隠れられないでしょ。」


鬼はじゃんけんで決めてティキ兄ちゃんになりました。いつもと同じじゃないか。

でも探す方は大変だ。前までは一人だったのに、三人探す羽目になったんだから。


「ホントこれはキツイぞ~・・・」


ティキ兄ちゃんの声が聞こえた。探し場所は広いけど、皆、どこに何があるかはしっかりわかってるから大体隠れ場所は決まってくる。そう考えるとあんまりキツくもないかもね。


「あ!リリ見っけ~!」

「ん~岩陰じゃまずかったすかね?」


さっそくリリが見つかってしまった。ていうか頭はみ出してたし、そりゃバレるわ。


さて、残り二人だけど、ルルはどこに隠れてるんだろう・・・。草むらに隠れてるか、木の陰に隠れているのかな?


「どう?見つかりそう?」


僕の隣にいた・・・。てか固まってたら一緒に見つかるって。


息を殺して、ソロソロと兄ちゃんから離れていく。草をかき分ける音もなるべく静かに、動作も少なくして逃げるんだ。


「ルル見っけ!」

「あ~見つかっちゃたか・・・。」


反対側に逃げてたルルが見つかった。僕もそろそろまずいかな・・・。


近くでピョンと蛙が跳ねた。ビックリしてちょっと動いてしまった。音が聞こえちゃったかな・・・?

幸い、兄ちゃんは気付いていないようだ。といっても、兄ちゃんに背を向けて逃げてるわけだから、兄ちゃんの動きがわからないのが一番怖いな。


急に、頭をゴツンとぶった。目の前に大きな木があった。危ない危ないと後ろに下がったら、また何かとぶつかった。


「ティブス見つけた~!」


あ~らら、どうやらぶつかったのは兄ちゃんの足だったようだ。見つかってしまいました。ていうか後ろからつけてたな兄ちゃん。


皆見つかっちゃったので、ゲームは終了で~す。



「今日は嫌な雲だね、降られないうちに帰ろうか。」


黒くデカくなってきた雨雲を見てルルが言った。確かに降りそうだ。まあ、たまには早く帰ってもいいでしょう。


皆にお別れして帰り道を歩いていると、


「いっけね、忘れ物した。」


ティキ兄ちゃんが水筒を忘れたことに気づいて僕を一人で帰らせた。小雨が降り出していた。



急に耳が聞こえなくなるくらいの轟音が響いた。雷でも近くに落ちたのだろうか。なんにしても怖いから、早く家に帰ることにした。


濡れた草を踏みながら、自分も濡れながら走って帰ると、不思議なことに家の戸が開け放されている。母ちゃんはなにをしているのだろうか。僕はなにやら嫌な予感がして、ゆっくり中をのぞいてみた。






頭が真っ白になった。




家の中で、母ちゃんが前かがみに倒れていた。その近くに見知らぬ人が立っていた。その手には鈍く光る物を持っている。どこかで見たことあるような光。あれは4年前の・・・。


ただ立ち尽くすしかなかった僕に気づいたらしく、その男はこちらにも銃を向けてきた。逃げようとは思ったが足が動かない。


4年前に見た鈍い光が、そのまま僕に向かってきた。


「ハイル・ヒットラー・・・。」


――――――――――――――――――――――――


水筒をなくさずに済んだことはよかったのだが、雨が強くなってきた。僕は走って家に帰ることにした。





突然、一発の銃声がした。周りから悲鳴が聞こえた。穏やかだった町が、瞬く間に轟音と悲鳴に埋め尽くされた。まるで4年前のフラッシュバックだった。


家に帰ると、男の・・・知らない男の高笑いが聞こえた。


「ヒャハハハハハハ・・・」



家のドアの陰に隠れて中をのぞいた。それからのことは、まるで夢の中にいるような気分だったから、あんまり実感がない。


まず気づいたのは、笑っている男はやはり知らない男であるということ。そして男の周りに女のひとと子供が倒れていたこと。


倒れている二人が誰かは、すぐに検討がついた。二人の倒れているところに、赤い水たまりができていることから、この男が何をしたか、何をもっているかも想像ができる。想像をすると、次に恐怖感が襲ってくる。僕もこの男に・・・。


男をじっと見ていると、幸い、こちらに気づいてはいないように見える。僕は、これに気付いた時点で逃げだすべきだったと思うが、何故だか、変な気をおこしてしまったようだ。自分の手に持っているものをじっと見つめた。


男はただ笑っているだけだった。暗い家の中で、男の声だけが広がっていた。僕はもう一度手に持ったものを確認した。


思いとどまるべきだった。自分が何をしようとしているかさえわからなかった。ただ、一つの思いだけがしっかりとあった。


「殺してやる。」




周りを見渡すと、三人の体がころがっていた。最後に見た、男の狂ったような顔がいつまでも脳裏に焼きついた。


しばらく座り込んでいると、村中の人の顔が頭の中に浮かんできた。それがグルグル回りだして、最後には全員が僕を睨んできた。僕はハッとした。


自分が何をしてしまったのか、ハッキリとわかった。

ちょっとグダったかな?見せ場(笑)なのに・・・。

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