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ヴィオレッタ~妻との約束~

「そうだ、あなた。一つ勝負しない?」


妻は勝負事が好きで、何かにつけて私に勝負を挑んでくる。

どっちが一年で多くの本を読めるかとか、どちらが先に夏一番のタンポポを見つけられるかなどなど・・・まあ、ほとんど私が勝つがね。


「何を?」

「プラタナスが、あなたと私のどっちにより似ているかって勝負。」


10日前に生まれた娘は、妻の膝の上でスヤスヤと眠っている。どちらに似ているといわれてもまだ顔もできあがっていないから、どうしようもないのだが・・・。


「女の子なんだからお前似になりやすいんじゃないか?」

「ううん、外見じゃないの。どちらの性格に似たか、って話。」

「それなら大丈夫・・・かな?」

「フフフ、そうなんじゃない?」


妻は、いつものように私に向かって微笑んだ。その顔を見るたびに、よくも私にこんな可愛い妻が来たものだと常々思う。


「今度こそ私が勝つからね。」

「いや、いつもなんだかんだで俺が勝ってるからな。」


そうやって約束をして、二人でプラタナスの顔を見つめた。



しかし、その勝負は、遂に決着することはなかった。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「そんな約束をしてたんですか、奥さんと。」


アリードは、いかにも羨ましそうな目で私を見てきた。


「ん?そんな目をして、どうかしたか?」

「いや、幸せそうな家族だなぁと思って。」


幸せそう・・・か。昔もよく言われたものだ。ほとんどの人がそう言っていた。あ、弟は例外だ。「兄さんにはこんないい奥さんが来るのに、僕は・・・」なんて言ってたかな。


「ヴィオレッタさんはどんな人だったんですか?」

「ウム。とても良い妻だったぞ。」



ヴィオレッタは、都会の方から叔父の紹介で私の家に来た。

初めから、少し変わった女だとは思っていた。自分の故郷を離れて私の家に来ているというのに、少しも怖気ないというか、控えるということを知らないというか・・・。


そんな変わり者なのに、村の人々の中にもすぐ溶け込んでいった。初めは、都会の娘ということもあり、少し遠目で見ていた感覚もあるのだが、可愛らしいし、そしてとても優しい妻に、次第に惹かれていったように思う。


家にいてもその変わり者はとどまることを知らなかった。まず、家の主人である私に対して敬語をしゃべったことが一度もない!俺の叔父は一体何に基づいて妻を選んだんだろう・・・。


とはいえ、しっかりと私に尽くしてくれるし、家事も完璧だった。プラタナスにも、優しさと、少しの厳しさをもって育てていてくれた。今、娘があんなにしっかりした子なのも、全て妻の功績であろう。


そう考えると、やはりプラタナスは妻に似たのだろうか・・・。いやいや、まだ認めんぞ。




「しかし、妻を亡くしてから私は、抜け殻のようになってしまった。」

「それであの子に全て放り投げたんですか。」


彼は少し怒ったような口調で私に問い詰めてくる。


「ああ、言い訳にはならないな。そして彼女にはさらにひどいことをしてしまった。」

「どのような?」

「プラタナスを、村中の嫌われものの娘にしてしまった。」


私は2年前から部屋に閉じこもり、さらに小作料を高く請求していた。そのおかげで娘は、嫌われ者の娘ということになってしまった。


「なぜ、そんなことを?」

「怖かったんだ。」

「怖かった?」

「2年前、私を蝕んでいたものは、私の心から体へ伝染した。そして医者に、もう長くないと診断された。」


そう言われた時、真っ先にプラタナスの顔が浮かんだ。私が死んだら、娘はどうなる?そう思った私は、娘のためにできることを必死に探した。


しかし、ずっと妻に頼っていた私にはいいことは思いつかなかった。そして、最後にたどりついたのは、娘のために金を残すことだった。今考えれば、愚かにもほどがある。



「私なりにしっかり考えたつもりだったが、逆効果だったようだ。プラタナスが、皆に嫌われるようなことをわざわざやってしまったのだ。娘の将来が心配でたまらない。そして、心が痛んでたまらない。」


そう言ってうなだれた。もう私には時間がない。娘のためにしてやれることもおそらく無いに等しいだろう。この暗い暗い部屋にいて、何ができるというのだ。



「プラタナス姉ちゃん!遊ぼーよ!」

「ああティブス、ゴメンね、ちょっと手紙出してて遅れちゃったんだ。」


外から、子供と・・・プラタナスの声が聞こえてきた。


「アリード君・・・すまんがカーテンを開けて私をそこまで連れて行ってくれないかな。」

「はい。」


2年前から開けていないほこりまみれのカーテンが開けられる。長らく見てない日の光が目に入ってきた。目が慣れるまで少しかかった。


目が慣れると、ハッキリと娘の姿が見えた。二人の子供と一緒になって遊んでいる。


「全く、何度やめろといってもこれなんだから・・・・・・・・・」

「いつもこんな感じですよ。」

「・・・・!」

「お父さん?」

「・・・ヴィ・・オレッタ・・・?」



そうだ。妻もそうだった。いつも村の人の畑仕事を手伝って、子供たちと遊んでいた。

上に立つもとしてふさわしくないと言って、私がいくら止めても、「私は上に立つ者じゃないからね。」と言って聞かなかった。しかし、いつも子供たちと遊んでいる妻は幸せそうだった。


そうだ。プラタナスのやっていることは、妻と同じだ。そしてプラタナスは今、とても幸せそうだ。


「そうか・・・そうか。」


涙がとめどなく流れてきた。止めようとも思わなかった。

私の心配などいらなかった。娘はもう幸せになる方法を知っている。娘はもう自立している。もう私たちがいなくても生きていける。


「お父さん。あなたがプラタナスを心配していたことは、決して無駄ではありませんよ。プラタナスは、両親からしっかりと愛されていたことを、しっかりと感じることができるのですから。本人にはわからなくても、少なくとも私は覚えています。人は、親の愛情を受けてこそ、人に愛情を持てるんです。」

「・・・・」

「あと、もう一つ気がついたことがあります。」

「・・・?」

「あなたはとうとう、奥さんに負けたようだ。」

「・・・そうだな・・・。」


だとよ。聞いたか?良かったなぁ、ヴィオレッタ・・・。




テスト終わってから初めての投稿!

でも忙しいな~。



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