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4年前~髑髏部隊~

この村の自然は、僕たちの遊び場になってくれる。たくさんの虫や鳥と遊ぶことや、そこらじゅうに生えてる草を使ってかくれんぼなんて、そりゃあ楽しいもんだよ。その自然の中で弟のティブスと遊ぶのが僕の日課だ。


ティブスは、いつも顔には見せないけど、すごく寂しい思いをしている。なにしろ、家族が一人足りないんだもの。


僕のお父さんは、僕がまだ9歳のころに死んだ。まだ4歳だったティブスには目を覆いたくなるようなことだっただろう。僕はお父さんの無残な亡骸に向かって、ティブスを何が合っても守り抜くと誓った。


お父さんは、家のすぐそばに埋められている。毎朝お父さんと朝のあいさつをする。それも僕の日課なんだ。


そういえば、昨日の朝のあいさつの後に一つ報告を付け加えた。この村に一人新しい住人が来たということだ。

「ベンジョー兄ちゃんっていうんだけど、本名なんて言ってたかな・・・あ、ベンジョーっていうのはお兄ちゃんがいつも持ってる物のことね。」


報告を終えたら、いつも通りお母さんのお手伝いをする。お昼になったら遊びの時間だ。今日は「木の実ピストルゲーム」でもやろうかな。そこらへんにある木の実を拾って、指で弾いて相手のおでこにコツンと当てるゲームさ。ティブスも大好きなゲームだよ。


ゲームをはじめて30分、草むらに隠れてほふく前進中の僕の隣に誰か座り込んだ。

「面白そうだな、俺も入れてくれよ。」

ベンジョー兄ちゃんだ。ホント面白いことには僕ら以上に食いつくんだから・・・


兄ちゃんにルールを一通り説明して仕切り直しだ。ベンジョー兄ちゃん、記念すべき第一投!・・・って投げてないよねコレ。まあいいか。さて、第一投、構えて・・・・


「アリードさん!仕事に戻ってくださいよ!」

あれ?プラタナス姉ちゃん?まさかベンジョー兄ちゃん仕事サボってきた?


「仕事戻らなくていいの?」

「いい・・・んじゃない?」

あ~あ~適当なこと言うとプラタナス姉ちゃん怒るよ・・・・


「隠れてないで出てきてください!」

「ホラホラ兄ちゃん早く行かないと・・・って何構えてるの!?」

なんだかよくわからないけどベンジョー兄ちゃん記念すべき第一投!


ッッピーーーーーーーーン バッシーーーーン

「い・・・痛・・・。もう怒りましたよ!」

アレアレラ、プラタナス姉ちゃんのおでこにクリーンヒットしちゃった。ほらほら怒ってこっちくる・・・と思ったら急に草むらに身を隠したよ。


ッッピーーーーーーーーン バッシーーーーン

「イタタタタタタ・・・やられたなぁ。」

「私の痛みを思い知りなさい!」


ピピピピピピーーーーーン バババババババッシーーーーン

「ティキ兄ちゃん・・・」

ティブスが呆気にとられた顔で近寄ってきた。まあ無理もない。


「あらあら、皆随分汚れちゃって・・・」

お母さんもあきれたような顔で遊びがえりの4人を迎える。

「すいません、つい・・・」

「君も随分楽しそうだったがな。」

「いやアリードさんだって!」

全く・・・ホントにどっちも子供っぽいんだから。


お母さんが一人ずつにお水をくれた。コックコクと飲み干す。

「お水はおいしいし、自然は美しいし、ホントにいい村だなここは。」

ベンジョー兄ちゃんが感心したような顔で言った。


「そうだよ。皆この自然を励みにして頑張ってきたんだから!」

「励み・・・?」

「そっか・・・アリードさんはまだ知らないんだっけ。」

ベンジョー兄ちゃんがお母さんの言葉に突っかかった。


「あれは忘れもしない、今から4年前だった。4年前・・・」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

4年前・・・この村は今と同じように自然の美しい村だった。いや、今よりも美しかったかもしれない。

その日も、僕はいつも通りティブスと一緒に遊んでいた。


「あらティキ、今日も元気そうね。」

長い髪を手でほぐしながら、プラタナス姉ちゃんが近付いてきた。このころ、プラタナス姉ちゃんもまだ15だったかな。昔からお姉ちゃんにはよく遊んでもらってたんだ。


「今日は何をやりたい?」

「木の実ピストルゲーム!」


僕たちの好きな遊びは昔から変わっていない。もちろんルールも今のままだよ。草の茂みに隠れての狙撃合戦は、そのころからやってたんだ。


そしてその日はお父さんとも遊ぶ約束をしてたんだ。もちろん木の実ピストルゲームでね。

お父さんとこれをやるのは初めてだった。だからすごく楽しみにしてたんだ。そしてやってきたところをこっそり狙撃しようと狙ってた。


「おーい、ティキ~!ティブス~!・・・あっれぇ?おかしいな・・・ここで遊んでるって言ってたのになぁ・・・」

よし、お父さんが来た。僕の渾身の一撃をくらうがいい!というわけでよく狙って・・・・・・







それから何が起きたのか。ハッキリ覚えてないんだけど、すごく大きな音が鳴ったような気がする。お父さんが血相を変えて僕たちのそばに駆け寄る。そして空を仰ぎながら息を殺していた。そしてよく聞こえなかったけど、こんなことを言っていたような気がする。

「あの旗・・・。間違いない・・・あいつが来た・・・」


あいつとは一体誰だったのか。一体何が始まったのか。わけもわからないうちに、いつのまにか僕たちはお父さんの腕の中にいた。

「プラタナス!君は早く自分の家族のもとへ行け!」

「は、はい!」

プラタナス姉ちゃんは腰をかがめながら走りだした。


お父さんにかかえられたまま、家に入る。家の戸を蹴り閉め、しっかりとつっかえ棒でおさえ、奥で震えながら座っているお母さんの元に寄る。


お父さんは僕たちを抱き寄せるようにして、外に目を配らせていた。外では、人の叫び声と銃声が飛び交っている。火がごうごうと燃え盛るような音も聞こえた。


窓もドアも閉め切ったうす暗い家の中では、一回一回の銃声におびえ泣きだすティブスを、お父さんが真っ青な顔で泣きやまそうとしていた。お母さんはずっと震えているだけだった。


しばらく何も聞こえなくなり、そのうち草を踏みにじる音が聞こえてきた。木の実を踏みつぶしたような音も聞こえた。人の足音ではない・・・。そのうち、その音はなくなり、かわって足音が聞こえてきた。


だんだん音は近づいてくる。一寸の狂いもなく揃った足音が、家を、村をゆする。そしてそれはさらに迫ってきた。

もうすぐそこかというところで音がやんだ。ずっと引きつっていたティブスの顔がすこしゆるんだ。


ドン!

家に衝撃が走った。ドアが衝撃でへこんだ。お父さんは慌ててつっかえ棒を手で押さえた。ティブスは再びお母さんにひっついて泣き出した。

衝撃は何度も走った。だんだんドアも壊されていく。息がつまりそうになった。


ついに、バシバシと音を上げてつっかえ棒ごとドアが壊れる。。外から光が入り込んでくる。眩しさにくらむ目に、日の光によって鈍くギラリと光る物がそばに倒れたお父さんをとらえたのが見えた。


「ハイル・ヒットラー・・・・」

家じゅうを貫く音が、何度も響き渡った。お母さんの絶叫が混ざる。ティブスは気を失ってことりと地面に倒れた。

赤みを増してさらに鈍く光った銃は、僕の目にこれでもかというくらいに焼きついた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「あの時スイス軍が来ていなかったら、今この村には誰もいないでしょうね。それでも、とてもたくさんの人が殺されたの。その中にティキのお父さんや・・・私のお母さんもいた。」


アリード兄ちゃんはプラタナス姉ちゃんの話を、ずっと黙って聞いている。少し目を潤わせながら、プラタナス姉ちゃんは話を続けた。


「そして、この村を襲ったドイツ軍を指揮していたのは・・・テオドール・アイケ。」

その名を聞いて、アリード兄ちゃんがハッとした顔をした。


聞いた話だが、このテオドールという人はドイツでは名の知れた人物だそうだ。髑髏がいこつ部隊と呼ばれる戦車部隊を作ったが、その部隊の規律はすこぶる悪く、行く先々で虐殺をおこすのだという。


その噂は国を超え、髑髏部隊の旗はヨーロッパじゅうに知れ渡っているそうだ。放浪の身のアリード兄ちゃんでも聞いたことがある名なのだろう。

「テオドール・・・何故・・・」

「アリードさん?どうかしたんですか?」

「いや、なんでもない。」


いつも思うのだが、アリード兄ちゃんには謎が多すぎる。ただものじゃないことだけは確かだけど。僕は、きっといつか明かしてくれるだろうと思っているが、なかなかあれから聞きだすのは大変そうだ。

長かった・・・そしてさっそく死亡者が出ちゃいました。

ちなみに、テオドールというのは、実在した軍人です。まあ、かなり改変されますがね。

この回は伏線の量がたっぷりです。

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