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アリード~バンジョーを持った男~ 

今日、変な人と会った。


鈴かけの木に身をもたれながらクークー寝ていたんだけど、初めて見る顔だったからちょっと話しかけてみたんだ。


その人は、アリード・・・って言ってたかな?ボサボサの髪で、着ているものは結構汚れてたな。それで、なんか変なものを持ってるの。バンジョーって言うんだっけか?

そうしてそのアリードさん、なぜか私の家に居候するって言いだしたんだよ。あ、居候っていうのは人の家に住み込むことね。


「フーン・・・なんかすごい話だねぇ、プラタナス姉ちゃん。」

「ウン、私もそう思う。」

今日あった変な事を、ティキに話しているが、正直私も整理がつかない。

いつものように横に引っ張ったみたいな目をするティキは、この村に住む男の子で、いつもそこらで弟のティブスと遊びまわってる。二人とも、私を見ると駆け寄ってくる。私も時間が空いていたら一緒に遊んであげるんだけど、今日はその逆。二人は木陰で、私の話につきあってる。


「で、その後どうなったの?」

兄に似ず、丸い目をしたティブスが話の続きを聞きたがる。

「うん、それでね・・・」


私は私の家に居候すると言い出したアリードさんを連れて、家の主人にその旨を話した。行く途中に彼、「ホントに居候させてくれるんかい!」って驚いて・・・自分から言い出したのに。

家の主人は私のお父さん、この村の大地主なんだ。昔はすごく皆に好かれてて・・・いや、あれは尊敬されてたっていうのかな。でも、お母さんが死んでから、皆に辛く当るようになって・・・。


お父さんは彼にも会わずに、「働いてくれるなら別にいい。」と私にだけ言って、それだけ。ホント、最近お父さんは自分の書斎にこもりっきりだよ。金だけはたんまり稼いで、難しいことは全部私に任せるんだもん。金だけ積まれたって・・・ちっとも嬉しくないよ!


とりあえず、働くって言ってもほとんどやることがないから、とりあえず私のお手伝いをしてもらうことにしたの。この村の皆の畑仕事や家事なんかを手伝ったりするのが私の仕事なんだ。


「と、いうわけで連れてきたんだけど・・・」

「まさか、あそこにいるあれ?」

「ウン、あれ。」

私たちの話を聞いているのかいないのか、アリードさんはバンジョーを弾きながら私たちがいるのとは違う木陰で木にもたれてる。


「アリードさ~ん、とりあえずこの子たちの子守をしてくれる~?」

「なんだ、それも君の仕事か?」

「もちろん。」

「何でも屋だな君は。」

すごく面倒くさそうな顔してるよこの人。


・・・と、なんだかんだで30分でなじんでたりして!意外と子供との相性いいんだなぁ、あの人。ティキもティブスも楽しそうに遊んでいるから、まあ良かったということで・・・いいかな?ってよく見たらアリードさんが一番楽しそうなんだけど!ホントにわからない人だなぁ・・・。


「プラタナスちゃん、お水くんできて!で、ちょっと休憩しようか。」

「ハ~イ!」

私はアリードさんが子守をしている間、私はティキ兄弟のお母さんのお手伝いをしていたんだ。


ティキのお母さんは、お父さんを早くに亡くして、女手一つで二人の兄弟を育ててきた。私が皆のお手伝いをしだしたのも、元はと言えばこのおばさんのお手伝いからはじめたんだったな。家事や、畑仕事をしながら子守をしてるんだもの。すごく大変そうだった。それで、初めてお手伝いしたときに、すごく喜んでくれたんだ。

それが嬉しくって私は、それからもお手伝いを続けてたら、いつのまにか村の皆に範囲が広がっちゃって、なかなか一人の体じゃ厳しいかな。でも、皆の方が大変なんだから。


「あ、くんできてくれた?ちょっと待っててね。」

家の前の原っぱに座る。遠くにティキたちが見える。追いかけっこをしているみたいだ。鬼は・・・アリードさんみたいだ。うわ~本気で追っかけてるよ、大人げない。でも、この村の土地を知り尽くしたティキたちが上手く逃げるから、あまり追いつけないみたいだけど。


「ハイ、お水。」

「あ、ありがとうございます。」

おばさんが水を持ってきてくれた。ここの水はすごく綺麗で透き通っていて、昔、私のお母さんが見せてくれた「ダイヤ」に似ている。


「ゼェゼェ・・・ホントにあいつらチョコマカと・・・疲れた・・・」

アリードさんが目の前に走ってきたかと思うと瞬く間に私の水を奪ってコクコクと飲み干してしまった。

「アレ、アリードさん・・・?それ私の・・・」

「すまんな、疲れてたんだもんで。」

全く、わからない人だなぁ!もう!


「にしてもすごく綺麗な水だなぁ。俺の故郷じゃもっと汚いぞ。」

「へぇ、アリードさんの故郷ってどこなんですか?」

「あ。・・・聞かなかったことにしてくれ。」

「え・・・わ、わかりました・・・」

アリードさんは言ったきり黙ってしまった。なんかすごく深刻そうな表情をしていたけど・・・


「オーイ、ベンジョーのおじさ~ん!早く追いかけてきてよ~!」

「だから、バンジョーだって!そしておじさんって言うな!まだ25だ!」

そう言ってまたティキたちの元へ走っていった。さっきの顔が嘘みたいにまたいつものあっけらかんとした顔に戻った。


お日さまが沈んだら一日の仕事も仕上げ。おばさんにさようならを言って、まだ遊びたがるティキたちを説得したら終わり。

「さあ、日が暮れてきたからお家に戻るよ。」

「え~。」「え~。」「え~~!」

「アリードさん!?」

「って冗談冗談。さ、帰るよ。」

「ハ~イ。」

てっきり子供二人と大人一人を説得しなきゃいけないハメになるかと思った・・・


アリードさんの泊まり場所は、今は空いたお母さんの部屋。結構広々としている。ここには、お母さんの残したいろんなものが詰まってて、整理しようとは思うんだけど、どれも捨てがたい。


「これは、君のお母さんの写真か?」

彼は写真を手に取って私に聞いた。

「ウン。」

「綺麗なお母さんだな。」

そう・・・私の自慢のお母さん。


「おやすみなさい。」

「ああ、お休み。」


寝床に入ってすぐ、バンジョーの音が聞こえてきた。アリードさんが弾いてるんだろう。こころなしか、虫の声に応えているように聞こえる。とても心地いい。

・・・でも、少し切ないような・・・そんな音だった・・・。

随分長い二話目!疲れた・・・

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